活動報告(第八期)
- REPORT
全体懇親会(10月16日)
10月16日、第1期から第8期までの全塾生に呼びかけた「からくさ不動産みらい塾全体懇親会」が開催され、合計59名の卒塾生・塾生が参加しました。懇親会は、最初に中山塾頭より「塾でのつながりを生かし、皆さんが今後ますます活躍してくれることを期待しています」という乾杯の挨拶でスタートしました。事務局から定期勉強会や視察ツアーの開催などの案内の後、塾生同士の歓談に入りました。期を越えたグループでの自己紹介や、有志の塾生・卒塾生による近況報告などを交えながら、同期同士の旧交を温めつつ、異なる期の塾生同士の新たな交流も生まれ、大いに盛り上がりました。盛会となった懇親会は、最後に卒塾生代表による挨拶と掛け声で締めくくられました。
第十三回-第1部10月2日
テーマ
消費者行動の変化と小売業のありかた
講師藤原 真
ザイマックス 執行役員 / 総合不動産サービス開発事業部担当 法人営業4部長 / ザイマックスコモンズプロ 代表取締役社長
講師山田 賢一ザイマックス不動産総合研究所 主任研究員
第十三回目は2部構成で、第1部では藤原真さん、山田賢一さんによる講義「消費者行動の変化と小売業のありかた」が行われました。今回の講義は、これまでの社会の変化に伴う消費者行動や小売店舗の業態、店舗立地の変化について説明された上で、「都心型百貨店」、「地域密着型スーパー」、「郊外大型ショッピングセンター」の10年後の未来についてグループ討議が行われる形式で行われました。討議では、スーパーは地域のコミュニティになっていく、郊外ショッピングセンターは「時消費」が重要になっていくなどの提案がなされ、講義の最後は、提案に対する講評として、小売業として生き残るため、買い物するだけの場所ではない付加価値が重要になるという言葉で締めくくられました。
【塾生の声】
小売業は身近な存在ですが歴史や動向の違いを紐解くと不動産の特徴にも結びつき、興味深い気づきを得ました。講義ではテーマを設定して小売業や商業施設が今後どのように変化するか意見交換を行いました。塾生の仕事や私生活での気づきから多様な視点で議論が白熱し、未来から不動産の変化を考える有意義な時間になりました。(30代・不動産業)
ゼミ形式の講義で、小売業態の10年後の生存戦略を検討しました。私たちのチームは都市型百貨店をテーマに、顧客獲得とブランド活用策を議論。普段の業務で商業不動産を扱うことはあっても、小売の立場で考える機会は貴重で、大変有益でした。講師の的確な講評や他チームの多様な意見から多くの学びがあり、小売業界の未来を深く考えさせられる講義でした(30代・保険業)
1998年株式会社パルコ入社。2006年ザイマックス入社後、大型商業施設開発・リニューアル等を数多く牽引、現在は小売企業を対象とした不動産サービス法人営業部門を担当。京都大学文学部卒業。
1991年大手流通企業に入社。10年以上にわたり、新規出店・改装のプランニング業務に携わる。2007年にザイマックスグループ入社。主に商業施設の運営管理業務を行う。2014年よりザイマックス総研にて商業施設・小売業界の調査研究を担当。上智大学文学部卒業。
第十三回-第2部10月2日
テーマ
企業における不動産戦略と不動産テックの動向
講師板谷 敏正株式会社プロパティデータバンク 代表取締役会長
第2部では板谷敏正先生による講義「企業における不動産戦略と不動産テックの動向」が行われました。講義では、最初に国や自治体、企業の資産の中の不動産の位置づけやCRE戦略について説明されました。続いて、空間や官民連携、ビジネスモデルの変革によって不動産ビジネスが大きく変化した事例とともに、空間やビジネスモデルの変革によって不動産としての資産価値の向上や経済の活性化を行う不動産トランスフォーメーション(REX)という考え方が示されました。その後、REXを支えるDXとして、不動産管理支援クラウドやBIMが紹介され、最後は既存建築の活用も含めて長期的な視点で豊かな都市空間を作っていってほしいという言葉で締めくくられました。
【塾生の声】
不動産トランスフォーメーションという考えのもと、不動産の空間・ビジネスモデルの変革について様々な事例をご紹介いただき、今後不動産に起こる変革を考えるうえでのヒントを多くいただくことができました。不動産テックの活用例についてもお話がありましたが、日頃から、自分自身が関わる業務領域と結びつけて考えるべきだと刺激を受けました。(20代・不動産業)
清水建設という大企業内で、入社十年目にイントレプレナーとして社内ベンチャーを立ちあげ、ご自身も出資した会社を上場させた、というお話が刺激的でした。また、「不動産の所有と経営の分離や不動産証券化」は自身としても関心のあるテーマでしたが、それを空間構成の変革に結び付ける視点は自身には無く、とても新鮮でした。(30代・卸売業)
早稲田大学大学院理工学研究科修了、清水建設株式会社入社。2000年、社内ベンチャー制度を活用し、不動産管理向けクラウドサービスを展開するプロパティデータバンク株式会社設立、代表取締役就任。2022 年4月より代表取締役会長に就任。09年には最も優れた経営戦略を実践する企業として“ポーター賞”を受賞。18年には東京証券取引上マザーズ市場に上場。その他国交省「企業不動産の合理的な所有・利用に関する研究会」委員、「不動産ID・EDI研究会(2007)」委員、日本ファシリティマネジメント協会理事などを務める。芝浦工業大学 客員教授(2010年~2021 年)、早稲田大学大学院創造理工学研究科 客員教授を兼任。博士(工学)
<主な著書>
CRE戦略と企業経営(東洋経済新報社)、次世代建設産業戦略2015(日刊建設通信)、不動産トランスフォーメーション(幻冬舎)
第十二回-第1部9月18日
テーマ
人手不足問題と日本の未来
講師古屋 星斗リクルートワークス研究所
第十二回目は、2名の講師による二部構成で、第一部では古屋星斗先生による講義「人手不足問題と日本の未来」が行われました。講義では最初に、コロナ禍以前は景況と人手不足の度合いは一致して推移する傾向にあったが、足元では景況に関わらず労働供給の制約による構造的な人手不足が起こっていることが示されました。続いて、2040年に労働需要に対して供給が1,100万人不足するという推計結果とその時に起こり得る社会問題や、機械化・自動化、シニアの小さな活動などの需給ギャップの解消に向けた発想が紹介されました。最後は、人手不足の中、今後は経営の中で重要視される価値観が、1時間当たりの生産性や従業員満足などへと転換していくという仮説が示され、講義が締めくくられました。
【塾生の声】
「人手不足」について、身近なところで、建築工事発注フェーズで人繰りや労務費増加を理由に受注の謝絶、追加コスト交渉が発生している状況であり、自所属の会社でも中途採用が増加し、何十年か振りのベアが実施された。労働力市場の方針転換を肌で感じている。「ワーキッシュアクト」という取組について、不動産業と親和性が高そうと感じた。可能性を探っていきたい。(30代・不動産業)
想像以上に多くの業種で労働需給の二極化が発生していること、高齢化の進行による人手不足問題とそこから生じる生活への影響は極めて深刻であると認識した。自身とは関係のない話と、どこか他人事であったが、よりよい未来を迎えるためには、これからの社会を支える我々一人ひとりが問題に向き合い解決策を考えていく必要があると感じた。(30代・金融業)
2011年一橋大学大学院社会学研究科修了。同年、経済産業省に入省。産業人材政策、投資ファンド創設、福島の復興・避難者の生活支援、政府成長戦略策定に携わる。2017年より現職。労働市場や次世代社会の働き方を研究する。一般社団法人スクール・トゥ・ワーク代表理事。法政大学キャリアデザイン学部兼任教員。大阪商工会議所若手社員キャリアデザイン塾塾長。著書に『ゆるい職場—若者の不安の知られざる理由』(中央公論新社)、『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか』(日本経済新聞出版社)『「働き手不足1100万人」の衝撃』(プレジデント社)など。
第十二回-第2部9月18日
テーマ
社会課題から新規ビジネスを考える~ザイマックス流の事業創造~
講師中道 大輔ザイマックス 執行役員
第2部では中道大輔先生による講義「社会課題から新規ビジネスを考える~ザイマックス流の事業創造~」が行われました。講義では最初に、SWOT分析の脅威となる社会課題に着目し、それを利用することで少ない競争の中で強みを生かした新規ビジネスができるという考え方が示されました。続いて、社会課題を利用した新規事業の例として、外国人観光客向けホテルの不足に着目したからくさホテルや、主要事業者が少なく、観光需要の高まりに対して供給不足のリスクがあるリネン事業への参入をどのような考えで推進したかの説明がされました。最後は、社会課題を利用する形の新規ビジネスは、簡単に解決ができない分、長く深く事業を繋げられるという言葉で講義が締めくくられました。
【塾生の声】
「ザイマックスのホテル事業、リネン事業立上げ時の当事者の方からの講義であり、とても感銘を受けた。実例をもとに、自らの強みによって、社会課題を「解決する」のではなく「利用する」ことは新規ビジネスを創り上げる一つの効果的な手法であることを学び、社会課題とビジネスは直結することを再認識できた機会となった。(20代・金融業)
新規ビジネス創出のプロセスについて、具体的なケースをもとにお聞きでき、大変貴重な機会であった。実際に直面していた課題や活用可能なリソースの情報も含め、社会課題解決と新規ビジネス創出をどのように両立させていけるか、講師の実際の思考過程を追体験できた。自身の日々の業務にどのようにフィードバックできるか引き続き考えを巡らせたい。(30代・専門サービス業)
株式会社ザイマックスグループ リネン事業担当執行役員。
1996年大学卒業後、広告会社、ウェディングドレス製造会社経営を経て2019年当社入社 入社以来当社にとっては新規事業となるリネン事業に従事。京都大学経済学部卒 神戸大学MBA
第十一回9月4日
テーマ
場所の意味をほりあてて、形を考える
講師川添 善行建築家(空間構想一級建築士事務所)/ 東京大学准教授(生産技術研究所)
第十一回目は、川添善行先生による講義「場所の意味をほりあてて、形を考える」が行われました。講義の最初は、建築を独立したものではなく建っている場所の一部として考える必要性が示され、沖縄県竹富島の家屋群や大分県竹田市の利水のための構造物など、その場所で生きるために建築の形態が定められ、今に残っている例が説明されました。続いて、東京大学総合図書館の改修工事の中で、旧図書館のモノとしての価値、コトとしての価値を紐解き、様々な形で意匠に反映させた経緯や、脳科学を用いて室内環境や景観の印象を定量的に評価する研究の紹介がされました。講義の最後は、都市の中で建築が少しずつ重なることが良い都市景観を形成する上で重要という提言で締めくくられました。
【塾生の声】
講義を拝聴して一番印象的だったのは、まちづくりをしていくにあたり、「街全体の美しさに責任取るが人いない」というお話でした。まちの形成に関わるものとして、街の歴史的背景であったり、気候であったり、きちんと時間をかけてくみ取ることが大前提としてあり、責任を持って取り組めているのか?という自問自答をすることができました。(30代・不動産業)
日頃の業務では、土地の活用においてどうしてもビジネス的な観点を意識してしまうことが多いので、川添先生の講義を聞いて、異なる角度から不動産を再評価する視点や本当の意味での「まちづくり」について、新鮮な気持ちで再考することができました。 白水ダム周辺整備、福井県東尋坊のグランドデザイン、東大図書館の改修など、幅広い分野のプロジェクトでご活躍されており、「建築」が単に建物のデザインだけでなく、まちおこし活動等にも広がっていることが興味深かったです。(20代・不動産業)
1979年神奈川県生まれ。東京大学卒業、オランダ留学後、博士号取得。「東京大学総合図書館」、「望洋楼」、「四国村ミウゼアム」、「インド工科大学中央図書館」などの建築作品や、「OVERLAP」(鹿島出版会)、「EXPERIENCE」(鹿島出版会)、「空間にこめられた意思をたどる」(幻冬舎)などの著作がある。BCS賞、BELCA賞、東京建築賞最優秀賞、日本建築学会作品選集新人賞、グッドデザイン未来づくりデザイン賞、など国内外の受賞多数。
第十回8月21日
テーマ
少子高齢化・人口減少時代の日本の行方 ~都市と地方はどうなっていくのか~
講師内田 要土地総合研究所理事長
第十回目は、内田要先生による講義「少子高齢化・人口減少時代の日本の行方~都市と地方はどうなっていくのか~」が行われました。今回の講義は、人口減少、東京一極集中や地方づくりの動きについて説明されたうえで、「2040年の不動産業はどのような姿になるか?」というテーマで議論するという形で進められました。議論の中では、人口減少の中、サービス業化して長期的に顧客と関わる重要性が高まるという意見や、建築物を建てるだけではなく、空き家や農地を活用するという業態がより存在感を増していくなど、様々な意見が出されました。活発な議論の最後は、「目の前の仕事に凝り固まらず、広く未来について考えてほしい」という講師からのエールで締めくくられました。
【塾生の声】
2040年の不動産業界がどうなっているかを討議しました。データに基づく無機質な推察の応戦から、「世界や社会がこうあってほしい」というビジョンに根差した各人の意見、推察を交えあう場に徐々に昇華され、白熱した場となりました。メンバーの意見から得た気づきと驚きを吸収して、自分なりにグルグルと思慮を巡らす過程を楽しめました。(30代・小売業)
いまやどの話題でも付きまとう少子高齢化という社会問題。都市と地方の構造の変化。「不動産塾」の講義ではあるが、一度「不動産」というキーワードを離れると、多岐にわたる未来の姿・課題が思い浮かぶ。各人が自身の業務に照らし合わせた上で解決案を出し、不動産に関係なくとも思い思いの考えを述べ議論する空気となり、からくさ不動産塾という様々な立場の塾生が集まる空間の良さが実感できる講義でした。(30代・不動産業)
東京大学法学部卒業。建設省入省、国土交通省総合政策局政策課長、大臣官房審議官(不動産担当)、土地・水資源局長、土地建設産業局長を経て、2012年独立行政法人都市再生機構副理事長、2014年より、内閣官房地域活性化統合事務局長、内閣府地方創生室長として、地方創生、国家戦略特区の事務方とりまとめ。2015年11月より不動産協会副理事長・専務理事、2023年7月より現職。麗澤大学客員教授。
第九回7月31日
テーマ
資産運用の対象としての不動産
講師矢口 一成株式会社ゆうちょ銀行 市場部門 常務執行役員不動産投資部長
第九回目は、矢口一成先生による講義「資産運用の対象としての不動産」が行われました。講義の最初は、ゆうちょ銀行で不動産投資の検討が必要となった背景や、現在までの不動産投資の状況が説明されました。続いて、組織では経験がなかった不動産投資をゼロから行うにあたり、「不動産への投資をすべきか」、「どのような要素を考慮してポートフォリオを構築するか」、「どう組織の中で合意形成し実行していくか」の3つの決定事項について塾生に問いかけながら、自身がどう考え行動したかの説明がされました。最後は、徹底的に考えつつスピード感を持って判断することや、継続して勉強し続けることが事をなすため重要であるという、塾生たちへのエールで締めくくられました。
【塾生の声】
講義名から、受講前は機関投資家から見た不動産マーケットの解説といった内容なのかな?と想像していましたが、実際は講師の矢口さんがゆうちょ銀行で初めて「不動産へ投資する」事業を立ち上げた経験を追体験する、というとてもスリリングな内容でした。論理的に思考する部分と、とはいえビジネスは人、という部分、両面で考え行動することの重要性を、実体験を踏まえて熱くご教授くださいました。(30代・不動産業)
機関投資家としての不動産投資に関する考えを知ることができたと同時に、新しい事業を一から立ち上げ成長させてきた経験に基づく意思決定の考え方や組織内での振る舞いなど、仕事観をお伺いすることができ大変勉強になりました。利上げ発表が行われた当日に、マイナス金利政策導入を契機として始まった、ゆうちょ銀行における不動産投資事業に関するこの講義をお聞きすることができたことは、非常に貴重な機会でした。(30代・公務員)
2016年にゆうちょ銀行に入行、同行の不動産投資部門を立ち上げ、チームを育成し、約8年間で4兆円を超える不動産ポートフォリオを構築。エクイティ-デット、私募-公募/上場の4象限に加え、地域、物件タイプ、戦略等を軸として計画したグローバル分散投資を実行している。同行入行以前は、株式会社日本政策投資銀行にて都市開発、アセットファイナンス等不動産関連ビジネスに従事。都合20年以上の不動産投融資経験を有する。
ロンドンビジネススクール金融学修士、CFA、CAIA、ARES不動産証券化マスター。
第八回-第2部7月17日
テーマ
ファシリティデザインの視点から
-ESGが求めるファシリティの姿-
講師似内 志朗ファシリティデザインラボ代表
第2部では似内志朗先生による講義「ファシリティデザインの視点からESGが求めるファシリティの姿」が行われました。講義では、ファシリティマネジメントには計画、建設、利用、評価といった視点が必要という話から始まり、工業社会から知識社会と推移する中でヒトがビジネスの中心となっていったことや、その中でワークプレイスのあり方が変化していることが紹介されました。続いて、環境問題が経済界の主要なリスクとなり、ESGに考慮しつつ利益へとつなげる新しい資本主義へと推移している中、ファシリティを通してそれを実現した建築、企業の事例が紹介されました。最後は、ESGに配慮した投資は経済的にも十分に合理的なものであるというメッセージで講義が締めくくられました。
【塾生の声】
デベロッパーとして、とかく短期的な利益を追求せざるを得ない場面や状況が多々ある中で、ESGやSDGsなどの価値観、社会・環境的価値の重要さを本日の講義を聞いて改めて認識いたしました。地球や社会へ貢献することは、非財務的価値として短期的には数字としての利益にはならないかもしれませんが、長期的に見れば、エネルギーのコストメリットや社員の生産性向上など、数字として財務的価値に表れるという点は、不動産業界だけではなく、広く社会全体に求められる視点であると感じました。(30代・不動産開発業)
人の知恵が富を生む」という人にフォーカスした時代になっているとのことで、より優秀な人材を確保するためにも本社ビルの建て替えや移転を考えているといった会社をよく耳にします。働く人、そして働く場所の流動化が今よりも起きた時に、人にどれだけコストを掛けられるか、オフィスとしての不動産の方向性が二極化しそうだと講義を聞きながら思いました。(20代・金融業)
北海道生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業、ロンドン大学(UCL)バートレット建築校修了。郵政省・日本郵政グループで建築設計・ファシリティマネジメント・事業開発・不動産開発企画と担当。日本郵政(株)事業開発部長、不動産企画部長等を歴任。2019日本郵政(株)退職後、ファシリティデザインラボ代表、(株)イトーキ社外取締役、(株)ヴォンエルフ シニアアドバイザー(2019-2023)、JFMA理事・フェロー・調査研究委員会委員長、筑波大学客員教授、東洋大学非常勤講師等。
第八回-第1部7月17日
テーマ
住宅市場さきよみレポート
生活者の価値観・心理・不動産の選択
講師相島 雅樹株式会社リクルート
第八回目は、2名の講師による2部構成で、第1部では当塾の5期生でもあった相島雅樹先生による講義「住宅市場さきよみレポート 生活者の価値観・心理・不動産の選択」が行われました。講義では最初に、さきの変化を読むものの見方として、今見えていることだけでなく未来の変化から逆算する考え方が説明されました。続いて、未来の構造的変化として居住地の分散化による都市の拡大や、標準的な世帯の変化などが示され、それによる市場の変化の兆しとしてニッチなアセットが出現していることや、今後住まいの自由化がますます進むであろうことが指摘されました。最後は、生活者がそのときに望む住まいを自由に実現できるようになることが、住宅産業の未来の中で重要になるというメッセージで講義が締めくくられました。
【塾生の声】
人口動態や世帯構成といった生活者の確実な変化から、未来の生活の在り方・課題を想像し、逆算によって不動産に求められる機能を考える。「利用者」に焦点を当てるのは当たり前のことであるが、実際の事業の現場では周辺取引事例を中心とした「不動産」に焦点を当てることが多い。改めて、「利用者」に焦点をあてて事業を考えたい。(30代・不動産業)
市場の未来を想像するときに、市場の数値データなどわかりやすい表面的な情報を基に考える思考が強かった自分からすると、本質を捉えてあるべき姿や到達点の仮説を置いて逆算して考えるバックキャストの考え方が非常に興味深かったです。新しい事業を組み立てるには、バックキャスト的な思考が重要であるのではないかと感じました。(30代・不動産開発業)
2012年 株式会社リクルートに入社。SUUMOプロダクトの部署に配属。モバイル・AIパラダイムのプロダクト変革に取り組む。
2019年 SUUMOリサーチセンターへ配属。主任研究員を経て、2024年より現職。生活者のインサイトに基づく戦略変革に取り組む。
慶應義塾大学院メディアデザイン研究科修士修了。
訳書に『行動を変えるデザイン』(共訳、オライリー、2020年)『UXデザインの法則』(共訳、オライリー、2021年)
第七回7月3日
テーマ
「偶発性をデザインする ~人口5000人の徳島県神山町はなぜ進化し続けるのか~ 」
講師大南 信也認定NPO法人グリーンバレー理事
第七回目は、大南信也先生による講義「偶発性をデザインする ~人口5000人の徳島県神山町はなぜ進化し続けるのか~ 」が行われました。地方創生の成功モデルとして新聞やメディアに度々登場する徳島県神山町。2023年には19年ぶりの高専新設となった「神山まるごと高専」も開校しています。こうした特徴的な発展と目覚ましい進化を続ける神山町であっても、実現にあたっては様々な課題があり、それを偶発的な出会いをきっかけに、「人との関わり」や「想い」を共にして解決してきたことが語られました。「できない理由より、できる方法を考える!」「まずは自分の身の回りの事から行動を起こすことが大事」と、ご自身の経験を踏まえた話は、物事を進める上でどのように考え、どう進めていけばいいかを自分事として捉え、実践していくことの大切さを学ぶ講義となりました。
【塾生の声】
大南さんの神山町に対する想い・情熱を直に感じることができ、胸に迫るものがありました。人口減少の現状を受け入れながら自立的発展を図る中では困難も多々あったのではと感じますが、高専設立など様々な取り組みが行われていることは本当に驚かされます。私も自分の身の回りでできることから改めて考えようと思いました。(20代・不動産業)
神山町の講義を拝聴して、感動と共に妙に納得しきれない不思議な感覚を持ちました。それは過疎化が進む町に多くの人々や企業が集まっている現状が、人の繋がりという偶発性の連鎖が無いと説明出来ないためでした。街づくりにおいても理論や経済合理性を重視して本当に大切な事を見落とさないようにしたいと気づきを得ました。(30代・不動産業)
1953年徳島県神山町生まれ。米国スタンフォード大学院修了。帰郷後、仲間とともに「住民主導のまちづくり」を実践する中、1996年ころより「国際芸術家村づくり」に着手。全国初となる道路清掃活動「アドプト・プログラム」の実施や、「神山アーティスト・イン・レジデンス」などのアートプロジェクトを相次いで始動。町営施設の指定管理や、町移住交流支援センターの受託運営、ITベンチャー企業のサテライトオフィス誘致など複合的、複層的な地域づくりを推進。2023年4月に開校した「神山まるごと高専」設立に発起人/設立準備財団代表理事として参画。
第六回6月19日
テーマ
「ウォーカブルな都市の要素とは?」
講師樋野 公宏東京大学大学院工学系研究科 都市工学専攻 准教授
第六回目は、樋野公宏先生による講義「ウォーカブルな都市の要素とは?」が行われました。講義では最初に、周辺環境によって歩行習慣などが左右され、歩行習慣が健康に影響を与える「環境―健康行動―健康モデル」の考え方が紹介されました。続いて、都市の歩きやすさ”Walkability”を向上させる歩行者志向のデザイン、土地利用の多様性、ソフト面での促進活動などの6つの要素について、国内外での事例や研究を交えて説明が行われました。それらの要素によって実際に住民・参加者の歩行量が変化することから、まちづくりの中でも歩いてもらう工夫を行う重要性が示されました。最後は、よりウォーカブルなまちづくりに向け、継続して取組を行っていくことの必要性が示され、講義が締めくくられました。続いて、都市の歩きやすさ”Walkability”を向上させる要素とされる歩行者志向のデザインや土地利用の多様性、ソフト面での促進活動などについて国内外での事例や研究を交えて説明が行われ、それらの要素によって実際に住民・参加者の歩行量が変化し、まちづくりの中でもそうした歩いてもらう工夫を行う重要性が示されました。
【塾生の声】
これまで予防医学の観点で都市開発を考えたことは無かったが、「ウォーカブルな街」とは散歩していて楽しい街でもあり、住宅などの購買者への付加価値としてどのように健康面も訴求していくか、考えるきっかけとなった。また、ラドバーン方式よりもグリッド状の道路網の方が、人口密度の高いエリアの方が「ウォーカブル」というのは(考えてみればその通りなのだが)目から鱗であった。(30代・卸売業)
普段の業務では都市・不動産の文脈から捉えていた「ウォーカブル」について、健康(肉体的・精神的・社会的)や公衆衛生などの幅広い視点から、豊富な研究実績、既往文献をもとに解説いただき、その奥行きや、研究(およびビジネス)領域としての可能性を感じた。日々の業務活動を行う際にも「自らの領域がその外にいる人からどう捉えられているのか」等、俯瞰的、多面的な見方を意識していきたい。(30代・専門サービス業)
2003年東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻博士課程修了。博士(工学)。
独立行政法人建築研究所(当時)を経て、2014年から現職。
都市環境の健康影響を研究し、2022年に「身体活動を促すまちづくりデザインガイド」を公表。
第五回6月5日
テーマ
不動産市場における10年の構造変化~変化をいかにビジネスチャンスにするか~
講師榎本 英二野村不動産ホールディングス 執行役員 DX推進統括
第五回目は、榎本英二先生による講義「不動産市場における10年の構造変化~変化をいかにビジネスチャンスにするか~」が行われました。講義では、最初に目の前の変化に一喜一憂せずにビジネスチャンスを得るためには構造変化を見据えた仮説を持つ必要があるという話から始まり、続いて今後の不動産業界の構造変化を考えるうえで重要な9つのテーマが説明されました。テーマとしては、「人材100年時代」、「グリーン投資の行く末」、「立地論の変化」や「地政学的な動向」などが取り上げられ、不動産業界の大きな構造変化が起こる背景として社会の変化やテクノロジーの発展、法律の改正などがあるため、それらの動向も注意深く観察する必要があるというメッセージで締めくくられました。
【塾生の声】
講義サブタイトルの「変化をいかにビジネスチャンスにするか」という言葉が印象的でした。建築費高騰市況における新築から既存への変遷、人生100年時代、ポストコロナ等、移り行く時代の中で、その時々の潮流をとらえ、正しく理解したうえで、自分なりの仮説をもってビジネス(日頃の業務)に落とし込むことの大切さを感じました。さまざまな仮説をもつ上では、専門家の視点を学ぶことが非常に重要と思うので、今後のからくさ不動産みらい塾の講義が益々楽しみになりました。(20代・不動産業)
過去・現在・不確実な未来と、幅広い情報から自ら仮説を立て、あるべき姿を追い求めることの重要性を再認識した。日々業務の中では目の前のミッションを果たすことに盲目的になり、必ずしも将来のあるべき姿を追えていないのではないか。今後本当に必要なことは何なのか、時には自分の役割とは異なる方向であったとしても、考え大事にする必要があると感じた。(30代・金融業)
1985年慶應義塾大学経済学部卒業。1985年野村不動産入社、経理・総合企画・商品開発・資産運用事業に携わる。2008年執行役員 資産運用カンパニー副カンパニー長兼運用企画部長、2009年野村不動産投資顧問副社長、2013年野村不動産常務執行役員法人営業本部副本部長、2015年野村不動産アーバンネット専務執行役員を経て2017年同代表取締役兼副社長執行役員就任、2021年野村不動産ソリューションズ代表取締役副社長。2024年野村不動産ホールディングス執行役員就任、現在に至る。
1990年大手米国年金基金との米国不動産投資を開始し、1997年からは日本の不動産投資に着手、2001年不動産私募ファンド運用のため、野村不動産インベストメント・マネジメント株式会社設立。2002年には日本の運用会社による初めてのオポチュニティファンドである日本不動産オポチュニティ・ファンド(JOFI)の組成・運用を手がける。2004年以降、同社の安定型不動産私募ファンド(Smileシリーズ)の組成に携わり、2005年野村不動産投資顧問株式会社を設立、不動産証券化商品への投資に着手。2010年私募REIT第一号を運用開始。
2013年野村不動産にてCREを中心とした法人営業を担当。
2015年野村不動産アーバンネットにて仲介・CRE部門の企画を担当。(2021年4月1日より「野村不動産ソリューションズ」に社名変更)、同社のデジタルマーケティング、DX戦略を推進。2024年野村不動産ホールディングスにて、グループ全体のDX戦略推進を担当。宅地建物取引主任者、日本証券アナリスト協会検定会員
第四回-第2部5月22日
テーマ
データ利活用型まちづくり
- 建築・街区・都市のDX -
講師川除 隆広日建設計総合研究所 執行役員 麗澤大学 客員教授
第2部では川除隆広先生による講義「データ利活用型まちづくり―建築・街区・都市のDX―」が行われました。講義では最初に、近年様々な都市情報が蓄積されており、それらを生かした都市の定量的な可視化やまちづくりが可能になってきていることの説明がありました。続いて、建築・都市DXに関する最新の動向として3D都市モデルや都市計画GISなどのオープンデータ化、不動産ID化の推進を紹介し、それらを用いてどのような利活用が考えられるかの事例が紹介されました。最後は、データ利活用型まちづくりを進めるにあたり、これまで説明したオープンデータ等に加え、エリア・建物のミクロな情報が重要なことや、5つの重要なKPIが示され、講義が締めくくられました。
【塾生の声】
3D都市モデルや不動産情報ライブラリ、不動産IDなど新しい不動産情報インフラが登場していることを知り、データを横断的に収集、規格化、可視化し、それをオープンにしていくことによる新たな価値創造の可能性を感じた。自身の仕事でも不動産データの分析を行っており、仕事の幅を広げることに役立てたい。(30代・保険業)
不動産関連データのDXとは、不動産に紐づくデータが連携し、誰もが情報にアクセスできるようになること。これによって街の意外な過去・現在を知り、多様な次元でのイノベーションが期待できると思いました。また、GPSなどのオープンデータの利活用・分析から見えるダイナミックな新たな都市形成の可能性には、日々不動産開発を行う自分自身にとって活力となりました。(30代・不動産業)
1995年東京理科大学大学院修士課程修了。2001年京都大学大学院博士課程修了。博士(工学)。技術士(総合技術監理部門・建設部門)。専門は、都市計画、都市情報分析、事業評価、官民連携事業など。総務省ICT街づくり推進会議スマートシティ検討WG構成員、総務省データ利活用型スマートシティ推進事業外部評価委員、内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術」のうち「アーキテクチャ構築等」採択審査委員、国土交通省/データ駆動型社会に対応したまちづくりに関する勉強会委員、CASBEE都市検討小委員会委員、CASBEE街区検討小委員会幹事などを務める。著書に「ICTエリアマネジメントが都市を創る」、共著に「スマートシティはどうつくる?」、「駅まち一体開発 TOD46の魅力」、「不動産テック」などがある。
第四回-第1部5月22日
テーマ
技術・社会の未来予測と建築不動産産業へのインパクト
講師河瀬 誠立命館大学(MBA)客員教授 / MK&Associates 代表
第四回目は、2名の講師による2部構成で、第1部では河瀬誠先生による講義「技術・社会の未来予測と建築不動産産業へのインパクト」が行われました。講義では、最初に技術革新が業務を消失させてきた歴史や、DXを進めるうえで、今後も現在の業務を消失させる意識が必要であることが示されました。続いて、立体印刷やロボットといった建設不動産産業を変える新技術や、消費者の価値観の変化やデジタル技術の進化による市民生活の変化が紹介されました。その後、発電の低コスト化や自動運転によって、都市のあり方も変化していくことが事例を交えて紹介され、最後は「未来をバックキャストし、そこに向けた妄想を広げてほしい」という言葉で締めくくられました。
【塾生の声】
デジタルは加速度的に進化してきているが、実際の企業や製品の事例をみると社会・都市・生活に与える影響は絶大であることを改めて実感した。建築業界においても、海外ではITやロボットが多く活用されており、国内の不動産業界の今後の動向にも注目したい。海外や他業界にも目を向けることで得る学びは多いと再認識できた講義だった。(20代・金融業)
今回の講義では「DX」は業務効率化のためのものでなく「業務を消滅」させるためのものであると伺った。実際、講義を受けた後、生成AIのChatGPTを使用してみたが、作業領域のみならず、企画・提案のレベルまで対応可能であることが分かった。自らの仕事がAIに取って代わられる危機感を覚えながら、来る将来に「人間にしかできない仕事」ができるように心得たい。(30代・不動産業)
東京大学工学部計数工学科卒業。ボストン大学経営大学院理学修士および経営学修士(MBA)修了。A.T.カーニーにて金融・通信業界のコンサルティングを担当後、ソフトバンク・グループにて新規事業開発を担当。コンサルティング会社ICMGを経て、現職。著書に『経営戦略ワークブック』『戦略思考コンプリートブック』『新事業開発スタートブック』『海外戦略ワークブック』(以上、日本実業出版社)『戦略思考のすすめ』(講談社現代新書)『マンガでやさしくわかる問題解決』『課題解決のレシピ』(日本能率協会)などがある。
第三回-第2部5月8日
テーマ
生活者目線での未来予測:”消齢化社会”の到来
講師石寺 修三株式会社 博報堂 博報堂生活総合研究所 所長
第2部では石寺修三先生による講義「生活者目線での未来予測:”消齢化社会”の到来」が行われました。講義では最初に、30年間に亘る調査の中で明らかになった、好みや価値観の年代間での差異が小さくなっている、“消齢化社会”という概念が紹介されました。続いて、消齢化の背景として、気力・体力が若い高齢者が増え、年代間での差がなくなった点や、戦前戦後を経験した世代の退出が進み、旧来型の常識や慣習への意識が低下した点、適齢期といった考えがなくなり、違う年齢層との重なりが大きくなった点が示されました。最後は、消齢化が今後も進み、人々の生き方や市場が変化する中、それらとどう向き合っていくかが重要であるというメッセージで講義が締めくくられました。
【塾生の声】
消齢化と聞いて気付かされたのは、百貨店のフロアガイドからヤングやミセスというワードが姿を消しつつあること。世代無関係に自分が好きなものを着れば良いと考え方が変わってきたからだ。よりこの考え方が進行、先鋭化すれば、現状のモードやコンテンポラリーといった言葉の意味すら薄れ、ゆくゆくはワードそのものが立ち消えてゆくのだろう。(30代・小売業)
『消齢化社会』という聞き慣れないキーワードから始まった講義でしたが、『生活者の視点の変化』が現実に起きていることがデータ上から明らかであり、まず驚きました。年齢による傾向が薄れ、生活者の考え方が多様化している。そのような市場で(不動産のみならず)ビジネスを考えるにあたり、果たして年齢に左右されない“不変の価値観”を新たに探すのが良いのか?多様化に対抗する“数”を用意するのが良いのか?今の商品戦略はこのままで良いのだろうか?など色々な思惑が湧き、講義の後も周りの人とディスカッションしたくなるテーマでした。(30代・不動産業)
1989年に博報堂入社。マーケティングプラナーとして得意先企業の市場調査や商品開発、コミュニケーションに関わる業務に従事。以後、ブランディングや新領域を開拓する異職種混成部門や、専門職の人事・人材開発を担当する本社系部門を経て、2015年より現職。著書:『生活者の平成30年史 ~データで読む価値観の変化~』(共著・日本経済新聞出版・2019年)、『地ブランド~日本を救う地域ブランド論~』(共著・弘文堂・2006年)法政大学 非常勤講師
第三回-第1部5月8日
テーマ
建築プロジェクトの流れと不動産施設の運営・維持管理
講師石田 航星早稲田大学理工学術院創造理工学部建築学科 准教授
第三回目は、2名の講師による2部構成で、第1部では石田航星先生による講義「建築プロジェクトの流れと不動産施設の運営・維持管理」が行われました。講義では、最初に建設業の置かれた状況として、工事量は減少しつつも建設投資額は増加している点や、国外からの対日投資の増加、供給力の不足が示されました。続いて、建築プロジェクトの流れや、プロジェクト関係者の多さによって設計段階で生じている無駄、BIMなどの新技術によってプロジェクトの進み方がどのように変化するかについて説明がされました。最後は、時代の変化に伴い建築物への要求が変化する中、それらに答えて建築物を長期的に活用するため、恒常的な改修が必要であることが示され、講義が締めくくられました。
【塾生の声】
不動産の未来を考える上では、「建築」は避けて通れないテーマであると思います。本日の講義にて、日本の建設業の置かれた状況を体系的に学ぶことができ、非常に有意義なものとなりました。特に、世界における日本の建築市場のシェアが低下している現状や、建築に関する人材不足の深刻さを改めてデータを通してご説明いただいたことで、リアルに危機感を感じることができました。(30代・不動産開発業)
多職種で担い手不足の恒常化が問題となっている中で、建設業においても建築技術者の数は減少し続けている状況下、労働生産性向上のための設備投資の必要性を感じたと同時に単純にロボット化できるものではなくそれらを管理するためにも建築技術者が必要という根深い問題があると認識しました。さらに今後は外資による対内投資やインバウンド需要の影響がある中で日本の建設市場がどうあるべきか考えさせられる講義でした。(20代・金融業)
2009年3月 早稲田大学理工学部建築学科卒業。2012年4月~2014年3月 早稲田大学創造理工学部助手。2014年3月 早稲田大学にて博士(工学)取得。2014年4月~2018年3月 工学院大学建築学部助教。2018年4月 早稲田大学創造理工学部講師。2021年4月より現職。建築施工、建築経済などの研究に従事
第二回4月17日
テーマ
不動産市場の未来:未来の不動産市場のリスク
講師清水 千弘一橋大学教授・麗澤大学副機構長学長補佐
第二回目は、当塾のアドバイザーでもある清水先生による講義「不動産市場の未来:未来の不動産市場のリスク」が行われました。講義は、リスクとは何か、金利上昇や人口減少などが不動産市場にどのような影響をもたらすかといった質問に塾生が回答しつつ、その質問に関連した過去の出来事の経緯や、清水先生ご自身の経験、データを用いた未来予測を踏まえて深堀解説を行う形式で進められました。塾生の回答の中には所属企業ならではの視点も多く含まれており、講師から教わるだけでなく、塾生同士の意見交換の重要性も実感する講義となりました。講義の最後は、「様々なリスクを考慮しながら、未来の不動産市場を作ってほしい」という言葉で締めくくられました。
【塾生の声】
経済の不確実性が高まる中で、不動産事業にも様々なリスクが存在するが、それぞれのリスクについては過去に似たような歴史があり、経済・金融の観点から構造を明らかにすることで、一定程度の予測ができうることを学んだ。事業の現場においては、不動産マーケットの状況を確認することが多いが、マクロ経済の動きもきちんと認識・仮説構築をした上で事業に取り組むようにしたい。(30代・不動産業)
これまでリスクについて深く考えたことはありませんでしたが、Donald Ramsfeld氏の「known knowns」「known unknowns」「unknown unknowns」に関するスピーチ解説を通じて、リスクの捉え方についての示唆を得ました。今回の講義を受け、リスクに対する最善の策は、過去起こったことやこれから起こることの良質な知識を得て、自分の頭で考えて「unknown unknowns」を「known unknowns」に変え、未来をつくっていくことなのだという認識を新たにしました。
当講義では、不動産金融の未来を題材にとり、自分の頭で考えるための素材の取り方、思考の方法を教えていただいたと感じています。(30代・不動産業)
一橋大学大学院ソーシャル・データサイエンス研究科教授、麗澤大学国際総合研究機構副機構長・学長補佐、清華大学不動産金融センター顧問。東京大学博士(環境学)。プリティッシュ・コロンビア大学、シンガポール国立大学、香港大学 客員教授、マサチューセッツ工科大学Research Affiliate、麗澤大学経済学部教授、日本大学教授、東京大学特任教授を経て現職。専門は、指数理論・ビッグデータ解析・不動産経済学。主な著者に、『Property Price Index』Springer(共著)(2020)、『日本の物価・資産価格』東京大学出版会(渡辺努氏と共編(2023))など多数。Member of CRE。
第一回4月3日
テーマ
開講式・不動産の見方、考え方
講師中山 善夫ザイマックス不動産総合研究所 代表取締役社長
からくさ不動産塾は今期より”からくさ不動産みらい塾”へとリニューアルし、からくさ不動産塾第一期から数えて第八期がスタートしました。今期は不動産業界を始め、金融など様々な業種から18名の塾生が参加しています。最初に開校式が行われ、中山塾頭から、からくさ不動産塾の設立背景とそこからからくさ不動産みらい塾へとリニューアルした経緯、塾生たちに向けたこれからの1年間への期待を述べる挨拶や、塾生たちによる自己紹介が行われました。その後、中山塾頭による第1回目の講義「不動産の見方・考え方」が行われました。講義の中では、不動産とは何か?土地とは何か?という話から始まり、変化が早く、不確実性が高い今後の不動産を考える上での重要な視点が解説され、最後は世の中の変化に敏感になってほしいという塾生たちへのメッセージが送られました。講義の後には活発な質疑応答があり、この1年間、刺激的な議論が繰り広げられることが大いに期待される中、第1回目講義が終了しました。
【塾生の声】
第一回の中山塾頭の講義は、今年から塾名に追加された「みらい」について考えさせられる時間でした。不動産が生活・産業の基盤だとしたときに、未来とは誰にとっての、何年後の話を設定すべきなのか。想定される未来に適応すべきなのか、変えようと試みるのか。大きなテーマに思い巡らせていました。不動産の「みらい」に対して、我々はどのように振舞っていくべきなのか、今後1年間のからくさ不動産みらい塾を通して塾生の皆さんと議論を重ね、自分の中での不動産の未来観を持ちながら考えていきたいと思います。(30代・公務員)
「不動産とは何か?」から話が始まり、土地・建物や定着物の定義など、体系的に不動産を学びたいと思っていた私からすると、とてもワクワクする講義でした。加えて、これから残るものの判断軸の視点や各塾生からの様々な意見などを聞いて、塾を通して自身の視野を広げることや知識を深めることへの期待が高まる会でした。(30代・不動産開発業)
株式会社ザイマックス不動産総合研究所代表取締役社長。ニューヨーク大学大学院不動産修士課程修了。一般財団法人日本不動産研究所で数多くの不動産鑑定・コンサルティングに従事。その後、ドイツ証券にてドイツ銀行グループの日本における不動産審査の責任者を務める。2012年よりザイマックスグループの役員に就任、現在、ザイマックス不動産総合研究所にて不動産全般に係る調査研究を担当。不動産鑑定士、MAI、CCIM、Fellow of RICS、Member of CRE。ARESマスター「不動産投資分析」科目責任者、不動産証券化協会教育・資格制度委員会委員。