活動報告(第四期)
- REPORT
卒塾式8月26日
2020年2月5日の開催報告のとおり、からくさ不動産塾4期生の講義は終了しましたが、開催を見合わせていた第4期の卒塾式を8月26日にオンラインで行いました。(来社可能な方は個別に事前実施しました)
中山塾頭、清水先生(アドバイザー)から塾生達へ贈る言葉があり、そのあとは打ち上げへ移行しました。今までは塾生達の趣向をこらした打ち上げの企画があったのですが、今回はオンラインという事もあり、一人ずつの近況報告となりました。
塾が終了してから半年以上が経っていますが、皆が、からくさ不動産塾に参加して自分がどう変わったか、気持ちの面や業務に活かしている点など、改めて皆で濃密な時間を過ごした1年間を振り返っていました。
また、異動先の海外事情やプライベートの変化など、オンラインでありながら、いつもの講義後の飲み会のように盛り上がり、最後は「早く皆で会いたいね」と、再会する日を心待ちにしながら塾生の音頭による1本締めで散会となりました。
ゼミナール2月5日
4チームに分かれて「不動産を取り巻く様々な社会課題を取り上げ、その解決に向けたソリューションを提案する」というテーマのゼミに取り組んだ全チームのプレゼンが2月5日に行われました。
昨年9月にチーム分けが発表されてから、各チームでテーマを決め、現地実査や有識者ヒアリングを行ったチームがあったり、音声や映像が入ったプレゼンがあったりと、からくさ不動産塾の集大成として、各チームの熱のこもったプレゼンが行われました。
各人が他チームのプレゼンに対する意見・感想等を全員で共有した上で、残りの2回を使ってチーム毎に全員で討議をするのがからくさ不動産塾のゼミでしたが、今回は昨今の事情を踏まえて開催中止となりました。
これをもち、17名の塾生が参加したからくさ不動産塾4期の一年間のプログラムが修了しました。卒塾式は改めて行う予定です。
第二十回1月22日
テーマ
創造的過疎から考える地域イノベーション
講師大南 信也認定NPO法人グリーンバレー理事
第二十回目はNPO法人グリーンバレーの理事、大南さんによる「創造的過疎から考える地域イノベーション」。地方創生の成功モデルとして新聞やメディアに度々登場する徳島県神山町。大南さんの毎年のご講義の度に常に新しい取組みの話が紹介されます。しかし、ここに至るまでには様々な課題があり、それを乗り越えるには「人との関わり」や「想い」が大切である。「できない理由より、できる方法を!」など、塾生へ向けて物事を進める上でどう考えればいいか塾生達に伝える、地方創生や街づくりという視点だけではない講義となりました。
【塾生の声】
日本の不動産開発、地方創生に共通する考え方の一つは「物を造ってコンテンツを入れれば、地域活性化に繋がり経済上昇」であることが多いと思います。根底にあるのは「条件が整えば経済が活性化する」が前提になりますが、そもそも人口減少等が起きているエリアではその事業の多くが需要を見切れず失敗しています。
今後日本は首都を含め人口減少が予見され、経済活動も技術の進歩と共に変化している中、過去の“前提条件”が通用しない局面を迎えるにあたり、今回の講義では“創造的過疎”を標榜され所謂“物ありき”に因らない地方創生事例として神山町をご紹介頂きました。
約100年前の青い目の人形から始まる一つの町の物語を通して、不動産を業とし投資回収を至上命題とする者が見失った「文化が経済を育み、需要がハードを整備する」との根本的な視点を再認識する機会となりました。(30代・不動産業)
「神山プロジェクト」という名前は聞いたことがあったが、具体的なストーリーは初めて耳にしました。サラリーマンである我々のように期限を定めて成果を求められる世界ではなく、急がず、稼ぎすぎず。
住民の一体感は、グリーンバレーが目指したから出来たものではなく、似た志を持つ者が集まった街が長い時間をかけて醸成した唯一無二の雰囲気だと、ストーリーを聞いて思いました。
大南さんからも発言があったように、これは地方創生で成功した数少ない事例ではあるが、同じモデルで全国に横展開できるようなものではないものの、この「稼ぎすぎない、規模を求めない」×「長い時間」というのが地方創生のキーワードになるのではと感じました。(30代・投資顧問業)
1953年徳島県神山町生まれ。米国スタンフォード大学院修了。帰郷後、仲間とともに「住民主導のまちづくり」を実践する中、1996年ころより「国際芸術家村づくり」に着手。全国初となる道路清掃活動「アドプト・プログラム」の実施や、「神山アーティスト・イン・レジデンス」などのアートプロジェクトを相次いで始動。町営施設の指定管理や、町移住交流支援センターの受託運営、ITベンチャー企業のサテライトオフィス誘致など複合的、複層的な地域づくりを推進。現在、多様性あふれる人が集う創造地域『せかいのかみやまづくり』を目指し活動中。
第十九回1月8日
テーマ
場所の意味をほりあてて、形を考える
講師川添 善行建築家 東京大学准教授
第19回目の川添先生による「場所の意味をほりあてて、形を考える」。
その場所や空間の持つ意味や歴史性を丁寧に理解し、その上で箱(建築物、不動産)を考えることの大切さについて、ご自身が取り組まれた竹富島や東大の新図書館プロジェクトなどの事例を使った解説がありました。「建物の評価 と 場所の評価」というふたつの視点を心の片隅に置くこと。その視点の持ち方として、場所や空間の歴史、意味、価値をとらえていく。一つ一つの物にはそれを成り立たせる何か必然性が必ず備わり、過去と未来はつながっている。そのような物をほりあて、内包された意味を見出して建物を建てていく、というお話がありました。
【塾生の声】
東京大学の総合図書館の改修や新図書館設計の事例をもとにデザインや設計が人の感性に与える影響を感じることができた。
時に一見して非効率なもの、意図がはっきりしないデザインのモノは、機能を重視してその目的にのみ合わせて設計された建築物・構築物よりも長く愛されるモノに変貌する可能性を感じた。
未来志向のデザインや設計は実は過去の歴史で人間が体験した感性の延長線上にあり、それを具現化する建築家・アーティストをもっとリスペクトしようと思った。(30代・不動産投資業)
建築デザインには意味があり、必然性がある。デザインは気候などの環境、必要な機能、資材の制約などで決まっていく。
機能は「現在」必要とされている機能に焦点を当てすぎると、使い方を制約し、建築が存在し続ける中で時代が変われば無用なものになり得る。
これらのお話を伺って、日本の都市建築が何故こんなに息苦しいのか改めてよく理解出来た。
設計、施主、施工、行政などがデザインに対する高い熱量を持って都市を作り替えていくにはどうすれば良いのか、簡単ではないが、考えて行きたい。(30代・建設業)
東京大学卒業後、オランダ留学を経て、博士号を取得。ハウステンボスにある「変なホテル」の設計で、ギネス記録に登録される。およそ100年ぶりとなる東京大学新図書館計画を担当し、2017年に「東京大学総合図書館別館」を完成させた。設計だけでなく、「空間にこめられた意思をたどる」(幻冬舎)、「このまちに生きる」(彰国社)などの著作もある。日本建築学会作品選集新人賞、グッドデザイン未来づくりデザイン賞、ロヘリオ・サルモナ・南米建築賞名誉賞などを受賞し、空間構想一級建築士事務所、日蘭建築文化協会会長などの要職を務める。
第十八回-第2部12月11日
テーマ
企業における不動産戦略と不動産テックの動向
講師板谷 敏正株式会社プロパティデータバンク 代表取締役社長
第18回目の板谷さんによる「企業における不動産戦略と不動産テックの動向」。
公共と民間が所有する不動産ストックの状況の解説から始まり、企業が本社を所有するか賃借するかの判断は、外資系だから、IT系企業だからといった事ではなく、それぞれの企業が経営戦略の中で決める事である。また、ワークプレイスの改革によって知的生産性が向上し企業の付加価値も増大する、などについて事例紹介を交えた説明がありました。不動産テックの潮流や不動産業界におけるデータ活用についても最新動向を解説頂きました。
【塾生の声】
ESG、CRE、不動産テックという世界的に不動産投資家が注目しているテーマであり、非常に有意義な回だった。
特にCREの文脈では良くあるような、企業不動産の流動化→有利子負債の返済→ROAの向上という一方向の議論ではなく、定量的なデータや実際の事例、考えられる手法とそのpros/consにも触れながら「日本企業は経営トップも交えて個々の企業にとって最適な不動産活用を考えるべき。」という主張をされていた点が非常に印象的だった。
またデータサイエンスの事例で取り上げていた滅失建物の中央値にかかる誤謬には目からウロコが落ちた。自分も振り返ると、築古物件における取り壊しの判断や既存設備の更新タイミングの検討において「過去のデータ」を唯々諾々と受け入れることもあったが、上記の例に限らず、個別物件の状況を見ながら判断するように心掛けたいと思う。(20代・アセットマネジメント)
普段の業務でCRE提案を主なミッションとしている為、興味深く拝聴させていただきました。特に後半部分のデータサイエンスの活用については非常に興味深い内容でした。
建物滅失時の築年数中央値が床面積10,000㎡以上で44年、床面積3,000㎡未満で34年となる一方、建物の残存率を算定すると築60年でも半数の建物が残存している等の違いがあり、今後より一層情報量が増える社会において、データの適切な利活用を検討する必要があることを再認識致しました。(30代・信託銀行)
早稲田大学大学院理工学研究科修了、清水建設株式会社入社。
2000年、社内ベンチャー制度を活用し、不動産管理向けクラウドサービスを展開するプロパティデータバンク株式会社設立、代表取締役就任。09年には最も優れた経営戦略を実践する企業として“ポーター賞”を受賞。18年には東京証券取引上マザーズ市場に上場。その他国交省「企業不動産の合理的な所有・利用に関する研究会」委員、「不動産ID・EDI研究会(2007)」委員、日本ファシリティマネジメント協会理事などを務める。芝浦工業大学客員教授、早稲田大学理工学研究所招聘研究員を兼任。博士(工学)
<主な著書>
CRE戦略と企業経営(東洋経済新報社)
次世代建設産業戦略2015(日刊建設通信)
第十八回-第1部12月11日
テーマ
人フォーカス時代のESG~都市・建築・ワークプレイス・FMを中心に~
講師似内 志朗株式会社ヴォンエルフ シニアアドバイザー、JFMA調査研究委員会委員長
第18回目の前半は似内さんによる「人フォーカス時代のESG~都市・建築・ワークプレイス・FMを中心に~」。
人のアイデアが富を生む時代になり、世界においては「ESG的価値観への転換」が大きく進む中、日本においても「働き方改革」や「健康経営」が注目されてきた。健康経営は、経営資源である社員への健康への投資でありコストではなく、企業価値を向上するものであり、この潮流はずっと続くだろうとの解説がありました。欧州の都市・建築・ワークプレイスの事例に加えて、国内のグリービルの紹介などがあり、長期投資の不動産事業では環境、健康、BCPといった社会性への配慮が経済価値の上昇につながり、今後は公共性と事業性の概念が変わって公と民の役割も変化していくだろう、との解説がありました。
【塾生の声】
今までの環境不動産とはエネルギー消費量やCO2排出量の削減を指標として、ハードよりの議論に終始していたように思います。その枠組みの中では、イニシャルとランニングコストを経済的な因数として投資判断がなされ、収支が合わず導入断念としたケースが累々としている印象です。似内さんのご講義であったWELLなどの各種認証の普及や海外事例を鑑みても、コストのトレードオフに留まらず、人が活動する場としての包括的視点から環境不動産を捉える流れにシフトしており、いわば「削減」から「価値創出」にステージが変化していると感じました。
潮流を捉えながらも、個別の不動産にどのような価値が求められ、創出をするのか、日々意識して取り組みたいと思います。(30代・建設業)
今回の講義でご説明のありました環境認証等については、弊社の不動産事業においても、意識・注目している事柄であるなか、グーグル米国本社やアップルパークの事例等、非常に参考となりました。
今までの講義でもご教授いただきましたが、国内の不動産動向だけでなく、米国等先進国のトレンドに注目して国内不動産の方向性を考えることが重要であると、当塾にて学びました。講義も残り少なくなりましたが、1つ1つの講義から多くを学びたいと考えております。(30代・生命保険)
北海道生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業、ロンドン大学(UCL)バートレット建築校修了。郵政省・日本郵政グループで建築設計・ファシリティマネジメント・事業開発・不動産開発企画と担当。日本郵政(株)事業開発部長、不動産企画部長等を歴任。2019日本郵政退職後、ファシリティデザインラボ代表、(株)ヴォンエルフ シニアアドバイザー、JFMA理事・調査研究委員会委員長、筑波大学客員教授、東洋大学・芝浦工業大学非常勤講師等。
第十七回12月4日
テーマ
不動産資本市場発展の25年を振り返って
講師冨川 秀二三井不動産投資顧問(株)代表取締役
第17回目は冨川さんによる「不動産資本市場発展の25年を振り返って」。
日本の不動産資本市場の黎明期から第一線でご活躍されている冨川さんよりご講義いただきました。90年代以降に不動産と金融が融合して業界が大きく変貌、成長を遂げた経緯や、背景、さらには米国での市場拡大に寄与した諸制度との比較等をご自身の経験談や思いも交えながら解説頂きました。塾生達に「これからの需要はどう変わっていくか、グローバルな視点を欠かさずに自分のビジネスを考えて欲しい」とメッセージが送られました。
【塾生の声】
Eコマース、クラウド、データセンター、働き方改革、サービスオフィス、インバウンド、高齢化、ヘルスケアといった、人口動態の変化や生活パターンの変化から新たな需要が発生しているかと思います。特にグローバルビジネスが拡大する中で、グローバルにプラットフォームを構築した企業が覇権を握っているかと思いますので、この辺のトレンドは常に追っていきたいと思いました。(30代・ファンドアナリスト)
米国を中心とした世界の不動産投資市場と日本との比較を時系列に沿って丁寧にご説明いただきました。タイムリーなキーワードと不動産を繋げていただき、頭が整理されました。グローバル経済の背景を理解し、新たな需要がどこにあるか常に模索することの大切さを長年の実体験に基づき示していただき、とても刺激を受けました。(30代・信託銀行)
1983年三井不動産入社。1988年ハーバード大学大学院ビジネススクール卒業。
1989年三井不動産ニューヨーク。1997年10月三井不動産投資顧問設立とともに、同社法人営業部長、2004年4月常務取締役就任。
2007年4月三井不動産法人ソリューション部長、2011年4月執行役員不動産ソリューションサービス本部長就任。2015年4月三井不動産グループ執行役員、三井不動産投資顧問代表取締役社長就任。現在に至る。
第十六回-第2部11月13日
テーマ
不動産エコノミストの視点から
講師吉崎 誠二不動産エコノミスト 社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
第16回目の後半は吉崎さんによる「不動産エコノミストの視点」。不動産・住宅市場の変化や進化の将来を見ていく際は、世の中で公表されている予測結果を鵜呑みにするのではなく、自ら最新データのチェックを常に怠らず、自分で予測する力をつける事が重要である。変化のサイクルが早くなっているのはなぜかと疑問を持ち、変化に適応するためには持っている何かを捨てて、新しいことを取り込む事が大切で、今の不動産業界に求められているとの話がありました。最後には、第1期生でもある吉崎さんから「からくさ不動産塾をどう捉え、どう活かしていくか」を後輩の塾生達に投げかけ、自らの経験や感想を述べながらディスカッションが行われました。
【塾生の声】
不動産エコノミストとしての視点からお話いただき、将来予測に関する情報への向き合い方を考えるきっかけとなりました。将来を予測するための材料としてのデータトラックが豊富になった一方、各ファクターの変化のスピードが加速度的に早くなったことに加え、多様なファクターの有機的な繋がりが増加し、予想する未来の姿の幅が広がっていることを感じました。
だからこそ、未来を当てにいくのではなく、未来のあるべき姿を考えることが必要であるという気づきとなりました。(30代・不動産業)
初めて塾卒業生の方が講師を務められる貴重な機会でした。「データ分析」がどの業界でも定常化されている現在こそ、「常識を疑う」だけではなく、正しい認識を得るために日々蓄積すべき方向性を見直すことの重要さも考えさせられる回でした。日常業務上、GISや小売のデータを大量に扱う機会が数多く、部署や取引先の経営判断に案を呈する際、あらゆる限界を感じることは否めないため、伝統的/公的シンクタンクの予測でもズレることを前提に、自ら最新のローデータを追いつつ、変化に対応できる柔軟な我流を持つことを、今後とも常に意識したく思います。(30代・不動産総合サービス)
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。㈱船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 、(株)ディーサイン不動産研究所 所長 を経て 現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。からくさ不動産塾第1期生。
著書:「データで読み解く 賃貸住宅経営の極意」 (芙蓉書房出版社) 「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等10冊。多数の媒体に連載を持つ
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/
第十六回-第1部11月13日
テーマ
ICTエリアマネジメントが都市を創る
講師川除 隆広日建設計総合研究所 理事 上席研究員
第16回目の前半は川除さんによる「ICTエリアマネジメントが都市を創る~街をバリューアップするビッグデータの利活⽤~」。情報量が拡大に増加している現代社会において、ビッグデータを街づくりにどのように活かしていくかがテーマ。府省が連携したスマートシティ推進の動きや、官民協働によるICTを活⽤した新たなエリアマネジメントの方向性などについての解説がありました。また、携帯位置情報を使った安心・安全な街づくり、購買ポイントデータを使った新たな都市開発の効果測定の定量分析などの事例紹介があり、これからのICTエリアマネジメントの考え⽅においては、経営管理や施設管理だけでなく、市⺠や利⽤者QOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上につながるかという視点を持つことが重要であるとの話がありました。
【塾生の声】
商業施設中心の弊社にとって、データとは「顧客の個人情報」「顧客の購買履歴」の2つから抜け出せない期間が長すぎました。今でこそ商業デベロッパー各社は消費の場としての特性から「顧客の行動」というデータを集め、マーケティングやプロモーションに活かし始めていますが講義でもあったように建物内の話に終始しております。最後の提言であったように官民がデータを出し合い、エリア/街としての導線や機能(商業内テナント揃え含めて)をそれぞれのエリア/街にあった目的で落とし込んでいくことの必要性を切に感じました。時代の流れとしていろんな商業施設が役割を終え、閉店していくことは仕方がないのかもしれません。ただ、閉店時に地域住民の惜しむ声を聴くたびに、建物内だけでなくエリア/街の中でやれることがもっとあったのではないかと感じるばかりです。(30代・小売業)
これからの都市は、必ずしも立地や設備を中心としてではなく、ICT(Information and Communication Technology)によって構築されていく可能性がある。また、ICTに力点を置いた都市開発が一部では既に進められているというお話は、たいへん興味深く聞かせていただきました。「スーパーシティ」構想の実現に向けた国家戦略特区法の改正案が来年の通常国会に再提出される予定とも伺っており、現在、最もホットな不動産トピックの1つではないかと思います。(40代・法律事務所)
1995年東京理科大学大学院修士課程修了。2001年京都大学大学院博士課程修了。博士(工学)。
専門は、都市計画、都市情報分析、事業評価、官民連携事業など。
総務省ICT街づくり推進会議スマートシティ検討WG構成員、総務省データ利活用型スマートシティ推進事業外部評価委員、内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術」のうち「アーキテクチャ構築等」採択審査委員、CASBEE都市検討小委員会委員、CASBEE街区検討小委員会幹事などを務める。
著書に「ICTエリアマネジメントが都市を創る」、共著に「スマートシティはどうつくる?」、「駅まち一体開発 TOD46の魅力」などがある。
第十五回-第2部10月30日
テーマ
技術・社会の未来予測と不動産産業へのインパクト
講師河瀬 誠MK&Associates 代表
第15回目の後半は河瀬さんによる「技術・社会の未来予測と不動産産業へのインパクト」。AIやIoTといったテクノロジーの目覚しい進化はデジタル化によって今後も加速し、働き方が変わり、モノづくり、モビリティ、エネルギー供給はこれから激変していく。日本では高齢化が進み、東京は世界的な都市の位置づけが低下していくだろう。しかし、人々の価値観は変わり、新たなテクノロジーで「幸せ」の実現する会社が価値を生むようになってくるため、新たな文化を創造する都市が価値を持つようになる。不動産業も自己実現をサポートする空間の提供が求められる、という話があり、塾生達に「変化が起きる事を前提に、今までの成功パターンを捨てて、覚悟を決めてチャレンジして欲しい」とメッセージが送られました。
【塾生の声】
川瀬様の講義は、将来起こるかもしれないと言われていることがふんだんに盛り込まれていた。講義終了時には、それらが近々確実に起こると思わされ、人工知能にとって変わられないように付加価値の高い仕事をしなければならないと、襟を正す自分がいた。明日からは、今の延長線上で物事を考えるのではなく、将来の姿から逆算して物事を考えていきたい。(30代・商社)
今回は不動産から少し離れ、将来を予測するという観点から講義を受けた。現在の技術革新のスピードは凄まじいものがあり、正直なかなか予測は難しい。いかんせんAIやIoTなどのサービスは加速度的な速さで普及するからだ。それらは不動産業界にも影響を及ぼし始めていることは、実感しつつあったため、今回の講義を受けて、より確信した。技術革新が普及し出してから進出しても遅いため、常にアンテナを張って、自分自身がよりクリエイティブな仕事を意識しようと思った。(20代・不動産業)
東京大学工学部計数工学科卒業。ボストン大学経営大学院理学修士および経営学修士(MBA)修了。A.T.カーニーにて金融・通信業界のコンサルティングを担当後、ソフトバンク・グループにて新規事業開発を担当。コンサルティング会社ICMGを経て、現職。著書に『経営戦略ワークブック』『戦略思考コンプリートブック』『新事業開発スタートブック』『海外戦略ワークブック』(以上、日本実業出版社)『戦略思考のすすめ』(講談社現代新書)『マンガでやさしくわかる問題解決』『課題解決のレシピ』(日本能率協会)などがある。
第十五回-第1部10月30日
テーマ
グローバルな視点:米国の不動産事情
講師山本 みゆきサンポップインターナショナルマネージング・ディレクター
第15回目の前半は、山本さんによる「米国の不動産事情」。マンハッタンにおける不動産開発のトレンドや、日本と米国の不動産の違いについて解説がありました。また、最近の住宅や商業不動産では、仕様の高級化、建物の高層化、エコ化、ハイテク化が進んでおり、多くの写真事例を用いた説明が行われました。
ニューヨーク市では大型ビルに温室効果ガス削減義務を果たす新条例が制定され、マンハッタンのスカイラインの特徴となるグラス・カーテンウォールの超高層ビル開発への影響が懸念されているといった、ニューヨークに在住されている山本さんならではの最新トレンドの紹介もありました。
【塾生の声】
現地でビジネスをやっているからこそ分かる、変化の真っただ中にあるニューヨークの「今」の不動産事情、トレンドなどを聞くことができました。
特にマンション業界において、高機能化、高価格化が顕著になってきており、それを支えるアメリカの購買層の厚さと長期にわたる不動産価格上昇トレンドの背景など、日米を対比することで見えてくる、今後の日本の不動産開発にも影響を与えるであろうトピックスも多く、大変興味深い内容でした。(30代・金融業)
この度の講義では海外不動産のうちNYを中心に不動産再開発の動向に関してとても興味深く拝聴させて頂きました。本講義のみでなく、他の講義でもご教示頂く海外再開発事例等を拝聴しますと行政と民間が非常に強く連携をとり、インフラ含めた整備を行い競合都市との差別化を行われている事例が多い気も致します。
我が国は高度経済成長期において、国土改造、国土強靭を旗印に官主導で開発を行い東京オリンピックでのインフラ構築を行った歴史があり、現在は2020年東京オリンピックに向けて更なる都市機能更新を行っております。今後の人口構成の変化やインフラ老朽化等の課題がある現代において、国際都市として如何に魅力を失わずに特色をもって都市機能を更新していけるのか今後の不動産を担っていく我々塾生として「他国の話し」では済まされない危機を啓蒙頂いた貴重な講義でした。(30代・不動産業)
不動産コンサルタント。ニューヨーク大学大学院不動産修士課程修了。CCIM(米国不動産投資アドバイザー)、NY州公認ブローカー。NHK海外取材の翻訳にも携わる。
<主な著書>
米国の不動産知識 A to Z(住宅新報社)、各種不動産業界誌に米国不動産事情連載
第十四回10月16日
テーマ
不動産ファイナンスとPRE・PPP/PFI
講師内藤 伸浩不動産証券化協会 専務理事
第14回目の講義は、内藤さんによる「不動産ファイナンスとPRE・PPP/PFI」。前半はJ-REITや証券化スキームなど、不動産証券化の基礎的な事項だけでなく、J-REIT市場の創設に関わってこられた内藤さんのご経験談も交えながら解説頂き、不動産証券化はリスクマネーを循環させながら不動産開発をすることで社会資本の整備に貢献している、との話がありました。
後半では公共不動産(PRE)を取り上げ、インフラだけでなく施設の老朽化が進み全部更新ができない現状の中でどうマネジメントをしていくかが求められており、様々な取組みとして「多機能複合化」などの事例紹介がありました。また、PPP/PFIの核心は民間の本気を引き出す事で、そのために民間資金(市場規律)に基づく施設経営が望まれるが、日本ではまだ軽視されているという話もありました。
【塾生の声】
前半の「不動産の証券化」は、証券化の歴史も含めて復習することができた。
後半の「PRE・PPP/PFI」では、財源に制限のある市町村が抱える公共施設を民間の資金やノウハウを活用して成功した事例を勉強することができた。
しかしPREの分野はまだ民間の本気度が低く、単発の案件ではなかなか成長性が見込めないため今後はより複合的・総合的なプランに基づく民間の投資機会が必要であると感じた。(30代・不動産投資業)
PFI/PPPと聞いて自分がイメージしたような大規模なコンセンション・事業の民営化に限らず、1つの図書館や地方の駅前再開発事業といったものにも活用された事例が日本で既に存在することは意外であった。
費用と便益を分析、官民の負担・分配を工夫することで、官のコスト負担を限定しつつ、民による主体的な関与のインセンティブを持たせる仕組みを活用するというのは非常にうまいアイディアだと思う。すでに欧米では斯かる考えのもとで、いくつもプロジェクトが実施されているようで、以下の点を中心に事例を掘り下げることで日本におけるPFI/PPPを検討する上で示唆があるのではないかと考える。
- 1. 関係者間でどういったリスク負担の合意方法(含む「便益」の定義)をしているのか
- 2. 最終的な投資家(リスクテイカー)の達成しているリターン
- 3. 中長期目線でプロジェクト自体がうまくいっているのか(特にサービスの質の担保という面において)
今後、日本ではインフラの老朽化、足許で再認識される自然災害リスク及び公共財政の悪化等に伴って、PPP/PFIのニーズは更に高まっていくことが見込まれるのではないか。不動産の証券化と近いこの手法は社会的意義が大きく、大きなビジネスチャンスでもあると思うので、個人的にも関心を持っていきたい。(20代・アセットマネジメント)
1981年東京大学法学部卒業後、三井不動産(株)入社。1991年慶応義塾大学大学院経営管理研究科修士課程修了。2009年より東京大学公共政策大学院特任教授(2014年3月退任)、2014年10月より東京大学公共政策大学院客員教授(2017年3月退任)。2015年5月より一般社団法人 不動産証券化協会 専務理事、現在に至る。
<著書>
『人口減少時代の公共施設改革~まちづくりがキーワード』(時事通信社、2015年)
『アセット・ファイナンス~資産金融の理論と実際』(ダイヤモンド社、2003年、不動産協会優秀 著作奨励賞受賞)
『日本企業の戦略管理システム』(白桃書房、1997年、共著)
第十三回10月2日
テーマ
世界経済の状況と日本
講師西村 淸彦政策研究大学院大学特別教授
東京大学金融教育研究センター特任研究員(Distinguished Project Research Fellow)
第13回目は、からくさ不動産塾のアドバイザーでもある西村先生による講義。今まで当塾では西村先生は特別講演として卒塾生等も交えた講義でしたが、今回は四期生のみを対象に行いました。講義内容は、西村先生が9月に海外で講演された「The New Normal? Lessons from Japan」をベースにしたもの。日本と米国の経済状況は似ている点と違う点を取り上げ、両国とも労働市場において失業率が低下して背景が似ていること、また、将来期待における差により消費行動の面で違いが生じているなどの解説がありました。
経済情勢は欧米や中国も含めて厳しい状況にあり、人口の高齢化を迎えた日本がどのような問題が起きて対処したか、世界中で日本に対する関心が高まっているが、長期でとらえることが必要であり、「未来は現在を決める」。それを念頭にこれからのゼミにも取り組んでほしいとのお話がありました。
【塾生の声】
第13回講義で印象に残った言葉として、「未来は現在を決める」というフレーズが非常に頭に残っております。普段の業務でも感覚的に将来の需給バランス等を意識することはあるものの、せいぜい数年先までの未来をぼんやりと思い描いている程度だったなと再認識しました。またご講義終了後も含め、今まで考えたこともないような数十年先に起こり得るリスク等を考えていらっしゃるお話を聞き、感服致しました。(30代・信託銀行)
超長期の経済サイクルは人口動態が作り出す。まず、人口(数)の問題が不動産マーケットの問題となっていく。加えて、最近の新技術(クラウドなど)は、既存技術のリプレイスの性格が強く、かつ価格はゼロであるため、リプレイス前の需要総計を上回らないという特徴がある。不動産のライフサイクルは数十年を超えるものであるため、超長期の経済サイクルや新技術が経済・需要全体に与える影響を見据えて開発されるべきものと感じた。(30代・建設業)
東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程卒業、米国イェール大学Ph.D。東京大学経済学部助教授、同大学院経済学研究科教授、内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官(兼任)、日本銀行政策員会審議委員を経て、日本銀行副総裁(2008年3月~2013年3月)、内閣府統計委員会委員長(2014年2月~2019年10月)。2019年10月~総務省顧問に就任。2015年秋紫綬褒章受章。
第十二回9月18日
テーマ
「デザイン」と不動産
講師林 厚見株式会社スピーク共同代表/「東京R不動産」ディレクター
第十二回目の講義は「東京R不動産」のディレクター、林厚見さん。
立地やスペックといった目に見える価値が重視された時代から、「デザイン」といった感性に基づく価値が重視されるようになるまでの変遷、さらにはそもそもデザインといった「右脳価値」が「経済価値」に結びつくために必要な考え方など、一見曖昧に見えるテーマをロジカルに解説して頂きました。
「東京R不動産」を中心とした各種ビジネスで顧客の感性に響くサービスを創出している林さんご自身の経験をご紹介頂きながら、塾生は日頃無意識に右脳で感じている価値を取り出し、不動産ビジネスとの接点を考える講義となりました。
【塾生の声】
ご講義の中で印象的であったのは、社会の価値観が市場論理に基づく「合理性」と、気持ちよさや愛着といった「人間性」とが融合したものへシフトしていると捉え、その視点からビジネスフロンティアを見出すとの考え方でした。
ビジネスでは客観的に言葉で説明・共有することが前提との考えが染みついている私にとって、楽しさやワクワクといった言語化が困難な価値にスポットを当てる考え方に戸惑いながらも、一方で、経験として共感できるポイントがいくつもありました。知識だけでなく多様な視点を会得できるからくさ塾ならではの講義であったと思います。(30代・建設業)
もともと志されてた建築に見切りをつけ、右脳を最大限に活かして、様々なビジネスを展開し行政なども巻き込み事業をされている林先生の講義は非常に有意義で、私自身としても、仕事やプライベートにおいてもっと多様な視点で物事を捉えて考えていかなければいけないと改めて気付きました。
講義の最後に林先生より投げかけいただきました「皆さんの”感性”でつくり出せるフロンティアはどこにあるだろうか?」について、講義以降、これというアイデアが出せるよう右脳をフル活動させて日々意識して考えております。
からくさ塾も折り返しの期間になってしまいましたので、今後も講義を通して様々なことを学び・考え、色々な方とのコミュニケーションを通じて自身の成長へと繋げていきたいと思います。(30代・生命保険)
1971年東京生まれ。東京大学工学部建築学科(建築意匠専攻)、コロンビア大学建築大学院不動産開発科修了。経営戦略コンサルティング会社マッキンゼー&カンパニー、国内の不動産ディベロッパーを経て現職。物件サイト「東京R不動産」、「R不動産toolbox」のマネジメントのほか、建築・不動産・地域等の開発・再生や新規事業のプロデュースを行う。共編著書に『東京R不動産2』『だから、僕らはこの働き方を選んだ』『toolbox 家を編集するために』『2025年の建築 新しいシゴト』等。
第十一回-第2部9月4日
テーマ
変化するオフィスマーケット
講師山方 俊彦ザイマックス不動産総合研究所 主任研究員
第十一回目の後半は山方さんによる「変化するオフィスマーケット」。オフィスの位置づけや市場規模、マーケットの3主体(市場ストック、所有者、テナント)が変化している点を確認し、世間に出ている情報の見方や一般に言われているオフィスマーケットの常識について改めてとらえ直してみようと解説がありました。
その後のグループ討議では、4つのグループに分かれ、それぞれ「大規模ビルの未来」「中小規模ビルの未来」「快適なオフィスとは」「フレキシブルオフィスの未来」について議論し、発表を行いました。
【塾生の声】
オフィスマーケットデータの一般的な見方は理解している認識がありましたが、データを見る際に大切な視点等、本質を捉えることの重要性を説いていただきました。また、チーム別の討議では、変わりゆくオフィスの未来について多角的に議論を交わすことができ、今後の検討等で必要な気づきをたくさん得ることができました。(30代・信託銀行)
オフィスマーケットの変化について理解を深めました。大型・中小オフィスビルの供給動向を時系列でみることで、現在のオフィスビルマーケットを推測することができ、マーケットを見る視野が一つ広がったと感じました。様々な指標からマーケットを考察することが重要だと改めて確認しました。(30代・ファンドアナリスト)
1991年日本生命保険に入社。不動産部にて投資用不動産の運営実務に携わり、1997年にニッセイ基礎研究所出向。オフィスマーケットの調査研究に従事。2003年にザイマックス入社。マーケティング部で不動産のデューデリジェンス、マーケット分析を行い、その後、(株)ザイマックス不動産マーケティング研究所(現在のザイマックス総研の前身)及び現ザイマックス総研では、不動産マーケットの調査分析・研究を担当。ARES不動産証券化マスター養成講座テキスト「102不動産投資の実務」“第Ⅱ部不動産市場の指標と見方”を執筆。
第十一回-第1部9月4日
テーマ
21世紀のヘルスケア-転換への4つの潮流
講師大割 慶一KPMGヘルスケアジャパン代表取締役/パートナー
第十一回目前半は大割さんによる「21世紀のヘルスケア-転換への4つの潮流」。我が国のヘルスケアにおける直面する課題とは。また、現在起きている「ケア・セッティングのシフト」「バリュー・ベースド・ヘルスケア」「ペイシェント・エンゲージメント」「医療技術のイノベーション」の4つの潮流についての説明があり、今後、わが国ではヘルスケアの再構築が行われていくとの解説がありました。
【塾生の声】
ヘルスケアについて、消費者として身近なテーマながらも個人的にはビジネスとしては関わり合いが薄い分野。一方で弊社はヘルスケア関連グループ会社もあり、スタディするべき分野であり興味深かかった。先進国では課題と対策がほぼ同じ状況だということは非常に珍しく感じた。また、将来の方向性では政治(国家予算とリンク大)とテクノロジー(テクノロジーで繋ぐパートナーシップ含めて)がキーポイントになると理解できた。講義のQ&Aでも上がったように不動産ビジネスという観点で言えば介護施設が思い浮かんだが、他にも”ファブレス”なパートナーシップの組み方や、政治や市場に大きな影響を及ぼす政治や市場に大きな影響を及ぼす主体(協会・団体・個人など)との兼ね合いも実務ではポイントになるかと思った。(30代・小売業)
今回のテーマであるヘルスケアは、私が普段接している法律実務においても注目分野とされており、サ高住や老人ホーム等といったヘルスケア施設を中心とした不動産取引の文脈に限らず、病院、薬品、個人情報等に至るまで、良くご相談をいただくことがあります。今回の講義では、より大局的で俯瞰した観点から、現代のヘルスケアビジネス全般について説明いただき、たいへん勉強になりました。
からくさ塾の参加者は、皆働き盛りの世代である一方で、両親はいわゆるシニア世代かその少し手前であることが多いのではないかと思い、ライフステージからしても、非常に興味深いテーマだったと思います。(30代・法律事務所)
KPMG東京事務所入社後、KPMGドイツ デュッセルドルフ事務所赴任。KPMGドイツのジャパンデスク統括責任者として、日系企業の欧州事業戦略、組織再編、M&A、リストラクチャリング等プロジェクトに対するアドバイザリー業務に関与。帰国後は、ファイナンシャルアドバイザーとして国内およびクロスボーダーM&A案件を数多く手がける。2000年、KPMGヘルスケアジャパン設立。医療・介護産業を含むヘルスケアセクターに特化した戦略立案・業務変革関連、M&A関連、ファイナンス関連のコンサルティング・アドバイザリー事業の責任者を務める。
第十回8月21日
テーマ
都市計画と不動産
講師日本大学大学院不動産科学専攻教授
第十回目はによる「都市計画と不動産」。前半では日本の都市計画に関わる基本的な法律や諸制度の変遷など体系的な講義が行われました。また、過去に海外で行われた都市のあり方に関する研究の紹介や、これからの都市と不動産のあり方、都市計画における課題等、多岐にわたった解説が行われました。
後半ではグループごとに、特区、空き家、都市内農地、空き家問題、民泊から1つを選んで課題や解決策について議論と発表を行い、から講評・アドバイスを頂きました。
【塾生の声】
明治時代から現在までの都市計画に関わる法律の沿革や「都市とは何か」を考えさせられる講義でした。幾度の改正を経て、海外と比較して綿密に出来上がっている日本の仕組みも、意外と住民参加の度合いが低いと感じました。空き家問題が喫緊の課題となっていますが、色々なアイデアを出して、改善可能な部分もあるかもしれません。ローマ・パリなどに生まれた近現代的都市開発提案は、驚くほど根幹的な目線が一致していたことに驚きましたが、今後の公共整備・地方再生のヒントを示唆していると思います。(30代・不動産総合サービス)
日常における不動産実務においては、直接的な経済合理性を重要視していますが、あらためて都市計画を通じた、都市としての目指すべきビジョンの明確化が必要であることを再認識しました。様々な再開発が進む都市部においては均質化の傾向がありますが、個々の街の歴史・特性を加味しながら、都市全体のビジョンからブレイクダウンした、街毎の役割を定義し、都市計画における「規制」と「緩和」を街にあわせて組合せ、国際競争力を高めていくことが都市計画の重要な役割と感じました。(30代・不動産)
日本大学大学院理工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。日本大学理工学部助手、専任講師、助教授、准教授を経て、現在、日本大学理工学部教授。平成6年5月から1年間「平成6年度日本大学長期海外派遣研究員」として英国及び欧州諸国に長期出張。現在、地方自治体の都市計画審議会委員、建築審査会委員などを務める。
<主な著書>
小嶋勝衛監修「都市の計画と設計第2版」(平成20年12月・共立出版)
一般社団法人日本建築学会編「観再考景観からの豊かな人間環境づくり宣言」(平成25年8月)
第九回8月7日
テーマ
自分を知る・他人を知る・ユーザーを知る・チームワークに生かす
講師くらたまなぶ株式会社あそぶとまなぶ 代表取締役
くらたまなぶさんによる「自分を知る・他人を知る・ ユーザーを知る・チームワークに生かす」。塾生は事前にMBTI型性格診断テストを受けたうえで講義に臨み、MBTI型のとらえ方やその意味についての説明があり、塾生の例を取り上げながら、各々に異なる個性を持った個人間でのコミュニケーションへの活かし方について解説が行われました。
後半には、リクルート時代に14誌を立ち上げた経験から練り上げられた新規事業開発マニュアルを元に、MBTI型を活かしたプロジェクトの進め方の解説が行われました。
【塾生の声】
事前にMBTI型診断を受けて、講義に望んでおり、その解説を素直に楽しみにしていた。
人と人との感覚的な相性を科学的に分析されており、まさに自分を知り、他人を知る。さらにそれを大きな輪で活用する。その視点が、新鮮であった。
なお、この診断は「結果に優劣は無く、国籍・貧富・性差にも関係がない、多様性の走りである。」とのご説明に、とても納得することができた。今後、さらに活用されるだろう。(20代・不動産業)
くらたさんの講義は最近の猛暑のように非常に熱を帯びていたが、人間社会の本質に迫っているような気がして、時折ヒヤっとさせられる瞬間があった。
自分を理解し、相手を理解しようとし、うまく付き合う方法を考えることが重要である、という基本的なことの重要さを改めて感じた。「ダイバーシティ」という言葉が大衆化しつつあるが、数十年も昔からその概念はあったし、単に上っ面の外見等をもってダイバーシティだと言うのではなく、くらた氏が教えてくれたように、特定の個人の内面を要素に分解・分析して、その人の特徴を炙り出した上で、「こういう人もいる」という理解を伴ってこそ本当の意味でのダイバーシティ、世界平和ではないかと感じた。
帰宅後早速妻にもMBTI型性格診断をさせてみたが、予想通りの結果で、いつもけんかをしたり、意見の合わなかったりする要因が言語化された気がした。まずは家庭内でうまく活用できるようにし、仲間内、職場などにも応用し、自分の周りが、少しでもなめらかな世界になれば良いと思った、そんなまなぶの時間であった。(30代・商社)
1978年日本リクルートセンター(87年リクルートに改称)に入社。『とらばーゆ』『フロムエー』『エイビーロード』『じゃらん』など14のメディアを創刊、"創刊男"の異名をとる。新規事業開発室長として『ゼクシィ』『ダヴィンチ』『生活情報360(現「Hot Pepper」の前身)』等、の創刊に携わり、その後開発情報編集局・編集制作統括室長を経て1998年フレックス定年退社。あそぶとまなぶ事務所(04年に(株)あそぶとまなぶに改称)設立。経営コンサルタントを主に講演、執筆などを行う。
<主な著書>
リクルート「創刊男」の大ヒット発想術(日本経済新聞社)
MBAコースでは教えない「創刊男」の仕事術(日本経済新聞社)
第八回-第2部7月24日
テーマ
ホテル資産投資の概要
講師沢柳 知彦ジョーンズラングラサール株式会社 取締役 執行役員
ホテルズ&ホスピタリティ事業部長
第八回目の後半は、沢柳さんによる「ホテル資産投資の概要」。ホテル独特の事業形態である“運営・経営・所有の分離“について詳細な説明のあと、日本のホテルマーケット概要、ビジネスホテルが多く作られる背景などについての解説がありました。また、今後のインバウンド動向、民泊、東京五輪、労働力不足などホテルを取りまく環境変化についての解説と、収益性を向上するために行われている様々な取組みの事例紹介がありました。
【塾生の声】
前半は業界環境や契約形態など体系的に捉えるような講義、後半はホテル業界の中でも新たなビジネスモデルなどを具体的な事例を使ってご説明頂き、どれも大変興味をもって受講することができました。
全体を通じて印象的であったのはホテル業界の "ターゲットの細分化、明確化" です 。「この層を狙うため、使用時間の少ない機能はシェアリング化する」、「この仕様に不満を持つ層についてはターゲットとしない」など、ホテル事業者側もターゲットに合わせて差別化の工夫を迫られている状況が理解できた。
観光客数の変遷も踏まえると、ホテル業界の将来を悲観する状況ではないものの、数年前のように猫も杓子もビジネスホテル事業に参入できる環境からは大きく変化しているということが強く感じられた。(30代・金融業)
海外からの観光客数増加の下、民泊の拡張と法規制による縮小、海外投資家の取得意欲旺盛、開発案件の稼働低迷、等々…
オリンピック開催1年前でも何かと話題の多いアセットタイプで、知っているようで知らないホテルについて講義頂きました。
「ターゲットを絞った商品」が評価されている様は、価値観が多様化する環境で他のビジネスと同様であることを再認識させて頂きました。(30代・不動産)
1987年日本長期信用銀行入行後、海外ホテル投資会社に出向、フォーシーズンズ・バリなどのホテルアセットマネジメントおよび売却業務に従事。2000年6月JLL日本にてホテルズ&ホスピタリティグループを立ち上げ。以後、リッツカールトン東京契約交渉、全日本空輸・IHGのホテル運営会社JV組成、全日本空輸ホテルポートフォリオ売却などを支援。現在、立教大学大学院特任教授、宿泊施設活性化機構理事なども務める。
第八回-第1部7月24日
テーマ
深化するロジスティクス不動産ビジネス
講師辻 俊昭日本ロジスティクスフィールド総合研究所代表取締役
第八回目前半の講義は辻さんによる「深化するロジスティクス不動産ビジネス」。物流に関する用語解説から始まり、物流の仕組みや施設の変遷・変化についての説明がありました。拡大を続ける物流不動産マーケットに関しては、物流施設が大量に供給されているにも関わらず、需要が喚起され続けている背景について解説がありました。また、今後を展望する上で、EC業界の実情や労働者確保の問題、自動化・ロボット化など、物流を取りまく課題や最新の動向について幅広く解説頂きました。
【塾生の声】
普段の業務で物流アセットに携わる機会が多く、感覚的に理解している部分はあったものの、体系的にしっかりと理解する機会はなかった為、非常に興味深く拝聴させていただきました。
ここ数年で不動産マーケットにおける物流アセットの存在感は非常に大きなものとなっており、直近で携わった案件についても、想像を遥かに超える落札金額になった事例があったのですが、その背景をよく理解することができました。(30代・信託銀行)
物流不動産の最新動向が把握できる貴重な講義でした。
2010年代後半は需要に対して大規模な新規供給が続き賃貸マーケットが崩れると思われたが、想像を超える需要の伸びが下支えとなっていることが理解できました。
さて、この好調なマーケットがいつまで続くのか?!
消費者の動向、物流プレーヤーの増加、輸送コストの高騰、労働力確保などいくつものキーワードとなる言葉が印象的でした。(30代・不動産投資業)
京都大学工学部卒。野村総合研究所にて、行政機関、民間企業の物流に関する調査、コンサルティング活動を実施。港湾計画、空港計画、道路整備計画等のハード計画のほか、地域物流マネジメント政策、港湾物流施策、物流セキュリティ等のソフト面でも国や民間企業と共同で実施。その後、(株)日本レップに移り、関連会社であるジェイ・レップ・ロジスティクス総合研究所の代表取締役を務める。ここでは物流不動産に特化したコンサルティング会社として、物流不動産マーケットの分析、各種情報発信等を行う。
現在、2009年に立ち上げた(株)日本ロジスティクスフィールド総合研究所において、物流不動産などに関する調査・コンサルティング活動を実施。
第七回7月10日
テーマ
不動産市場における「これから10年の構造変化」
講師榎本英二野村不動産アーバンネット代表取締役
兼副社長執行役員
第七回目の講義は榎本さんによる「不動産市場における『これから10年の構造変化』」。
次世代に向けて塾生達が活躍するうえで「仮説を持つことを大切にして、ビジネスチャンスを見つけてほしい」というメッセージから始まりました。
変化をいかにビジネスチャンスにするか、これから考えられる「新築からセカンダリー(既存)へ」「運用資産1.6京円へ」「人生100年時代」「不動産テックの時代」といった7つの構造変化について、まずご自身の仮説を述べた上で、塾生全員と意見交換を行いながら講義が進んでいきました。
【塾生の声】
不動産ビジネスでの長いご経験を背景に、「仮説」を持って考えることの大切さを、新築−中古、人生100年時代のニーズ、グローバル都市間競争、AI等の新技術など様々な切り口で考える種を頂きました。少子高齢化、人口減少など、ネガティブに捉えがちな変化の中においても、いかにビジネスの機会を捉えるかというだけに留まらず、日本が将来世代にいかに豊かな暮らしを繋げていけるかということに広がりを持つ講義でした。(30代・公務員)
生まれ来るビジネスチャンスに、いち早く気づくためには、将来に関する「仮説」を持つことが重要。例えば、日本の不動産市場が行き着く先についての仮説(例:日本=米国×0.4)を持っていれば、日々目の前を流れる情報は、仮説の検証材料となる。いち早く検証できれば、市場の行き着く先を見据えた新しいビジネスに、いち早く乗り出せる。
講義を通じて、仮説とは「アイデアの源泉」であり「1を聞いて10を考えるツール」であると捉えることができるようになりました。この新たな視点を、早速自身の仕事に活用したいと思います。(30代・建設業)
1985年慶應義塾大学経済学部卒業。1985年野村不動産入社、経理・総合企画・商品開発・資産運用事業に携わる。2008年執行役員 資産運用カンパニー副カンパニー長兼運用企画部長、2009年野村不動産投資顧問副社長、2013年野村不動産常務執行役員法人営業本部副本部長、2015年野村不動産アーバンネット専務執行役員を経て2017年同代表取締役兼副社長執行役員就任、現在に至る。
1990年大手米国年金基金との米国不動産投資を開始し、1997年からは日本の不動産投資に着手、2001年不動産私募ファンド運用のため、野村不動産インベストメント・マネジメント株式会社設立。2002年には日本の運用会社による初めてのオポチュニティファンドである日本不動産オポチュニティ・ファンド(JOFI)の組成・運用を手がける。2004年以降、同社の安定型不動産私募ファンド(Smileシリーズ)の組成に携わり、2005年野村不動産投資顧問株式会社を設立、不動産証券化商品への投資に着手。2010年私募REIT第一号を運用開始。2013年野村不動産にてCREを中心とした法人営業を担当。2015年野村不動産アーバンネットにて仲介・CRE部門の企画を担当。
宅地建物取引主任者、日本不動産鑑定協会会員、日本証券アナリスト協会検定会員
全体勉強会7月3日
7月3日に一・二・三期のからくさ不動産塾の卒塾生と現四期生を交えた合同勉強会を開催しました。
今年の勉強会は、カーシェア事業等を行っている会社の卒塾生から「未来の不動産とモビリティの関係を考える」について話題提供をして頂きました。
自社のカーシェアの公民連携やカーシェアを活用した附置義務緩和事例のほか、国内外におけるMaaSやライドシェアの動向、国や民間の最新の取組みなどについて紹介頂きました。塾生達にとって「このような動きがこれらかの不動産にどのような影響を与えるか」を考えるいい機会となり、質疑応答・議論が長く続きました。
その後は場所を移した懇親会が行われました。同じ志を持って当塾に参加してきた仲間同士、すぐに打ち解け、大いに盛り上がりました。
現在、卒塾生・現塾生合わせた1~4期の塾生は72名になりますが、今回の勉強会には8割を超える塾生が参加しました。
これからも、期を超えた縦の繋がりも広がるよう、勉強会などのイベントを企画していく予定です。
第六回6月19日
テーマ
これからの都市を考える
講師内田 要不動産協会副理事長専務理事
第六回目は、内田さんによる「これからの都市を考える」。都市を取りまくメガトレンドや国際都市間の比較の中で東京の特徴・課題などの解説がありました。また後段には、今年4月に不動産協会が4月22日に公表した「オフィスの未来に関する調査」の結果概要について、ザイマックス総研の石崎さんの説明がありました。
生産性を上げるには、イノベーションを生み出すために都市がどうあるべきか。年齢や学び方・働き方・住まい方などのライフスタイル、社会参画の様態、国籍・文化・価値観などあらゆる面での多様化が進む社会において「人生100年時代の都市・オフィス・住宅とは」をテーマにチームディスカッションが行われました。各チームの発表後、清水先生、内田さんから講評をいただきました。
【塾生の声】
イノベーションやダイバーシティという観点から今後の都市・建物のあり方を考察する講義でした。将来を見通す各種データは、これまでの成功体験や当たり前としていた前提条件に囚われていては通用しない現実を浮き彫りにしています。
一度出来上がると簡単には変更、造り替えができない特性を持つ都市・建物において、スピードや多様性を求める社会のニーズをどう受け止め実現するか、つくり手の一端を担う者として今後も大きなテーマとして取り組みたいと思います。(30代・建設業)
東京大学法学部卒業。建設省入省、国土交通省総合政策局政策課長、大臣官房審議官(不動産担当)、土地・水資源局長、土地建設産業局長を経て、2012年独立行政法人都市再生機構副理事長、2014年より、内閣官房地域活性化統合事務局長、内閣府地方創生室長として、地方創生、国家戦略特区の事務方とりまとめ。2015年11月より現職。麗澤大学客員教授。
第五回6月5日
テーマ
先を読むための「アナロジー思考」
講師細谷 功ビジネスコンサルタント/著述家
(株)クニエ コンサルティング/フェロー
第五回目の講義は不動産から離れ、思考力を養うスキル講座です。テーマは『地頭力を鍛える』などの著書で知られる細谷さんによる「先を読み、新しいビジネスを発想するためのアナロジー思考」。自分の課題や問題に対して「一見、遠い世界」での抽象化した共通点を見つけ、ひらめきや不連続な仮説を立てていく。多くの事例紹介や演習を通して塾生は「アナロジー思考」を学んでいきました。
【塾生の声】
講義を受けるまでは「アナロジー思考??」という感じでしたが、細谷先生のわかりやすい講義やグループディスカッション等を通じて、こんな発想・思考方法があったのかと、まさに目から鱗でした。
時代の変化で陳腐化しないアナロジー思考等を習得すべく、講義終了後、早速先生の著書「地頭力を鍛える」「アナロジー思考」を購入し拝読しております。
今後も新たな気付きに出会えることを楽しみに1年間頑張りたいと思います。(30代・生命保険)
非連続的に変化する今の世の中においてはこれまで競合とされていなかった企業・業種と争うことになり、その競争の中で生き残るためにはアナロジー思考が大切であることを学んだ。アナロジー思考とは「要するに何なのか」という関係性をできるだけ遠くのものから連想し、そこから齎される人の行動パターンの変化に対する仮説を立てるということである。
感想としては、これまではアナロジー思考と対照的である論理的思考を意識することが多く、アナロジー思考に挑戦するワークは非常に新鮮かつ難しく感じた。今後は日常の場面からアナロジー思考を行う癖をつけたいと思う。(20代・アセットマネジメント)
株式会社東芝を経て、アーンスト&ヤング、キャップジェミニ等の米仏日系コンサルティング会社にて業務請負改革等のコンサルティングに従事。近年は問題解決や思考力に関する講演やセミナーを企業や各種団体、大学等に対して国内外で実施。主な著書に『地頭力を鍛える』『アナロジー思考』(東洋経済新報社)、『メタ思考トレーニング』(PHPビジネス新書)等がある。
第四回-第2部5月22日
テーマ
消費者行動の変化と小売業のあり方
講師藤原 真ザイマックス商業不動産サポート事業部 事業推進部長
講師山田 賢一ザイマックス不動産総合研究所 主任研究員
第四回目の後半は藤原さんと山田さんによる「消費者行動の変化と小売業のあり方」。eコマースの進展、AIの進化、人口減少、都市構造の変化など、様々な要因によって、今後小売業はどのように変化していくのか。事前に配布された資料を元に、「食品スーパー」「ショッピングセンター」「ロードサイド店舗」「百貨店」の「不動産」としての未来(概ね10年~20年後)についてチームに分かれ、ディスカッションが行われました。各チームの発表後には講師による講評と補足解説が行われる中、小売業に関係する塾生達が自分の経験や最近の動向を皆に共有するなど、活発な議論が行われました。
【塾生の声】
商業施設については、eコマースの脅威でネガティブと考えられがちですが、逆にそれを機会と捉えた動きが今後一層進んでいくかと思いました。
百貨店・郊外ショッピングセンター・スーパー等、各アセットクラスによってフェーズが異なるため、それぞれが抱えている課題を見直す良い機会となりました。(30代・ファンドアナリスト)
商業施設の業態は、業務を通して概要は把握していても、現状・環境のデータも踏まえ、近未来を業態毎に議論することはとても貴重な時間となりました。リノベーションの事例や業態毎の最近のトピックス等、「生の情報」を聞くことができました。業務で調査されている講師の方々のお話は一つ一つ説得力があり、これからもしっかり吸収していきたいと思います。(30代・信託銀行)
1998年株式会社パルコ入社。店舗運営、マーケティング、新業態施設プランニング・リーシング等に従事。2006年ザイマックス入社後、大型商業施設開業・リニューアル等を牽引、現在は小売企業を対象としたCRE・不動産サポート事業を行う。京都大学文学部卒業。
1991年大手流通企業に入社。10年以上にわたり、新規出店・改装のプランニング業務に携わる。2007年にザイマックスグループ入社。主に商業施設の運営管理業務を行う。2014年よりザイマックス総研にて商業施設・小売業界の調査研究を担当。上智大学文学部卒業。
第四回-第1部5月22日
テーマ
グローバルな視点からみた日本の働き方とオフィス戦略
講師石崎真弓ザイマックス不動産総合研究所 主任研究員
第四回目の前半は石崎さんによる「グローバルな視点からみた日本の働き方とオフィスの未来」。企業の働き方改革に取組む実態や課題、このような企業の動きがオフィス市場にどのように影響を与えるかについて、様々なデータ等を用いた解説がありました。今後、企業が働き方改革を進める上でワークプレイスのあり方は重要な経営課題として認識され、スペースの効率化やABWの導入、フレキシブルに利用できるオフィスの選択といった流れが進む。そのような中で、不動産事業者は複雑化する企業のニーズに対するサービスの提供が求められるとの解説がありました。
【塾生の声】
今世間から一番注目を浴びているホットワードである「働き方改革」。実態を伺うと、企業側の意識が高い反面コストがかかる・実働を把握しにくいなど、決して容易に克服できないハードルが存在している。「改革」と言うと、一般的に形・制度面に目を向けることが多いが、働く場所としての「オフィス」そのものの定義が変わる時代になってきていますし、不動産を心理学・空間学的なパースペクティブから分析する流れも、いずれ当然のようになると思われます。シェアオフィスは海外にもまだ成功例が数少なく、少子高齢化と人手不足が深刻に進んでいる日本は、検証にとってむしろ最適な環境かもしれない。(30代・不動産総合サービス)
働き方改革において、多様なワークスタイルへの受容性を高める必要性を再認識するとともに、多様性というのは自由ではなく、信頼と自律の相互関係により初めて成立するものであることを本講義を通じて学びました。働き方関連法案が成立し、脚光を集めている現状ではありますが、これはあくまでもきっかけであり、未来においては、オフィス・住宅・商業等の既存の用途概念を超えて、ディベロッパーとしては、人のアクティビティを軸にしたシームレスなハード・ソフトの両面での広義の不動産を提案し続けていく必要性を感じました。(30代・不動産業)
リクルート入社、リクルートビルマネジメント(RBM)出向。
オフィスビルの運営管理や海外投資家物件の PM などに従事したのち、マーケティング部にて数多くの投資家向けのマーケットレポートやデューデリジェンスなどを担当。
その後も、ザイマックス不動産マーケティング研究所(ザイマックス総研の前身)及び現ザイマックス総研で一貫して不動産マーケットの調査分析、研究に従事。さらに最近では、「働き方とオフィス」をテーマにした研究調査をしている。
第三回5月8日
テーマ
ストック型社会における建物を考える
講師吉田 淳ザイマックス不動産総合研究所 取締役・主幹研究員
第三回目の講義は、「ストック型社会」がテーマ。「建物とは何か?」から始まり、建築ストックの現状や保有・運用にかかわるリスク、建物寿命に関する考察、今後求められてくる建物などの講義があり、その後、不動産を取り巻く社会環境の変化として「人口減少および高齢化の進展」「働き方改革の進展」などについてグループディスカッションと発表が行われました。四期生にとっての初めてのグループディスカッションでしたが、その後の懇親会では「様々な業種の方たちと意見交換ができるのはとても刺激的だった」といった声がでていました。
【塾生の声】
私が普段接している法律実務では、あるべき方向性を見定めて摺り合わせていく議論が多いです。他方で、今回の「ストック化社会」といった社会の動向ないし変化に着目し、その観点から建物の意味や将来を考え直すという検討は、「あるべき方向性」が容易には見定まりません。ディスカッションでは、多様でありながらも、それぞれ説得的で興味深い意見や予想が交わされ、とても新鮮で刺激的に感じました。
今回は3回目の講義であり、まだまだ序の口ですので、幸運にもご一緒させていただくこととなった他の塾生の皆さんとともに、今後とも目一杯勉強させていただきたいと思います。(30代・法律事務所)
普段取引したり検討したりしているオフィスビルを考えても、やはりバブル時期に建てられたものが非常に多く、グラフで改めて見るといびつさに驚きました。
また、日本では様々な要因で不動産(建物)の寿命が短命ということも少し実感があって、少し前まではすぐに解体新築という流れだったと思います。しかし、建築費の高騰などもあり、よりメンテナンスやコンバージョンの重要性は高まってきているのだと思います。
グループワークではいろんな意見が活発に出ており答えはまとまりませんでしたが、Iot・AI技術革新や働き方改革・人口減少など様々な要因により、これまで以上の速度で建物に求められる仕様も変化していくとすると、少し先を見据えて対応していくことが、良質な建物ストックの形成に寄与するのではないかと感じました。(30代・不動産総合サービス業)
日本リクルートセンター(現・リクルート)入社。ビル事業部西日本部長などを経て、リクルートビルマネジメント(現・ザイマックス)取締役。2001年ザイマックスビルディングサイエンス(現・ザイマックス総研)を設立し、現職。建物管理、修繕、環境不動産分野の研究を主幹している。CASBEE不動産評価検討小委員会委員、スマートウエルネスオフィス研究委員会・評価ツール開発WG委員、不動産証券化協会・資格教育小委員会分科会委員などを務める。
第二回4月24日
テーマ
不動産市場の未来
講師清水 千弘日本大学スポーツ科学部、東京大学、MIT不動産研究センター
第二回目は、当塾のアドバイザーでもある清水先生による「不動産市場の未来」と題した講義でした。ビッグデータから予見できる日本の未来。人口減少、高齢化、そしてそれに伴う土地価格の下落といった課題に対し、どのようにして立ち向かうのか。また、AIの活用事例を取り上げ、我々の業務はどう変革していくのだろうか、といった不動産業界を牽引するリーダーを志す塾生に向けた未来を展望する内容でした。
【塾生の声】
本講義冒頭の「予測は当たらない」「Unknown unknownsの時代」「ビッグデータは(正解を導くものではない)リスクの範囲は限定できる」などの話によってビッグデータが何たるかが朧気ながら見えてきた。不動産市場の将来の考察は悲観することではなく、事実は事実として認識し、我々は「“幸せ”“豊かさ”の絶対的な価値を不動産市場の中でどう作り上げていくか」を考えることだと感じた。(30代・小売業)
ビッグデータから、過去を振り返り、今後の都市の在り方を考えたときに「アメニティ」という言葉が一つのキーワードになっていることが、まず目から鱗であった。是非、今後の仕事に活かそうに思う。さらに私の中で大きな衝撃だったのは、AIが担える不動産業務の実例についてである。よりクリエイティブな仕事が、今後どんどん産まれるまさに節目の時代に生きているのだと実感した。また、最後に「これらがどう人の幸せに貢献できるのか」という本質に立ち返った議論もあり、今もずっと考えさせられている。(20代・不動産業)
日本大学スポーツ科学部教授。東京大学空間情報科学研究センター特任教授、ブリティッシュコロンビア大学客員教授、マサチューセッツ工科大学不動産研究センター研究員等を兼務する。東京大学博士(環境学)。シンガポール国立大学不動産研究センター、麗澤大学経済学部元・教授。専門は、指数理論・ビッグデータ解析・不動産経済学。主な著者に、『市場分析のための統計学入門』朝倉書店(2016)、『不動産市場の計量経済分析』朝倉書店(唐渡広志との共著(2007))、『不動産市場分析』住宅新報社(2014)など多数。Fellow of RICS、Member of CRE。
第一回4月10日
テーマ
開講式・不動産を見る目、価値の考え方
講師中山 善夫ザイマックス不動産総合研究所 代表取締役社長
からくさ不動産塾、第四期が開講しました。今期も様々な業種から19名の塾生を迎えてのスタートです。講義に先立ち、中山塾頭、アドバイザーの清水先生より開講の挨拶がありました。また、第16回目の講師である吉崎さんが来られ、ご自身がからくさ不動産塾1期生だった事を踏まえたエールが4期生に送られました。
講義はプログラムの導入ということで、不動産についての基本的概念の確認のほか、【不動産のこれからを考える上でのトピック】について各グループに分かれてディスカッションを行いました。
【塾生の声】
不動産の本質を考える。
業界の本質を考え抜くとは言うは易し、無知が力となって発揮されていた駆け出しの感性はいつしか擦り減り、何れの立場であっても、所属する組織や環境によって概ね事象の捉え方の視座は固定化されていくと思います。
第1回目の講義ではその凝り固まった塾生の視座をほぐすべく、塾頭より「不動産を見る目、考え方」として“知ってはいても日常で捉えていなかった視点”を再認識すべく教示頂き、テーブルディスカッションでも同年代の様々な事象の捉え方を共有し互いに良い刺激になりました。
新元号を迎える年に開催される現代版「松下村塾」、人生の大きな糧になる1年間の入り口に立ち、身が引き締まると共に大きな刺激を予兆するキックオフでした。(30代・不動産)
特に最近は閉じられた世界で過ごしているなと感じていた中、様々なバックグラウンドを持った塾生の皆さんとの出会いに、遠いと言われている不動産業界でもダイバーシティを少し感じ、この一年間皆さんと机を並べ、意見を交わし、時には盃を交わすことに、とてもワクワクしている自身に気がつきました。
ミレニアル世代による影響力が社会や政治経済に浸透してきていると言われている中で、それに近い世代の同業界でもバックグラウンドの異なる皆さんが集まり、お互いを尊重しながらも気づきを与えられる関係を築き、その関係性の中で生まれたアイデア等で社会に良い影響を与えられるまでに至ればこの上ないと思います。
冒頭中山塾頭のお話にも有りましたように、「不動産業界を担う次世代の人材を育てる」という塾の目的を意識し、普段より視座を一段高くして励もうと、そんなことを思った塾生1日目でした。(30代・商社)
株式会社ザイマックス不動産総合研究所代表取締役社長。ニューヨーク大学大学院不動産修士課程修了。一般財団法人日本不動産研究所で数多くの不動産鑑定・コンサルティングに従事。その後、ドイツ証券にてドイツ銀行グループの日本における不動産審査の責任者を務める。2012年よりザイマックスグループの役員に就任、現在、ザイマックス不動産総合研究所にて不動産全般に係る調査研究を担当。不動産鑑定士、MAI、CCIM、Fellow of RICS、Member of CRE。ARESマスター「不動産投資分析」科目責任者、不動産証券化協会教育・資格制度委員会委員。