活動報告(第八期)

REPORT

※過去の活動報告はこちらからご覧いただけます。

  • 第一回4月3日 
  • 第二回4月17日 
  • 第三回第1部5月8日 
  • 第三回第2部5月8日 
  • 第四回第1部5月22日 
  • 第四回第2部5月22日 
  • 第五回6月5日 
  • 第六回6月19日 
  • 第七回7月3日 

第七回7月3日

テーマ

「偶発性をデザインする ~人口5000人の徳島県神山町はなぜ進化し続けるのか~ 」

講師大南 信也認定NPO法人グリーンバレー理事

第七回目は、大南信也先生による講義「偶発性をデザインする ~人口5000人の徳島県神山町はなぜ進化し続けるのか~ 」が行われました。地方創生の成功モデルとして新聞やメディアに度々登場する徳島県神山町。2023年には19年ぶりの高専新設となった「神山まるごと高専」も開校しています。こうした特徴的な発展と目覚ましい進化を続ける神山町であっても、実現にあたっては様々な課題があり、それを偶発的な出会いをきっかけに、「人との関わり」や「想い」を共にして解決してきたことが語られました。「できない理由より、できる方法を考える!」「まずは自分の身の回りの事から行動を起こすことが大事」と、ご自身の経験を踏まえた話は、物事を進める上でどのように考え、どう進めていけばいいかを自分事として捉え、実践していくことの大切さを学ぶ講義となりました。

【塾生の声】

大南さんの神山町に対する想い・情熱を直に感じることができ、胸に迫るものがありました。人口減少の現状を受け入れながら自立的発展を図る中では困難も多々あったのではと感じますが、高専設立など様々な取り組みが行われていることは本当に驚かされます。私も自分の身の回りでできることから改めて考えようと思いました。(20代・不動産業)

神山町の講義を拝聴して、感動と共に妙に納得しきれない不思議な感覚を持ちました。それは過疎化が進む町に多くの人々や企業が集まっている現状が、人の繋がりという偶発性の連鎖が無いと説明出来ないためでした。街づくりにおいても理論や経済合理性を重視して本当に大切な事を見落とさないようにしたいと気づきを得ました。(30代・不動産業)

  • 「偶発性をデザインする ~人口5000人の徳島県神山町はなぜ進化し続けるのか~ 」
大南 信也

1953年徳島県神山町生まれ。米国スタンフォード大学院修了。帰郷後、仲間とともに「住民主導のまちづくり」を実践する中、1996年ころより「国際芸術家村づくり」に着手。全国初となる道路清掃活動「アドプト・プログラム」の実施や、「神山アーティスト・イン・レジデンス」などのアートプロジェクトを相次いで始動。町営施設の指定管理や、町移住交流支援センターの受託運営、ITベンチャー企業のサテライトオフィス誘致など複合的、複層的な地域づくりを推進。2023年4月に開校した「神山まるごと高専」設立に発起人/設立準備財団代表理事として参画。

第六回6月19日

テーマ

「ウォーカブルな都市の要素とは?」

講師樋野 公宏東京大学大学院工学系研究科 都市工学専攻 准教授

第六回目は、樋野公宏先生による講義「ウォーカブルな都市の要素とは?」が行われました。講義では最初に、周辺環境によって歩行習慣などが左右され、歩行習慣が健康に影響を与える「環境―健康行動―健康モデル」の考え方が紹介されました。続いて、都市の歩きやすさ”Walkability”を向上させる歩行者志向のデザイン、土地利用の多様性、ソフト面での促進活動などの6つの要素について、国内外での事例や研究を交えて説明が行われました。それらの要素によって実際に住民・参加者の歩行量が変化することから、まちづくりの中でも歩いてもらう工夫を行う重要性が示されました。最後は、よりウォーカブルなまちづくりに向け、継続して取組を行っていくことの必要性が示され、講義が締めくくられました。続いて、都市の歩きやすさ”Walkability”を向上させる要素とされる歩行者志向のデザインや土地利用の多様性、ソフト面での促進活動などについて国内外での事例や研究を交えて説明が行われ、それらの要素によって実際に住民・参加者の歩行量が変化し、まちづくりの中でもそうした歩いてもらう工夫を行う重要性が示されました。

【塾生の声】

これまで予防医学の観点で都市開発を考えたことは無かったが、「ウォーカブルな街」とは散歩していて楽しい街でもあり、住宅などの購買者への付加価値としてどのように健康面も訴求していくか、考えるきっかけとなった。また、ラドバーン方式よりもグリッド状の道路網の方が、人口密度の高いエリアの方が「ウォーカブル」というのは(考えてみればその通りなのだが)目から鱗であった。(30代・卸売業)

普段の業務では都市・不動産の文脈から捉えていた「ウォーカブル」について、健康(肉体的・精神的・社会的)や公衆衛生などの幅広い視点から、豊富な研究実績、既往文献をもとに解説いただき、その奥行きや、研究(およびビジネス)領域としての可能性を感じた。日々の業務活動を行う際にも「自らの領域がその外にいる人からどう捉えられているのか」等、俯瞰的、多面的な見方を意識していきたい。(30代・専門サービス業)

  • 「ウォーカブルな都市の要素とは?」
樋野 公宏

2003年東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻博士課程修了。博士(工学)。
独立行政法人建築研究所(当時)を経て、2014年から現職。
都市環境の健康影響を研究し、2022年に「身体活動を促すまちづくりデザインガイド」を公表。

第五回6月5日

テーマ

不動産市場における10年の構造変化~変化をいかにビジネスチャンスにするか~

講師榎本 英二野村不動産ホールディングス 執行役員 DX推進統括

第五回目は、榎本英二先生による講義「不動産市場における10年の構造変化~変化をいかにビジネスチャンスにするか~」が行われました。講義では、最初に目の前の変化に一喜一憂せずにビジネスチャンスを得るためには構造変化を見据えた仮説を持つ必要があるという話から始まり、続いて今後の不動産業界の構造変化を考えるうえで重要な9つのテーマが説明されました。テーマとしては、「人材100年時代」、「グリーン投資の行く末」、「立地論の変化」や「地政学的な動向」などが取り上げられ、不動産業界の大きな構造変化が起こる背景として社会の変化やテクノロジーの発展、法律の改正などがあるため、それらの動向も注意深く観察する必要があるというメッセージで締めくくられました。

【塾生の声】

講義サブタイトルの「変化をいかにビジネスチャンスにするか」という言葉が印象的でした。建築費高騰市況における新築から既存への変遷、人生100年時代、ポストコロナ等、移り行く時代の中で、その時々の潮流をとらえ、正しく理解したうえで、自分なりの仮説をもってビジネス(日頃の業務)に落とし込むことの大切さを感じました。さまざまな仮説をもつ上では、専門家の視点を学ぶことが非常に重要と思うので、今後のからくさ不動産みらい塾の講義が益々楽しみになりました。(20代・不動産業)

過去・現在・不確実な未来と、幅広い情報から自ら仮説を立て、あるべき姿を追い求めることの重要性を再認識した。日々業務の中では目の前のミッションを果たすことに盲目的になり、必ずしも将来のあるべき姿を追えていないのではないか。今後本当に必要なことは何なのか、時には自分の役割とは異なる方向であったとしても、考え大事にする必要があると感じた。(30代・金融業)

  • 不動産市場における10年の構造変化 ~変化をいかにビジネスチャンスにするか~
榎本 英二

1985年慶應義塾大学経済学部卒業。1985年野村不動産入社、経理・総合企画・商品開発・資産運用事業に携わる。2008年執行役員 資産運用カンパニー副カンパニー長兼運用企画部長、2009年野村不動産投資顧問副社長、2013年野村不動産常務執行役員法人営業本部副本部長、2015年野村不動産アーバンネット専務執行役員を経て2017年同代表取締役兼副社長執行役員就任、2021年野村不動産ソリューションズ代表取締役副社長。2024年野村不動産ホールディングス執行役員就任、現在に至る。
1990年大手米国年金基金との米国不動産投資を開始し、1997年からは日本の不動産投資に着手、2001年不動産私募ファンド運用のため、野村不動産インベストメント・マネジメント株式会社設立。2002年には日本の運用会社による初めてのオポチュニティファンドである日本不動産オポチュニティ・ファンド(JOFI)の組成・運用を手がける。2004年以降、同社の安定型不動産私募ファンド(Smileシリーズ)の組成に携わり、2005年野村不動産投資顧問株式会社を設立、不動産証券化商品への投資に着手。2010年私募REIT第一号を運用開始。
2013年野村不動産にてCREを中心とした法人営業を担当。
2015年野村不動産アーバンネットにて仲介・CRE部門の企画を担当。(2021年4月1日より「野村不動産ソリューションズ」に社名変更)、同社のデジタルマーケティング、DX戦略を推進。2024年野村不動産ホールディングスにて、グループ全体のDX戦略推進を担当。宅地建物取引主任者、日本証券アナリスト協会検定会員

第四回-第2部5月22日

テーマ

データ利活用型まちづくり
- 建築・街区・都市のDX -

講師川除 隆広日建設計総合研究所 執行役員 麗澤大学 客員教授

第2部では川除隆広先生による講義「データ利活用型まちづくり―建築・街区・都市のDX―」が行われました。講義では最初に、近年様々な都市情報が蓄積されており、それらを生かした都市の定量的な可視化やまちづくりが可能になってきていることの説明がありました。続いて、建築・都市DXに関する最新の動向として3D都市モデルや都市計画GISなどのオープンデータ化、不動産ID化の推進を紹介し、それらを用いてどのような利活用が考えられるかの事例が紹介されました。最後は、データ利活用型まちづくりを進めるにあたり、これまで説明したオープンデータ等に加え、エリア・建物のミクロな情報が重要なことや、5つの重要なKPIが示され、講義が締めくくられました。

【塾生の声】

3D都市モデルや不動産情報ライブラリ、不動産IDなど新しい不動産情報インフラが登場していることを知り、データを横断的に収集、規格化、可視化し、それをオープンにしていくことによる新たな価値創造の可能性を感じた。自身の仕事でも不動産データの分析を行っており、仕事の幅を広げることに役立てたい。(30代・保険業)

不動産関連データのDXとは、不動産に紐づくデータが連携し、誰もが情報にアクセスできるようになること。これによって街の意外な過去・現在を知り、多様な次元でのイノベーションが期待できると思いました。また、GPSなどのオープンデータの利活用・分析から見えるダイナミックな新たな都市形成の可能性には、日々不動産開発を行う自分自身にとって活力となりました。(30代・不動産業)

  • データ利活用型まちづくり- 建築・街区・都市のDX -
川除 隆広

1995年東京理科大学大学院修士課程修了。2001年京都大学大学院博士課程修了。博士(工学)。技術士(総合技術監理部門・建設部門)。専門は、都市計画、都市情報分析、事業評価、官民連携事業など。総務省ICT街づくり推進会議スマートシティ検討WG構成員、総務省データ利活用型スマートシティ推進事業外部評価委員、内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術」のうち「アーキテクチャ構築等」採択審査委員、国土交通省/データ駆動型社会に対応したまちづくりに関する勉強会委員、CASBEE都市検討小委員会委員、CASBEE街区検討小委員会幹事などを務める。著書に「ICTエリアマネジメントが都市を創る」、共著に「スマートシティはどうつくる?」、「駅まち一体開発 TOD46の魅力」、「不動産テック」などがある。

第四回-第1部5月22日

テーマ

技術・社会の未来予測と建築不動産産業へのインパクト

講師河瀬 誠立命館大学(MBA)客員教授 / MK&Associates 代表

第四回目は、2名の講師による2部構成で、第1部では河瀬誠先生による講義「技術・社会の未来予測と建築不動産産業へのインパクト」が行われました。講義では、最初に技術革新が業務を消失させてきた歴史や、DXを進めるうえで、今後も現在の業務を消失させる意識が必要であることが示されました。続いて、立体印刷やロボットといった建設不動産産業を変える新技術や、消費者の価値観の変化やデジタル技術の進化による市民生活の変化が紹介されました。その後、発電の低コスト化や自動運転によって、都市のあり方も変化していくことが事例を交えて紹介され、最後は「未来をバックキャストし、そこに向けた妄想を広げてほしい」という言葉で締めくくられました。

【塾生の声】

デジタルは加速度的に進化してきているが、実際の企業や製品の事例をみると社会・都市・生活に与える影響は絶大であることを改めて実感した。建築業界においても、海外ではITやロボットが多く活用されており、国内の不動産業界の今後の動向にも注目したい。海外や他業界にも目を向けることで得る学びは多いと再認識できた講義だった。(20代・金融業)

今回の講義では「DX」は業務効率化のためのものでなく「業務を消滅」させるためのものであると伺った。実際、講義を受けた後、生成AIのChatGPTを使用してみたが、作業領域のみならず、企画・提案のレベルまで対応可能であることが分かった。自らの仕事がAIに取って代わられる危機感を覚えながら、来る将来に「人間にしかできない仕事」ができるように心得たい。(30代・不動産業)

  • 技術・社会の未来予測と建築不動産産業へのインパクト
河瀬 誠

東京大学工学部計数工学科卒業。ボストン大学経営大学院理学修士および経営学修士(MBA)修了。A.T.カーニーにて金融・通信業界のコンサルティングを担当後、ソフトバンク・グループにて新規事業開発を担当。コンサルティング会社ICMGを経て、現職。著書に『経営戦略ワークブック』『戦略思考コンプリートブック』『新事業開発スタートブック』『海外戦略ワークブック』(以上、日本実業出版社)『戦略思考のすすめ』(講談社現代新書)『マンガでやさしくわかる問題解決』『課題解決のレシピ』(日本能率協会)などがある。

第三回-第2部5月8日

テーマ

生活者目線での未来予測:”消齢化社会”の到来

講師石寺 修三株式会社 博報堂 博報堂生活総合研究所 所長

第2部では石寺修三先生による講義「生活者目線での未来予測:”消齢化社会”の到来」が行われました。講義では最初に、30年間に亘る調査の中で明らかになった、好みや価値観の年代間での差異が小さくなっている、“消齢化社会”という概念が紹介されました。続いて、消齢化の背景として、気力・体力が若い高齢者が増え、年代間での差がなくなった点や、戦前戦後を経験した世代の退出が進み、旧来型の常識や慣習への意識が低下した点、適齢期といった考えがなくなり、違う年齢層との重なりが大きくなった点が示されました。最後は、消齢化が今後も進み、人々の生き方や市場が変化する中、それらとどう向き合っていくかが重要であるというメッセージで講義が締めくくられました。

【塾生の声】

消齢化と聞いて気付かされたのは、百貨店のフロアガイドからヤングやミセスというワードが姿を消しつつあること。世代無関係に自分が好きなものを着れば良いと考え方が変わってきたからだ。よりこの考え方が進行、先鋭化すれば、現状のモードやコンテンポラリーといった言葉の意味すら薄れ、ゆくゆくはワードそのものが立ち消えてゆくのだろう。(30代・小売業)

『消齢化社会』という聞き慣れないキーワードから始まった講義でしたが、『生活者の視点の変化』が現実に起きていることがデータ上から明らかであり、まず驚きました。年齢による傾向が薄れ、生活者の考え方が多様化している。そのような市場で(不動産のみならず)ビジネスを考えるにあたり、果たして年齢に左右されない“不変の価値観”を新たに探すのが良いのか?多様化に対抗する“数”を用意するのが良いのか?今の商品戦略はこのままで良いのだろうか?など色々な思惑が湧き、講義の後も周りの人とディスカッションしたくなるテーマでした。(30代・不動産業)

  • 生活者目線での未来予測:”消齢化社会”の到来
石寺 修三

1989年に博報堂入社。マーケティングプラナーとして得意先企業の市場調査や商品開発、コミュニケーションに関わる業務に従事。以後、ブランディングや新領域を開拓する異職種混成部門や、専門職の人事・人材開発を担当する本社系部門を経て、2015年より現職。著書:『生活者の平成30年史 ~データで読む価値観の変化~』(共著・日本経済新聞出版・2019年)、『地ブランド~日本を救う地域ブランド論~』(共著・弘文堂・2006年)法政大学 非常勤講師

第三回-第1部5月8日

テーマ

建築プロジェクトの流れと不動産施設の運営・維持管理

講師石田 航星早稲田大学理工学術院創造理工学部建築学科 准教授

第三回目は、2名の講師による2部構成で、第1部では石田航星先生による講義「建築プロジェクトの流れと不動産施設の運営・維持管理」が行われました。講義では、最初に建設業の置かれた状況として、工事量は減少しつつも建設投資額は増加している点や、国外からの対日投資の増加、供給力の不足が示されました。続いて、建築プロジェクトの流れや、プロジェクト関係者の多さによって設計段階で生じている無駄、BIMなどの新技術によってプロジェクトの進み方がどのように変化するかについて説明がされました。最後は、時代の変化に伴い建築物への要求が変化する中、それらに答えて建築物を長期的に活用するため、恒常的な改修が必要であることが示され、講義が締めくくられました。

【塾生の声】

不動産の未来を考える上では、「建築」は避けて通れないテーマであると思います。本日の講義にて、日本の建設業の置かれた状況を体系的に学ぶことができ、非常に有意義なものとなりました。特に、世界における日本の建築市場のシェアが低下している現状や、建築に関する人材不足の深刻さを改めてデータを通してご説明いただいたことで、リアルに危機感を感じることができました。(30代・不動産開発業)

多職種で担い手不足の恒常化が問題となっている中で、建設業においても建築技術者の数は減少し続けている状況下、労働生産性向上のための設備投資の必要性を感じたと同時に単純にロボット化できるものではなくそれらを管理するためにも建築技術者が必要という根深い問題があると認識しました。さらに今後は外資による対内投資やインバウンド需要の影響がある中で日本の建設市場がどうあるべきか考えさせられる講義でした。(20代・金融業)

  • 建築プロジェクトの流れと不動産施設の運営・維持管理
石田 航星

2009年3月 早稲田大学理工学部建築学科卒業。2012年4月~2014年3月 早稲田大学創造理工学部助手。2014年3月 早稲田大学にて博士(工学)取得。2014年4月~2018年3月 工学院大学建築学部助教。2018年4月 早稲田大学創造理工学部講師。2021年4月より現職。建築施工、建築経済などの研究に従事

第二回4月17日

テーマ

不動産市場の未来:未来の不動産市場のリスク

講師清水 千弘一橋大学教授・麗澤大学副機構長学長補佐

第二回目は、当塾のアドバイザーでもある清水先生による講義「不動産市場の未来:未来の不動産市場のリスク」が行われました。講義は、リスクとは何か、金利上昇や人口減少などが不動産市場にどのような影響をもたらすかといった質問に塾生が回答しつつ、その質問に関連した過去の出来事の経緯や、清水先生ご自身の経験、データを用いた未来予測を踏まえて深堀解説を行う形式で進められました。塾生の回答の中には所属企業ならではの視点も多く含まれており、講師から教わるだけでなく、塾生同士の意見交換の重要性も実感する講義となりました。講義の最後は、「様々なリスクを考慮しながら、未来の不動産市場を作ってほしい」という言葉で締めくくられました。

【塾生の声】

経済の不確実性が高まる中で、不動産事業にも様々なリスクが存在するが、それぞれのリスクについては過去に似たような歴史があり、経済・金融の観点から構造を明らかにすることで、一定程度の予測ができうることを学んだ。事業の現場においては、不動産マーケットの状況を確認することが多いが、マクロ経済の動きもきちんと認識・仮説構築をした上で事業に取り組むようにしたい。(30代・不動産業)

これまでリスクについて深く考えたことはありませんでしたが、Donald Ramsfeld氏の「known knowns」「known unknowns」「unknown unknowns」に関するスピーチ解説を通じて、リスクの捉え方についての示唆を得ました。今回の講義を受け、リスクに対する最善の策は、過去起こったことやこれから起こることの良質な知識を得て、自分の頭で考えて「unknown unknowns」を「known unknowns」に変え、未来をつくっていくことなのだという認識を新たにしました。
当講義では、不動産金融の未来を題材にとり、自分の頭で考えるための素材の取り方、思考の方法を教えていただいたと感じています。(30代・不動産業)

  • 不動産市場の未来:未来の不動産市場のリスク
清水 千弘

一橋大学大学院ソーシャル・データサイエンス研究科教授、麗澤大学国際総合研究機構副機構長・学長補佐、清華大学不動産金融センター顧問。東京大学博士(環境学)。プリティッシュ・コロンビア大学、シンガポール国立大学、香港大学 客員教授、マサチューセッツ工科大学Research Affiliate、麗澤大学経済学部教授、日本大学教授、東京大学特任教授を経て現職。専門は、指数理論・ビッグデータ解析・不動産経済学。主な著者に、『Property Price Index』Springer(共著)(2020)、『日本の物価・資産価格』東京大学出版会(渡辺努氏と共編(2023))など多数。Member of CRE。

第一回4月3日

テーマ

開講式・不動産の見方、考え方

講師中山 善夫ザイマックス不動産総合研究所 代表取締役社長

からくさ不動産塾は今期より”からくさ不動産みらい塾”へとリニューアルし、からくさ不動産塾第一期から数えて第八期がスタートしました。今期は不動産業界を始め、金融など様々な業種から18名の塾生が参加しています。最初に開校式が行われ、中山塾頭から、からくさ不動産塾の設立背景とそこからからくさ不動産みらい塾へとリニューアルした経緯、塾生たちに向けたこれからの1年間への期待を述べる挨拶や、塾生たちによる自己紹介が行われました。その後、中山塾頭による第1回目の講義「不動産の見方・考え方」が行われました。講義の中では、不動産とは何か?土地とは何か?という話から始まり、変化が早く、不確実性が高い今後の不動産を考える上での重要な視点が解説され、最後は世の中の変化に敏感になってほしいという塾生たちへのメッセージが送られました。講義の後には活発な質疑応答があり、この1年間、刺激的な議論が繰り広げられることが大いに期待される中、第1回目講義が終了しました。

【塾生の声】

第一回の中山塾頭の講義は、今年から塾名に追加された「みらい」について考えさせられる時間でした。不動産が生活・産業の基盤だとしたときに、未来とは誰にとっての、何年後の話を設定すべきなのか。想定される未来に適応すべきなのか、変えようと試みるのか。大きなテーマに思い巡らせていました。不動産の「みらい」に対して、我々はどのように振舞っていくべきなのか、今後1年間のからくさ不動産みらい塾を通して塾生の皆さんと議論を重ね、自分の中での不動産の未来観を持ちながら考えていきたいと思います。(30代・公務員)

「不動産とは何か?」から話が始まり、土地・建物や定着物の定義など、体系的に不動産を学びたいと思っていた私からすると、とてもワクワクする講義でした。加えて、これから残るものの判断軸の視点や各塾生からの様々な意見などを聞いて、塾を通して自身の視野を広げることや知識を深めることへの期待が高まる会でした。(30代・不動産開発業)

  • 開講式・不動産の見方、考え方
  • 開講式・不動産の見方、考え方
中山 善夫

株式会社ザイマックス不動産総合研究所代表取締役社長。ニューヨーク大学大学院不動産修士課程修了。一般財団法人日本不動産研究所で数多くの不動産鑑定・コンサルティングに従事。その後、ドイツ証券にてドイツ銀行グループの日本における不動産審査の責任者を務める。2012年よりザイマックスグループの役員に就任、現在、ザイマックス不動産総合研究所にて不動産全般に係る調査研究を担当。不動産鑑定士、MAI、CCIM、Fellow of RICS、Member of CRE。ARESマスター「不動産投資分析」科目責任者、不動産証券化協会教育・資格制度委員会委員。