活動報告(第五期)

REPORT

※過去の活動報告はこちらからご覧いただけます。

  • 第一回9月2日 
  • 第二回9月16日 
  • 第三回9月30日 
  • 第四回10月14日 
  • 第五回10月28日 
  • 第六回11月11日 
  • 第七回11月25日 
  • 第八回12月9日 
  • 第九回第1部12月23日 
  • 第九回第2部12月23日 
  • 第十回1月13日 
  • 第十一回1月20日 
  • 第十二回第1部2月3日 
  • 第十二回第2部2月3日 
  • 第十三回2月17日 
  • 第十四回3月3日 
  • 第十五回第1部3月17日 
  • 第十五回第2部3月17日 
  • 第十六回4月7日 
  • 第十七回第1部4月21日 
  • 第十七回第2部4月21日 
  • 第十八回5月12日 
  • 第十九回5月26日 
  • 第二十回第1部6月9日 
  • 第二十回第2部6月9日 
  • ゼミナール卒塾式 (6月23日、7月7日21日)  

ゼミナール(6月23日、7月7日、21日)・卒塾式

全講義を終えた塾生達によるゼミナールが行われました。

2月に5つのチーム分けが発表され、その後、各チームが「不動産における将来の課題を取り上げ、それに対する解決策を提案する」というテーマに対して、中山塾頭やアドバイザーの清水先生に相談などしながらテーマを決めていきました。

6月23日は全チームがそれぞれ25分のプレゼンを行いました。各チームのテーマは下記の通り多岐にわたり、他社ヒアリングを行ったチームや仕事前の早朝にミーティングを行ったチームなど、オンラインという制約がありながらも各チームが工夫しながら議論して取り纏めた成果の発表が行われました。

  • カーボンニュートラル達成に向けた住まいのあり方の考察

  • RaaS(Real estate as a Service):アセットのオペレーショナル化およびダイバーシティ化による脱「単一用途依存」の都市開発運用のあり方

  • 幸福から考える不動産の関わり方

  • 新型シニアビジネスの考案シニア特化型施設「Shibuya Matual」の開発計画 ~マチュアが日本を救う~

  • 令和農地改革ー農地投資のフィージビリティスタディー

プレゼン後に他チームの発表内容に対しての意見やコメントを提出し、それを踏まえて、7月7日、21日に各チームのテーマについて改めて全員で討議を行いました。

また、最終チームのプレゼンと討議が終わった後、修了式が行われ、中山塾頭、清水先生から挨拶と塾生へのメッセージが贈られ、修了証の授与と記念品の贈呈が行われました。最後に塾生による一本締めで、「第5期 からくさ不動産塾」の1年を通したプログラムは終了しました。

  • ゼミナール
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第二十回-第2部6月9日

テーマ

スポーツ×不動産

講師太田 和彦デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社
スポーツビジネスグループ シニアアナリスト

第20回後半は太田さんによる「スポーツ×不動産」。スポーツをビジネスとして見たときには広範なターゲット設定が可能であり、プロスポーツはコロナで落ち込むまでは年々、入場者をふやしてきた。それに伴いスタジアム・アリーナの不動産としての価値が高まり、中心市街地への設置の動きが加速している。収益性を高めるために稼働を高めることが課題であったが、最近ではスタジアム・アリーナを複合施設化して、試合日以外にも楽しめる仕組みの導入により稼働を高める工夫が行われているとの解説があり、国内外の事例紹介も行われました。コロナによって人が集まる興行ビジネスは大きなダメージを受け、今後についても集客に対する不安などから先行きを懸念する声がある。しかし、過去のパンデミックを振り返ると、マクロトレンドは変わらず、加速した事があったと分かる。今回も同様ではないかと、様々な資料・データを用いた説明がありました。からくさ不動産塾の2期生でもあった太田さんの本講義をもって、今期の講義は終了し、塾生はゼミ発表・討議を残すのみとなりました。

【塾生の声】

以前よりスポーツを通じたコミュニティ作りに興味があり、入塾当初より楽しみにしていたテーマでした。画一的であったスタジアムの在り方が少しづつ変わっていること、海外だけでなく国内でも既に複合的な要素を取り入れ、地域のコミュニティ形成の役割を担っている事例があるのは大きな発見でした。大型の施設は時代と共に役割が変わり、今後は単一用途ではなく複合用途(単に異なる用途をまとめた施設ではなく、それぞれの用途に親和性を作り出し施設全体の付加価値を上げる)にシフトする、というのはこれまでの講義やディスカッションでも多く取り上げられたテーマでしたが、スポーツ業界で先行して実践している事は驚きでした。東京オリンピックの開催可否が問われている今、スポーツが人に何をもたらす事ができるのかを改めて考える大変有意義な時間を頂きました。今回が最後の講義となりますが、講師の太田先生は3年前の塾生と伺い、私も当塾の卒業生として、不動産を通じて社会貢献できる人材になりたいと改めて思いました。(30代・不動産業)

からくさ不動産塾へ応募の際から、ぜひ聞きたいと思っていた講義の1つであり、とても楽しみにしておりました。言語の壁を越えて楽しむことができるスポーツですが、近年様々な種目・競技がプロスポーツ化し、ビジネスとしての側面が強くなってきており、特に興行面を考えた場合、デベロッパーは新たな価値を創出していく重要な役割を担っていると感じております。特に昨年の三井不動産による東京ドームのTOBもあった中で、今回講義を通じて、改めてスポーツ市場と不動産の親和性を強く感じるとともに、単なるスタジアムという点の話だけではなく、まちづくりとしてのとらえ方また国内外における事例を知ることができたことは、大変勉強になりました。日本においては、高齢化・人口縮小の流れは加速してまいりますが、今後、都市部また地方において、スポーツを起点としたまちづくりによる活性化を考えてまいりたいと思います。(30代・不動産業)

太田 和彦

新卒で住友不動産に入社。人事(新卒採用担当)・住宅営業・台北事務所副所長・上海事務所所長等を経験。その後、英・L.E.K.コンサルティングを経て、現在デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー勤務。同社スポーツビジネスグループにて、サッカーJリーグ,ラグビートップリーグ,東京オリンピック・パラリンピック等スポーツビジネスを中心とした戦略策定・実行支援プロジェクトに従事。からくさ不動産塾2期生。コーネル大学経営大学院卒

第二十回-第1部6月9日

テーマ

技術・社会の未来予測と不動産産業へのインパクト

講師河瀬 誠立命館大学(MBA)客員教授 / MK&Associates 代表

第20回目の前半は河瀬さんによる「技術・社会の未来予測と不動産産業へのインパクト」。「デジタル」は指数関数で進化しており、AIやIoTといったテクノロジーの進化は目覚しく、パターン的な業務は消滅していくことになろう。しかし、複雑な手作業や創造的な業務は機械化が困難で、むしろそのような業務が高い価値を持つ時代になる。デジタル化の進展によってあらゆる産業が大きく変化していく中、不動産業や建設業においては都市構造や社会の価値観の変化も加わり、提供サービスの変化が求められる。ポストコロナの世界は今まで以上に、人はデジタルの指示に従い、デジタルもより人の行動を最適化しようとするが、イノベーション(アイデア創発)は多様な背景を持つ人が対面で会ってこそ生まれる。オフィスの役割は変わり、新たな文化を創造する都市が価値を持つようになるという解説がありました。

【塾生の声】

今や聞かない日はない「DX」について、体系的に学ぶことができました。私も「変わるもの」と「変わらないもの」があると考えており、基本的にはAIやRPAにより人が担ってきた作業を解放し、人にしかできない知の探究に時間を使っていくことになるだろうと考えています。今後の社会は、業界や企業の枠を超えて様々な情報や技術が循環し構築されていくのであろうと思いますが、自らの業務においても俯瞰する視点で取り組んでいきたいと改めて実感致しました。講義ありがとうございました。(30代・金融業)

今回は、デジタルで変わる働き方、産業、生活への影響を今後の予測も含め学びました。特に印象に残っているのは、「今後は、人と直接会うことが貴重な機会となりその価値が増す」という点です。これまであまり意識していませんでしたが、デジタル化は便利さをもたらす一方で、人と接する機会の喪失(選別)を大幅に加速させる側面もあるように感じました。今後のグループ発表だけでなく、仕事でも役立つ、大変貴重なお話を伺うことができました。(30代・地方公務)

河瀬 誠

東京大学工学部計数工学科卒業。ボストン大学経営大学院理学修士および経営学修士(MBA)修了。A.T.カーニーにて金融・通信業界のコンサルティングを担当後、ソフトバンク・グループにて新規事業開発を担当。コンサルティング会社ICMGを経て、現職。著書に『経営戦略ワークブック』『戦略思考コンプリートブック』『新事業開発スタートブック』『海外戦略ワークブック』(以上、日本実業出版社)『戦略思考のすすめ』(講談社現代新書)『マンガでやさしくわかる問題解決』『課題解決のレシピ』(日本能率協会)などがある。

第十九回5月26日

テーマ

不動産ファイナンスとPRE・PPP/PFI

講師内藤 伸浩不動産証券化協会 専務理事

第十九回目の講義は、内藤さんによる「不動産ファイナンスとPRE・PPP/PFI」。前半はJ-REITや証券化スキームなど、不動産証券化の基礎的な事項だけでなく、J-REIT市場の創設に関わってこられた内藤さんのご経験談も交えながら解説頂き、不動産証券化はリスクマネーを循環させながら不動産開発をすることで社会資本の整備に貢献している、との話がありました。後半では公共不動産(PRE)を取り上げ、インフラだけでなく施設の老朽化が進み全部更新ができない現状の中でどうマネジメントをしていくかが求められており、地方公共団体による公共不動産戦略についてはこれまでの単なる「活用」から「資産性に見合った活用」という視点が大切である。また、PPP/PFIの核心は民間の本気を引き出す事で、そのために民間資金(市場規律)に基づく施設経営が望まれるが、日本ではまだ軽視されているとの事で、国内外の取り組み事例の紹介も行われました。

【塾生の声】

不動産ファイナンスとPRE・PPP/PFIについてご講義いただきました。前半については、業界的に馴染みがあったため、改めてファイナンス周りの基礎を整理することができました。また、コロナによりJ-REIT市場の様相が少し変わってきているので、今後のNAV評価などがアセット別・投資法人別にどのように推移するか注目したいです。後半はPRE戦略・PPP/PFIの核心ということで、日本の不動産資産価値の1/3を占める公的不動産について、「Gap funding」という考え方のもと官民連携しハードな予算制約に転換する方法をはじめ、低採算PJやPPP/PFIについて、実例を交えご説明いただきました。この辺りは実務であまり携わったことがなく、興味深く勉強させていただきましたが、最後に参考としてお話のあった「官民の資金コストはマクロ的に見たら同じ」ということが特に面白く感じました。自身でもう少し深堀りし、勉強していきたいと思います。(不動産金融業・30代)

今回の受講により、改めてJ-REITの仕組みはディベロッパーによる開発サイドの出口としての機能と直接投資以外の証券市場での取引機会を投資家に与える仕組みであり、健全な投資対象が手厚く維持管理されていることが理解できた。一方、日本の不動産価値の三分の一の割合である公的不動産の活用は途上であり、少子高齢化による税収減少を契機に、新たな運営管理の手法を見出すことが課題である。企業不動産のように収益性というKPIを公的不動産も何らかの形で掲げ、適時モニタリングが必要であるように感じた。また、コロナを経て改めて公園の利活用、道路や歩道空間の有用性は多くの人が認識したので、今後それらを利活用・収益を上げる仕組みを模索することが求められていることを実感した。(40代・不動産業)

内藤 伸浩

1981年東京大学法学部卒業後、三井不動産(株)入社。1991年慶応義塾大学大学院経営管理研究科修士課程修了。2009年より東京大学公共政策大学院特任教授(2014年3月退任)、2014年10月より東京大学公共政策大学院客員教授(2017年3月退任)。2015年5月より一般社団法人 不動産証券化協会 専務理事、現在に至る。
<著書>
『人口減少時代の公共施設改革~まちづくりがキーワード』(時事通信社、2015年)
『アセット・ファイナンス~資産金融の理論と実際』(ダイヤモンド社、2003年、不動産協会優秀 著作奨励賞受賞)
『日本企業の戦略管理システム』(白桃書房、1997年、共著)

第十八回5月12日

テーマ

「デザイン」と不動産

講師林 厚見株式会社スピーク 共同代表/「東京R不動産」ディレクター

第十八回目の講義は林さんによる「デザインと不動産」。「東京R不動産」を中心とした各種ビジネスで顧客の感性に響くサービスを創出している林さんご自身の経験をご紹介頂きながら、デザインは不動産の価値を本当に上げるのだろうか、という投げかけから始まりました。デザインとは目的、機能、美しさ、素材、コスト、エコロジーなどが一貫性をもってまとめ上げられた上で、適正なプライシングでマーケットに受け入れられる事が必要である。また、不動産の価値は、ロケーション、スペック、アメニティ、オペレーション、デザインなどがトータルに相まってブランド価値を生み出し、今後は定量化できない感性や右脳で価値をつくる非論理の部分がますます重要になってくるだろう、とのお話しがありました。

【塾生の声】

不動産投資開発企業の一員として、不動産投資家およびデベロッパーが抱える社会的ミッションへの提言をいただいたようで、半分はワクワクしながら、もう半分は耳の痛い思いで聴講しておりました。個別の不動産の枠を超え、全体最適を考えながらデザインすることで社会課題を解決していくという「Social Developer」の考え方をベースに、ハードとソフトの組み合わせで不動産を街というスケール感でもっと手触り感のある「場」として再編集するという考えに共感しました。不動産はハードの時代からソフトの時代と呼ばれて久しいですが、そこにストーリー性を持たせることで共感する人々が集まり、自然発生的にコミュニティを形成していく。これは昨今のミレニアルやGen Zにも共通する価値観であり、デジタルネイティブが社会の中枢を担う未来においては、デジタルでは得られないリアルの価値としての不動産が、産業としてさらに隆盛するための核になる考え方になるのではないかと思いました。(30代・小売業)

現在の社会問題を考えると、資本経済の成長を優先してきた結果、気候変動問題をはじめ長年犠牲にされてきたものがよりはっきりと社会課題として認識されるようになってきたことを感じます。講義のなかで価値観の変化の話しがありましたが、これからの社会は自然に寄り添いながら、本来ヒトが本能的に快適だと思える社会をデザインしていく方向へシフトしていく必要があると思います。ゼミでも物質的には満たされた社会において、どうすれば社会とのつながりを持って人々の幸福度を高められるかといった議論をしていますが、そのうえでコミュニティの重要性を強く感じています。少子高齢化が進む社会にあって、互いに共感しながら助け合って暮らしていける社会的な価値観や仕組みが広がっていけばと思います。(30代・投資顧問)

林 厚見

1971年東京生まれ。東京大学工学部建築学科(建築意匠専攻)、コロンビア大学建築大学院不動産開発科修了。経営戦略コンサルティング会社マッキンゼー&カンパニー、国内の不動産ディベロッパーを経て現職。不動産のセレクトサイト「東京R不動産」、空間づくりのウェブショップ「toolbox」のマネジメントのほか、建築・不動産の再生に関わる事業企画・設計デザイン、地域再生支援、宿泊施設・飲食店舗・広場などの運営を行う。東京大学工学部、早稲田大学創造理工学科等の非常勤講師、東京都築地再開発専門委員、グッドデザイン賞審査委員などを歴任。共編著書に『東京R不動産2』『だから、僕らはこの働き方を選んだ』『toolbox 家を編集するために』『2025年の建築 新しいシゴト』等。

第十七回-第2部4月21日

テーマ

企業における不動産戦略と不動産テックの動向

講師板谷 敏正株式会社プロパティデータバンク 代表取締役社長

第十七回目の後半は板谷さんによる「企業における不動産戦略と不動産テックの動向」。 公共と民間が所有する不動産ストックの状況について説明があり、不動産の長寿命化やストック活用は日本の不動産全体の課題であり特色といえるとの解説がありました。また、企業においては多様な不動産戦略が経営を支えており、企業が本社を所有するか賃借するかの判断は、企業がそれぞれ経営戦略の中で決める事である。外資・日系の違いやIT・製造業など業種に左右される事ではないとの説明がありました。不動産テックの潮流についても、業界全体でのデータの活用や公開が進展して情報の非対称性が軽減する事で、新たなビジネスモデルや産業を創生する可能性があるといった事を最新事例を交えながら解説頂きました。

【塾生の声】

CRE(企業不動産)戦略という言葉は、私の新卒入社当時(15年以上前)からあったように思うが、主に低稼働不動産のオフバランス化≒売却によりキャッシュ化し、コア事業に再投資するという文脈で語られ、とにかく売却ありきというイメージがあった。今回の板谷先生のお話では、適正なファシリティマネジメントにより、主にハード面から資産効率(ROA)向上を行い、またソフト面では生産性向上を行うことを志向されており、上手い不動産管理により企業力向上をお手伝いするという視点は新しいと感じた。日本企業の労働生産性は先進国の中でも低いと言われているが、コロナ下により各企業はオフィスの所有/賃借の在りかた、在宅等を組み合わせた働き方について再考を求められており、CRE戦略により稼ぐ力、生産性向上を推し進めるチャンスだと感じた。(30代・不動産業)

普段は住宅不動産が担当分野のため企業による不動産管理(ファシリティマネジメント)の視点で考えてみることはなかったが、個人も企業と同じくらい自分が保有する資産を合理的に考えられるようになれば、不動産資産の陳腐化としての空き家問題の抑制の糸口が見つかるように感じられた。一方で、個人が企業ほどの合理的経済人としての行動をとることができない阻害要因があるのであれば、私権の抑制に繋がらない範囲で、それをサービスや公が支援することができれば、そして、そこにテクノロジーが介在できれば、大きな社会善となるのではないか。そのような、私人と法人の違いと技術的思想を考える良い機会をご提供頂けた。(30代・不動産業)

板谷 敏正

早稲田大学大学院理工学研究科修了、清水建設株式会社入社。
2000年、社内ベンチャー制度を活用し、不動産管理向けクラウドサービスを展開するプロパティデータバンク株式会社設立、代表取締役就任。09年には最も優れた経営戦略を実践する企業として“ポーター賞”を受賞。18年には東京証券取引上マザーズ市場に上場。その他国交省「企業不動産の合理的な所有・利用に関する研究会」委員、「不動産ID・EDI研究会(2007)」委員、日本ファシリティマネジメント協会理事などを務める。芝浦工業大学客員教授、早稲田大学理工学研究所招聘研究員を兼任。博士(工学)
<主な著書>
CRE戦略と企業経営(東洋経済新報社)、次世代建設産業戦略2015(日刊建設通信)

第十七回-第1部4月21日

テーマ

変化するファシリティマネジメント

講師似内 志朗ファシリティデザインラボ(FDL) 代表

第十七回目の前半は似内さんによる「変化するファシリティマネジメント~都市・建築・ワークプレイス・FM~」。コロナ禍でワークスタイルが変わり、今ほど企業の関心がFMとワークプレイスに向いた時代はないだろう。人件費は賃料の約10倍で、スペースのコストダウンに走るより、人が生み出す価値が再認識され、経営と働き手がともに満足し成長できる関係が重要になってくる。そして今後のファシリティは「ミニマムな環境負荷で、人々のQOL(quality of life)最大化」が求められる。さらに環境や社会が崩れれば、長期的・持続的経済は成立しないというコンセンサスが世界的に浸透し、ESG/SDGsの概念・理念に基づいた投資行動や都市・建物が求められているとの解説がありました。また、環境性能や働き方を変えるビルとして世界で最も注目されている建物の一つと言われるオランダの「The EDGE」を視察した際の内容の紹介がありました。

【塾生の声】

コロナ禍をきっかけとして、企業の働き方が本格的に大きく変化し、オフィスへの関心が高まっています。現時点においても明確な方向性が定まらない中ですが、今回の講義において、これまでは一人当たり面積を極力効率化したオフィスの使い方だったのが、企業が優秀人材を獲得するための手段として、働く人の快適性を追求したオフィスとすることで従業員の採用数の増加・定着率向上に繋げるといった「投資」という部分が全く新たな気づきでした。また、環境面にも配慮した再開発・素材を用いた開発等も本格的に進んでいることなど幅広く学ぶことが多い講義でした。(30代・不動産部)

コロナ禍により、オフィス・働き方を巡る環境が大きく変化していますが、今後、人材確保が企業経営にとって極めて重要となる中、「リアルとリモートのベストミックス」により個人の自由・快適と企業の価値創出を両立し、「人」の生み出す価値を最大限に引き出す「場」を提供する不動産の価値、可能性は、今後ますます高まると感じました。(30代・公務員)

似内 志朗

北海道生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業、ロンドン大学(UCL)バートレット建築校修了。郵政省・日本郵政グループで建築設計・ファシリティマネジメント・事業開発・不動産開発企画と担当。日本郵政(株)事業開発部長、不動産企画部長等を歴任。2019日本郵政退職後、ファシリティデザインラボ代表、(株)ヴォンエルフ シニアアドバイザー、JFMA理事・調査研究委員会委員長、筑波大学客員教授、東洋大学・芝浦工業大学非常勤講師等。

第十六回4月7日

テーマ

不動産市場における10年の構造変化

講師榎本 英二野村不動産ソリューションズ 代表取締役兼副社長執行役員

第十六回目の講義は榎本さんによる「不動産市場における10年の構造変化」。これからの変化をいかに次のビジネスチャンスに活かすかがテーマ。今年は特に「コロナの影響、本質を見抜こう」という視点を加え、「人生100年時代」「余る時代へ」「グローバル都市間競争×地政学リスク」「新立地論」など7つの構造変化について解説を行った後、ご自身の考えを述べた上で塾生全員と意見交換をしながら講義が進みました。仮説を持つ事は、それが当たる・当たらないといった事ではなく、自分の考えの軸を持つ事に繋がるので大切にしてほしいと塾生にメッセージが送られました。

【塾生の声】

コロナ禍に限らずPEST(Politics、Economy、Society、Technology)に関わるさまざまな外部環境変化が10年後の不動産業界に及ぼす影響について、榎本さまと塾生の皆さまが意見交換をしながらディスカッションを行いました。社会が複雑化する中において、さまざまな分野の情報にアンテナを張ることの大切さ、また、情報をインプットするだけでなく、外部環境の変化が中長期的に自分自身(業界、会社、生活等)にどのように影響するのか想像する(アウトプットする)ことの大切さを学ぶことができました。(30代・小売業)

「コロナの影響、本質を見抜こう」ということで、不動産市場を多角的に見て、問題提起をしていただいたと感じています。普段の業務や生活の中では不動産の一側面しか見ておらず、閉鎖的な考え方に固執しがちですが、今回のような「コロナの影響」という切り口で多角的な視野でみると、考えることも多く、とても貴重な時間となりました。また、インタラクティブな対話形式での議論もあり、榎本様のご意見だけでなく、受講生の考えも聞くことができ、より多様な考えを知るきっかけとなりました。(30代・不動産開発)

榎本 英二

1985年慶應義塾大学経済学部卒業。1985年野村不動産入社、経理・総合企画・商品開発・資産運用事業に携わる。2008年執行役員 資産運用カンパニー副カンパニー長兼運用企画部長、2009年野村不動産投資顧問副社長、2013年野村不動産常務執行役員法人営業本部副本部長、2015年野村不動産アーバンネット専務執行役員を経て2017年同代表取締役兼副社長執行役員就任、現在に至る。
1990年大手米国年金基金との米国不動産投資を開始し、1997年からは日本の不動産投資に着手、2001年不動産私募ファンド運用のため、野村不動産インベストメント・マネジメント株式会社設立。2002年には日本の運用会社による初めてのオポチュニティファンドである日本不動産オポチュニティ・ファンド(JOFI)の組成・運用を手がける。2004年以降、同社の安定型不動産私募ファンド(Smileシリーズ)の組成に携わり、2005年野村不動産投資顧問株式会社を設立、不動産証券化商品への投資に着手。2010年私募REIT第一号を運用開始。2013年野村不動産にてCREを中心とした法人営業を担当。2015年野村不動産アーバンネットにて仲介・CRE部門の企画を担当。(2021年4月1日より「野村不動産ソリューションズ」に社名変更)
宅地建物取引主任者、日本不動産鑑定協会会員、日本証券アナリスト協会検定会員

第十五回-第2部3月17日

テーマ

グローバルな視点:米国の不動産事情

講師山本みゆきサンポップインターナショナルマネージング・ディレクター

第15回目の後半は、山本みゆきさんによる「米国の不動産事情」。ニューヨークの朝からのオンライン講義となりました。コロナ禍で今まさにニューヨークで起きていること。商業店舗の現状から、ニューヨーカーの住宅実態や生活様式の変化、ワクチン接種の状況まで、日本のニュースだけでは知りえない様々な「生」の情報を伝えて頂きました。また、ご主人の山本正俊さん(サンポップインターナショナル代表)にもご参加いただき、今後の大型物件の計画や、オフィスマーケットにおけるビルオーナーとテナントとの交渉実態など最新トレンドの話があり、日本と全く同じではないものの参考なる事が多く、塾生からの質問が続きました。

【塾生の声】

新型コロナにより、身近でない場所となってしまった米国、ニューヨークの現在の状況を、事細やかにご説明いただき、大変勉強になりました。アメリカ経済は振れ幅が大きい分、新陳代謝が活発で回復も早い印象を受けました。またマンハッタンから既に多くの居住者が働き方の変化により去っていることに驚きました。全く同じ軌跡を辿るとまではいかないものの、東京の数か月後~半年後の状況を想像する上では先行するニューヨークを研究することが最も近道であると感じました。(30代・不動産業)

日本にいるとニュースだけでは伝わってこない、コロナを踏まえたリアルなアメリカの現状、およびアメリカ不動産動向を聞くことができました。講義の中で、「今後は働く人のリモート力が問われる」との話がありましたが、このことは日本で働いていても感じることであり、アメリカにおいても共通の認識であることを再確認できました。(30代・不動産金融業)

山本みゆき

不動産コンサルタント。ニューヨーク大学大学院不動産修士課程修了。CCIM(米国不動産投資アドバイザー)、NY州公認ブローカー。NHK海外取材の翻訳にも携わる。
<主な著書>
米国の不動産知識 A to Z(住宅新報社)、各種不動産業界誌に米国不動産事情連載

第十五回-第1部3月17日

テーマ

消費者行動の変化と小売業のありかた

講師藤原 真ザイマックス商業不動産サポート事業部 事業推進部長

講師山田 賢一ザイマックス不動産総合研究所 主任研究員

第十五回目の前半はザイマックスの藤原とザイマックス総研の山田による「消費者行動の変化と小売業のありかた」。グループ討議を中心とした講義のため、塾生は事前に配布された資料をあらかじめ熟読してから臨みました。資料の補足説明後、新型コロナウイルスの影響による社会環境や消費者行動・価値観の変化を踏まえ、ディベロッパー目線でwith/afterコロナ時代(現在~数年後)の小売業・商業施設が利用している不動産をどう活用・変化させるかについて、4チームに分かれて討議と発表が行われました。

【塾生の声】

今回の講義はコロナ禍で変わる消費者意識とそれによる小売業の変化についてワークショップ形式で考える講義であった。まさに現在進行中のトピックであるため正解があるわけではない中で、様々な視点から小売業、特に都市型百貨店の短期及び中長期での求められるあり方を考えることは興味深かった。都市型百貨店は大きな柱であったアパレル産業の衰退、消費者行動の変化や通販を中心とした購買の多様化などコロナ以前より最も変化の波に揉まれている業態といってよく、そこにコロナが決定的なダメ押しとなっている。今日の仮説の数々がどの程度的を得ているのかについては今後注目し続けていきたい。(40代・宿泊サービス事業)

今後の小売業がコロナ禍を経てどのように変革していくのか、またどのように時代にアジャストしていくかに関しては、今不動産にかかわる人達にとって、最も興味深いテーマの一つかと思います。今回の講義では、小売業の発展および趨勢を体系的に学べた上で、既存床をどう生かしていくべきかというクリエイティブな議論もでき、非常に濃い時間を過ごすことができました。最新の用途変更の事例なども学ぶことができ、講義を聞いている上で驚くことばかりでした。(30代、不動産投資顧問業)

くらたまなぶ

1998年株式会社パルコ入社。店舗運営、マーケティング、新業態施設プランニング・リーシング等に従事。2006年ザイマックス入社後、大型商業施設開業・リニューアル等を牽引、現在は小売企業を対象としたCRE・不動産サポート事業を行う。京都大学文学部卒業。

山田 賢一

1991年大手流通企業に入社。10年以上にわたり、新規出店・改装のプランニング業務に携わる。2007年にザイマックスグループ入社。主に商業施設の運営管理業務を行う。2014年よりザイマックス総研にて商業施設・小売業界の調査研究を担当。上智大学文学部卒業。

第十四回3月3日

テーマ

Withコロナ・Afterコロナにおける国土構造・都市構造のあり方を考える

講師内田 要不動産協会副理事長専務理事

第十四回目は、内田さんによる「Withコロナ・Afterコロナにおける国土構造・都市構造のあり方を考える」。コロナ禍は不動産業や都市再生にどのような影響を与えたかについて、様々なデータでみた解説と学識経験者の見解の紹介などが行われました。そのうえで「集積の再定義の可能性」「今後の国土構造」「今後の都市構造」「今後の不動産業」の視点で、塾生一人ひとりが意見を述べる講義となりました。グループワークと違い各人が発表する事で、塾生それぞれがどのように考えているかをお互いが知る機会ともなり、内田さんからは「非常に面白くまた斬新な意見があって、とても勉強になりました。不動産業の未来は皆さんにかかっており、今日の皆さんの意見を聞いて将来は明るいと感じました。」とのお言葉がありました。

【塾生の声】

今回の講義テーマは、おそらく不動産業に従事する全ての方がこの一年一番考えてきたテーマではないかと考えております。当社、そして私自身も答えのないこのテーマと真剣に向き合いながら、今後不動産会社がどのような展望を描けばいいか暗中模索してまいりました。その意味で、今回は講義自体はもちろんのことですが、所属先や立場の違う受講生の皆様の様々な意見を伺えたことも貴重、かつ有意義な時間だったと感じております。(30代・不動産開発)

今回の授業は[集積]をキーワードに、with/afterコロナ時代における都市のあり方を考える、という内容でした。特に印象に残ったのは、デジタルはリアルの[不十分な代替物]というフレーズで、自分なりに何となく感じていたことがうまく説明されたような納得感を覚えました。また、授業の後半では塾生の皆さんの興味深い意見を伺うことができ、大変勉強になりました。(30代・不動産金融)

内田 要

東京大学法学部卒業。建設省入省、国土交通省総合政策局政策課長、大臣官房審議官(不動産担当)、土地・水資源局長、土地建設産業局長を経て、2012年独立行政法人都市再生機構副理事長、2014年より、内閣官房地域活性化統合事務局長、内閣府地方創生室長として、地方創生、国家戦略特区の事務方とりまとめ。2015年11月より現職。麗澤大学客員教授。

第十三回2月17日

テーマ

自分を知る・他人を知る・ユーザーを知る・チームワークに生かす

講師くらたまなぶ株式会社あそぶとまなぶ 代表取締役

第十三回目はくらたまなぶさんによる「自分を知る・他人を知る・ユーザーを知る・チームワークに生かす」。塾生は事前にMBTI型性格診断テストを受けたうえで講義に臨みました。人の性格を16タイプに分類するMBTI型。心理学の系譜からMBTI型診断が誕生した経緯の説明があり、結果のとらえ方やその意味、活かし方の例などについての解説がありました。これらはくらたさんご自身が長年積み上げてきた経験と実践で得たものを伝えているとの事でした。からくさ不動産塾では毎年ゼミを行っており、先週、4~5名からなる5グループのチーム分けが発表になったところでした。今後はチーム内で打ち合わせや議論する機会が増えてくると思いますが、その際にも本日の講義はとても参考になったのではないでしょうか。

【塾生の声】

今回は、自分を知る・他人を知るということで、おのおのの性格の違いを踏まえた対応について学びました。塾生全体の性格診断テストの結果を類型化して整理することで、性格の違いを具体的に認識することができ、文字通り十人十色を実感しました。今後のグループ発表だけでなく、仕事でも役立つ大変貴重なお話を伺うことができました。(30代・地方公務)

これまでの不動産に関わる講義とは異なり、本講義は人がテーマであり、今後チームによるゼミナールを控えた今の状況において、とても心に響く内容でした。講義前は心理テスト程度に考えていたのですが、MBTI診断の歴史やその目的、何より診断の深さに引き込まれました。所謂「個性」を機械的に分類していくことに得体の知れない怖さも感じましたが、最後にくらた先生より本診断はあくまで「他人を知り、自分を知る」為のツールであるとの説明があり、今後多様性を容認していく社会に貢献できる人でありたいと改めて思いました。(30代・不動産業)

  • 自分を知る・他人を知る・ユーザーを知る・チームワークに生かす
くらたまなぶ

1978年日本リクルートセンター(87年リクルートに改称)に入社。『とらばーゆ』『フロムエー』『エイビーロード』『じゃらん』など14のメディアを創刊、“創刊男”の異名をとる。新規事業開発室長として『ゼクシィ』『ダヴィンチ』『生活情報360(現「Hot Pepper」の前身)』等、の創刊に携わり、その後開発情報編集局・編集制作統括室長を経て1998年フレックス定年退社。あそぶとまなぶ事務所(04年に(株)あそぶとまなぶに改称)設立。経営コンサルタントを主に講演、執筆などを行う。
<主な著書>
リクルート「創刊男」の大ヒット発想術(日本経済新聞社)
MBAコースでは教えない「創刊男」の仕事術(日本経済新聞社)

第十二回-第2部2月3日

テーマ

ホテル不動産投資の概要

講師沢柳 知彦立教大学大学院 ビジネスデザイン研究科 特任教授
(株)ブレインピックス 代表取締役

第十二回目の後半は、沢柳さんによる「ホテル不動産投資の概要」。ホテルは前半の物流とは真逆で、コロナ禍で最もダメージを受けたアセットといえるでしょう。講義においてもまずコロナ禍のホテルマーケット概況から始まり、ダメージを受けている中でも都市によって影響度合いが違い、その理由について解説が行われました。その後、ホテル独特の事業形態である“運営・経営・所有の分離“についての説明が続き、最後にウィズコロナ時代におけるホテル経営戦略として、自社のホテルリースの活用や新たな需要や変化する需要に柔軟に対応する取り組みが必要と述べられていました。

【塾生の声】

コロナによって大きな打撃を受けているホテル業界。ホテル投資の概要とホテル経営とその契約形態など、業界構造の基礎理解を深めることができました。またコロナ禍をふまえた契約ストラクチャーの見直しや、ウィズコロナ時代のホテル経営戦略については、この状況下において特に実務的かつ示唆に富んだ内容でした。ウィズコロナにおいて求められる需要・ニーズに対して、今後一層加速していく職住泊のボーダレス化の流れに、ホテル業界はどのように対応していくべきかを考えるきっかけとなり、大変勉強になりました。(30代・不動産業)

ホテル不動産投資についてご講義いただきました。新型コロナにより収益に甚大な影響を受けたホテルアセットを、投資対象として今後どういう側面から評価をするべきか、沢柳先生の講義によってクリアになりました。ホテルの需要減が予想される中で、ホテルの持つリソースを上手く使えているか、ML・MCにおける契約ストラクチャー見直しの必要性など、ウィズコロナ時代にバリュエーションを行うにあたって重要な点を、改めて理解することができました。(20代・不動産金融業)

  • ホテル不動産投資の概要
  • ホテル不動産投資の概要
沢柳 知彦

1987年日本長期信用銀行入行。国内企業M&Aアドバイザリー業務を経て海外ホテル投資会社に出向。その後、外資系証券会社を経て2000年に外資系不動産会社・ジョーンズラングラサールのホテルズ&ホスピタリティグループ東京オフィスを開設し、日本における業務の代表に就任。同社日本法人の執行役員、取締役を歴任し、2020年6月退職。マンダリンオリエンタル東京、リッツカールトン東京などの契約交渉支援、IHG-ANAホテルズグループのJV組成支援、ANAホテルポートフォリオ、トマムリゾートなどの売却支援を主導。現在、立教大学大学院特任教授、宿泊施設活性化機構理事なども務める。

第十二回-第1部2月3日

テーマ

深化する物流不動産ビジネス

講師辻 俊昭日本ロジスティクスフィールド総合研究所代表取締役

第十二回目のからくさ不動産塾は物流施設とホテル市場に関する二部構成。いずれもコロナ禍で大きな影響を受けた、今まさに注目されているアセットといえ、それぞれの最新動向を知る講義となりました。前半は辻さんによる「深化する物流不動産ビジネス」。市場の拡大が続いていた物流施設はコロナ禍においてダメージを受けたよりむしろ好調と言われている。その背景は何か、そしていつまで続くのか。まずは物流に関する用語の解説から始まり、物流の仕組みや施設の変遷・変化についての解説がありました。人手不足の問題や配送料はコロナ禍を経てどのように変化したか、また、ロボット化や機械化の最新動向などの紹介もあり、今後の物流施設市場の見通しについて、需要と供給の両面からみた解説がありました。

【塾生の声】

昨年東証リート市場で長年時価総額トップであったオフィス銘柄を物流銘柄が一時逆転する場面がありましたが、まさに新型コロナウィルスを契機として、不動産投資マーケットの見方が大きく変わったことを象徴する出来事だったと思います。EC市場の拡大を背景に新型コロナウィルスの感染拡大前から物流不動産の開発は盛んでしたが、投資アセットとしても収益の安定性や物流市場の将来性が評価されているのだと思います。こうした時代の大きな流れや変化を捉えて未来への投資をしていくことが大切であると感じました。(30代・投資顧問)

昨今、Eコマースの伸びと比例し、物流適地の土地入札が都内のオフィスビル並みの競争倍率であるとの事前情報があり、大変興味深いお話を伺うことができました。特筆すべきは物流アセットの進化で、ランドバンキングによる着工前にテナントを囲い込むBTS方式を採用するなど、創意工夫により空室率の減少に繋がる仕組みづくりが開発事業者側で活発であることです。これは、投資家サイドにとっても安定的な運用資産として捉えることができ、EC化率が中国・韓国が25%前後であるのに対し日本は6%と低廉な水準であることから、今後しばらくは需要拡大余地があるように思いました。さらにオペレーション自動化による人件費削減・効率化に伴い、テナント側の収益性の向上により、賃料負担率を上昇させることも可能であることも魅力の一つになっていることを学びました。これからの動きとしてラストワンマイル、ドローン活用による新しい物流網など更なる進化を楽しみに、物流アセットに注目していきたいと思います。(40代・不動産業)

  • 深化する物流不動産ビジネス
  • 深化する物流不動産ビジネス
辻 俊昭

大学卒業後、国内大手シンクタンクにて行政機関、民間企業の物流に関連する調査、コンサルティング活動を実施。
その後、物流不動産開発企業に移り、調査研究の関連会社の代表取締役を務める。ここでは物流不動産に特化したコンサルティング会社として、物流不動産マーケットの分析、各種情報発信等を行う。
現在、2009年立ち上げた(株)日本ロジスティクスフィールド総合研究所において、物流不動産などに関する調査・コンサルティング活動を実施中。

第十一回1月20日

テーマ

神山町プロジェクト「~人口5000人の小さな町はなぜ進化し続けるのか~」

講師大南 信也認定NPO法人グリーンバレー理事

第十一回目はNPO法人グリーンバレーの理事、大南さんによる「神山プロジェクト ~人口5000人の小さな町はなぜ進化し続けるのか~」。地方創生の成功モデルとして新聞やメディアに度々登場する徳島県神山町。大南さんの講義では神山町の新しい取組みの話が毎年出てきますが、実現に向けた過程には様々な課題がある。それを乗り越えるには「人との関わり」や「想い」が大切で、「できない理由より、できる方法を考える!」「まずは自分の身の回りの事から行動を起こす。それが徐々に広がり、いずれ社会を変えていくことになる」など、物事を進める上でどのように考えればいいか、地方創生や街づくりの視点だけではない講義となりました。業務やプライベートで地方創生に取り組みたいという塾生達に対してのアドバイスもありました。

【塾生の声】

今回は、創造的過疎としての地方再生の取り組みについて学びました。行政・移住者・地元住民を巻き込んで、全員が当事者意識を持ちながら、町の今、そして未来に必要なものは何かと一緒に深く考えながら解決策を見出していく。そして、トライアンドエラーを繰り返しながら少しずつでも前に進んでいった結果が20-30年後に花開き始め、そこに携わった人たちがEvangelistとしてストーリーを語ることで魅力を広め、さらに広範な人々を巻き込んでいく。これは、地方再生というテーマのみならず、他の様々な問題解決として応用可能な成功事例かと思います。その最前線でご活躍されている大南様の貴重なお話しを伺えて大変有意義でした。(30代・小売業)

「神山プロジェクト」は、まさに地方創生の理想的なモデルケースであると感じました。はじめは小さな輪であったものが人伝いに繋がり、様々なアイデアが生まれ、だんだん大きくなり、ものすごい熱量になっていく…。そのような「神山モデル」が今後日本の過疎に悩む地域を再興させていくことを願いつつ、自分には何が出来るのか考えていこうと思います。(30代・建築コンサル)

  • 神山町プロジェクト「~人口5000人の小さな町はなぜ進化し続けるのか~」
  • 神山町プロジェクト「~人口5000人の小さな町はなぜ進化し続けるのか~」
大南 信也

1953年徳島県神山町生まれ。米国スタンフォード大学院修了。帰郷後、仲間とともに「住民主導のまちづくり」を実践する中、1996年ころより「国際芸術家村づくり」に着手。全国初となる道路清掃活動「アドプト・プログラム」の実施や、「神山アーティスト・イン・レジデンス」などのアートプロジェクトを相次いで始動。町営施設の指定管理や、町移住交流支援センターの受託運営、ITベンチャー企業のサテライトオフィス誘致など複合的、複層的な地域づくりを推進。現在、「テクノロジー × デザインで、人間の未来を変える学校」をミッションに掲げる「神山まるごと高専」の設立に向けて邁進中。

第十回1月13日

テーマ

場所の意味をほりあてて、形を考える

講師川添 善行建築家 東京大学准教授

第十回目は川添先生による「場所の意味をほりあてて、形を考える」。川添先生が考える「いい建物」とは“幾重もの思考が物質化されたもの”であり、その場所や空間の持つ意味や歴史性を丁寧に理解した上で箱(建築物、不動産)を考える大切さについて、先生が取り組まれた東大図書館の建替えプロジェクトを例に解説が行われました。最後には塾生一人ひとりが考える「いい建物とは?」「いい都市とは?」を述べ、先生から「皆さんの話を聞いて、一人ではできないものを作ることが集合の智だとすれば、それを物質化したのが都市である。そこには超越した存在を有している事が大切と感じた。素晴らしいアイデアを持つ皆さんが集まってからくさ不動産塾の最後でまとめる課題がどのようなものになるか楽しみにしています」とのお言葉を頂きました。

【塾生の声】

東京大学・本郷キャンパスの総合図書館の拡充を行う「アカデミック・コモンズ」プロジェクトにおける実体験を通じて建築の魅力についてご講義いただきました。

建築は、文明的な側面(技術革新など)と文化的な側面(精神・記憶など)の両方を持ち合わせているからこそ、見る人や利用する人によってさまざまな解釈が生まれることに魅力を感じました。また、ひとつの空間や都市の中にそれぞれが共存し、対比されることでそれぞれの魅力が際立つため、さまざまな価値観に対して寛容であることが持続可能な社会形成においても重要であると感じました。(30代・小売業)

「よい建築とは何か」という投げかけに対して、どのように建築物が出来上がるのかという思考と思索の一つの過程をビジュアルと共にご講義いただきました。

言葉が形態に翻訳され、歴史が技術に受肉されることで、その場所にある記憶、予見、条件が見事に調和していく様をありありと感じることができました。不動産も所有者や利用者、売り手と買い手の調和をさせていくものですが、工学的な物質(もの)と社会的なナラティブ(こと)を調和させていることに、不動産の経済的側面と人文的側面の融合とはまた違う面白みを感じることができました。(30代・不動産業)

  • 場所の意味をほりあてて、形を考える
  • 場所の意味をほりあてて、形を考える
川添 善行

東京大学卒業後、オランダ留学を経て、博士号を取得。ハウステンボスにある「変なホテル」の設計で、ギネス記録に登録される。およそ100年ぶりとなる東京大学新図書館計画を担当し、2017年に「東京大学総合図書館別館」を完成させた。設計だけでなく、「空間にこめられた意思をたどる」(幻冬舎)、「このまちに生きる」(彰国社)などの著作もある。日本建築学会作品選集新人賞、グッドデザイン未来づくりデザイン賞、ロヘリオ・サルモナ・南米建築賞名誉賞などを受賞し、空間構想一級建築士事務所、日蘭建築文化協会会長などの要職を務める。

第九回-第2部12月23日

テーマ

ICTエリアマネジメントが都市を創る

講師川除 隆広日建設計総合研究所 理事 麗澤大学 客員教授

第九回目の後半は、川除さんによる「ICTエリアマネジメントが都市を創る~街をバリューアップするビッグデータの利活⽤~」。情報量が拡大に増加している現代社会において、ビッグデータを街づくりにどのように活かしていくかがテーマ。府省が連携したスマートシティ推進の動きや、官民協働によるICTを活⽤した新たなエリアマネジメントの方向性、携帯位置情報を使った安心・安全な街づくりや購買ポイントデータを使った新たな都市開発の効果測定などの事例紹介がありました。また、2025年の大阪万博で計画されている様々な取り組みについての話もありました。携帯位置情報はコロナ禍を受けて報道等でもよく見かけるようになりましたが、個人情報は提供者側にメリットがある使い方をする事で、情報収集と分析・利活用が進んでいくとの事でした。

【塾生の声】

データを利活用することで、今まで定性的になんとなく傾向を掴んでいた事象が定量的な事象としてとらえることができるため、事実へのリーチがしやすい時代が到来したなと感じました。街づくりを行っていくうえで、大事なことはその場に来る、働く、住まう「人の行動」です。その行動を定量的に分析し、その場に応じたサービスの提供を行うことが街の新しい形になると感じました。(30代・不動産開発)

スマートシティというものが世に登場して数年経過していますが、今まではエネルギーマネジメント的な側面が強かったと思います。最近ではICT、IoT、AI、ビッグデータ等の新技術が世界を席巻し、我々の生活も既にその恩恵を受けていますが、これらを上手く取り込むことなしに「街づくり」はできないという現況が良くわかりました。私もデベロッパーで中小規模の開発事業に従事していますが、まだまだICTデータを活用するという発想無しに不動産開発を行っているのが現状です。今後は開発事業に携わる個人として、企業として、ビッグデータ等を利活用し官民連携してのエリアマネジメントに参画できるよう、情報収集等を行っていく必要性を感じました。(30代・不動産業)

  • ICTエリアマネジメントが都市を創る
川除 隆広

1995年東京理科大学大学院修士課程修了。2001年京都大学大学院博士課程修了。博士(工学)。専門は、都市計画、都市情報分析、事業評価、官民連携事業など。総務省ICT街づくり推進会議スマートシティ検討WG構成員、総務省データ利活用型スマートシティ推進事業外部評価委員、内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術」のうち「アーキテクチャ構築等」採択審査委員、国土交通省/データ駆動型社会に対応したまちづくりに関する勉強会委員、CASBEE都市検討小委員会委員、CASBEE街区検討小委員会幹事などを務める。著書に「ICTエリアマネジメントが都市を創る」、共著に「スマートシティはどうつくる?」、「駅まち一体開発 TOD46の魅力」、「不動産テック」などがある。

第九回-第1部12月23日

テーマ

21世紀型ヘルスケア-転換への4つの潮流

講師大割 慶一KPMGヘルスケアジャパン代表取締役/パートナー

第九回目の前半は大割さんによる、「21世紀のヘルスケア-転換への4つの潮流」。我が国のヘルスケアにおいて直面している課題、また、現在起きている「ケア・セッティングのシフト」「バリュー・ベースド・ヘルスケア」「ペイシェント・エンゲージメント」「医療技術のイノベーション」の4つの潮流についての説明がありました。今まさに、コロナ禍を通してオンライン診療の規制緩和が検討されるなど、ヘルスケア分野は大きな影響を受けてて変化しており、今後は一層ビックデータの利活用や異業種の参入が進み、我が国のヘルスケアは再構築がなされていくだろうとの解説がありました。

【塾生の声】

一見、ヘルスケア業界は不動産とは関わりが薄い印象を抱いていました。しかしながら、マクロな視点から日本の社会保障が直面している課題を紐解いていくと、日本の病院セクターの生産性が低く、病院単体事業から脱却する必要があることを知り、不動産としての病院の在り方も変わっていくのであろうと感じました。また、予防・健康増進領域や治療・診断・モニタリング領域において数々のデジタルヘルスケアサービスが立ち上がっており、ソフト面・ハード面のいずれにおいても大きなパラダイムシフトが起こっていることを痛感いたしました。その変化を十分に理解した上で、ヘルスケアにおける不動産の利活用を再考する必要があると感じました。(30代・不動産業)

ヘルスケア分野は高齢化が進む中、大きな社会的な課題である一方で様々なビジネスの可能性のある分野であり、今後、デジタル技術の革新が大きく進む中で場所にとらわれることのないヘルスケアや、スマートシティによるまちづくりとしての取り組みなど、従来の施設を中心とした不動産取引にとどまることなく不動産業が果たす役割の可能性が非常に大きい分野であると感じた。高齢化のいわば先進国である日本において、今回、講義を頂いた「バリュー・ベースド・ヘルスケア」「ペイシェント・エンゲージメント」など、諸外国の取り組みを取り入れ先進的なモデルを構築していく中で、不動産業が積極的に関わりを持つことで、将来的にヘルスケア×不動産というビジネスモデルの海外展開にもつながっていくように思う。(30代・公務員)

  • 21世紀型ヘルスケア-転換への4つの潮流
大割 慶一

KPMG東京事務所入社後、KPMGドイツ デュッセルドルフ事務所赴任。KPMGドイツのジャパンデスク統括責任者として、日系企業の欧州事業戦略、組織再編、M&A、リストラクチャリング等プロジェクトに対するアドバイザリー業務に関与。帰国後は、ファイナンシャルアドバイザーとして国内およびクロスボーダーM&A案件を数多く手がける。2000年、KPMGヘルスケアジャパン設立。医療・介護産業を含むヘルスケアセクターに特化した戦略立案・業務変革関連、M&A関連、ファイナンス関連のコンサルティング・アドバイザリー事業の責任者を務める。

第八回12月9日

テーマ

不動産資本市場発展の25年を振り返って

講師冨川 秀二三井不動産投資顧問(株)代表取締役

第八回目は日本の不動産資本市場の黎明期から第一線でご活躍されている冨川さんによる「不動産資本市場発展の25年を振り返って」。まず、塾生21名それぞれが不動産業界のどの分野に所属しているかを確認してから講義が始まりました。講義では、90年代以降に不動産と金融が融合して業界が大きく変貌、成長を遂げた経緯や背景、米国との諸制度の比較等の説明が行われ、現在の不動産業は1997年から5倍以上成長しているとの解説がありました。また、不動産市場のサイクルが下り坂に入っていく時には「どこに需要があるか」を意識しておく必要があり、我々自身が変化に合わせてビジネスモデルを変えていく事が今後ますます重要になってくるとの話がありました。

【塾生の声】

不動産投資市場25年を振り返るとともに、不動産投資市場の成長性について体系的に学びました。また、講義冒頭に冨川社長から塾メンバーの業種分けを行っていただき、改めて塾生の幅広い業種構成を実感致しました。不動産投資市場は、バブル崩壊からの市場サイクル毎のプレーヤーの変遷や、スキームの変化などを経て着実に成長し続けている市場だと理解しました。現在の市況下においても、新たな外資等の市場参入があり、まさにサム・ゼル氏がいう「需要がどこにあるか?」だ、が今後不動産投資市場で勝ち抜くために必要な思考だと思いました。(30代・金融業)

「需要がどこにあるのか?新たな需要にどう応えるのか?」の思考が重要という点が印象的でした。足許ではコロナ影響もあり、私たちの生活パターンは従来と比べて変化していますが、今後も様々な変化が起きうる中で、どのような不動産が今後必要になるのか、変化や需要を捉え、先を読むことが重要だということを改めて認識しました。
25年を振り返ったときに、日本の不動産市場規模は株式市場規模の成長率を大きく上回っているという話もありましたが、更に不動産市場を拡大・活性化させていく上でも上記の考え方が重要だと思いました。(30代・不動産金融業)

  • 不動産資本市場発展の25年を振り返って
  • 不動産資本市場発展の25年を振り返って
冨川 秀二

1983年三井不動産入社。
1988年ハーバード大学大学院ビジネススクール卒業。
1989年三井不動産ニューヨーク。1997年10月三井不動産投資顧問設立とともに、同社法人営業部長、2004年4月常務取締役就任。
2007年4月三井不動産法人ソリューション部長、2011年4月執行役員不動産ソリューションサービス本部長就任。2015年4月三井不動産グループ執行役員、三井不動産投資顧問代表取締役社長就任。
現在に至る。

第七回11月25日

テーマ

ニューノーマル時代のオフィスを考える

講師石崎 真弓ザイマックス不動産総合研究所 主任研究員

講師山方 俊彦ザイマックス不動産総合研究所 主任研究員

第七回目は、ザイマックス総研の石崎、山方による「ニューノーマル時代のオフィスを考える」。前半は石崎から、企業とオフィスワーカーに行った最新のアンケート調査などをもとに、働き方とワークプレイスの変化についての説明があり、フレキシブルオフィスの変遷や現状、事業者の取り組みの紹介などが行われました。後半は山方から、オフィスの位置付けやマーケット構造の変化についての説明があり、世の中に公表されている指標の見方についての解説が行われました。
その後は5チームに分かれ、「働きたくなるオフィスとは?」「15~20年後の東京のオフィス街はどうなっているか?」「フレキシブルオフィスの課題と将来性は?」など、各チームに与えられたテーマについて25分間のグループディスカッションと発表が行われました。

【塾生の声】

今後のオフィスのあり方に関しては不動産に従事する者として、今、誰もが興味を持っているテーマかと思いますが、それを考える絶好の機会になったと思います。オフィスマーケットのマクロの部分からコロナ禍の各企業の対応までご講義いただきましたが、ベーシックなところを知ったうえで、最新のトレンドまで見ることができるのは、本塾ならではと改めて感じました。後半のディスカッションでは、広範囲に議論が及ぶよう、それぞれのグループで異なったテーマの話し合いが行われましたが、自身のグループだけではなく、他グループがどのような考えに至ったかを聞くことで様々な視点に触れることができました。(30代・不動産金融業)

3つセクションに分かれた構成でオフィスのありかたについて考察を行いました。仕事柄、日頃からオフィス環境の考察は業務を通じて行っておりますが、今回の講義ではザイマックスグループのネットワークで培われた様々なリサーチ情報という「確かなファクト」に基づく議論が出来たこと、日常の社内議論とは異なった切り口の講師の見識を頂けたことは有意義だったと感じております。(30代・不動産開発)

  • ニューノーマル時代のオフィスを考える
  • ニューノーマル時代のオフィスを考える
石崎 真弓
講師 石崎 真弓
ザイマックス不動産総合研究所 主任研究員

リクルート入社後、リクルートビルマネジメント(RBM)にてオフィスビルの運営管理や海外投資家物件のPMなどに従事。2000年RBMがザイマックスとして独立後、現在のザイマックス不動産総合研究所に至るまで一貫してオフィスマーケットの調査分析、研究に従事。近年は、働き方と働く場のテーマに関する調査研究、情報発信している。日本ファシリティマネジメント協会、オフィス学会、テレワーク協会、テレワーク学会また日本サステナブル建築協会知的生産性研究コンソーシアムに研究参加。

山方 俊彦
講師 山方 俊彦
ザイマックス不動産総合研究所 主任研究員

1991年日本生命保険入社。不動産部にて投資用不動産の運営実務に携わり、1997年にニッセイ基礎研究所出向。オフィスマーケットの調査研究に従事。2003年ザイマックス入社。マーケティング部で不動産のデューデリジェンス等に従事し、2013年から現職。
不動産マーケットの調査分析・研究を担当。不動産証券化マスター。不動産証券化協会・資格教育小委員会分科会委員、市場動向委員会。不動産証券化マスターテキスト102「不動産投資の実務」第3章「指標の見方」を執筆担当。論文(共著)「空室率と募集賃料の時系列データに基づく東京23区オフィスエリアのクラスタリング」

第六回11月11日

テーマ

世界経済と日本
~マクロ経済の視点から~

講師西村 淸彦政策研究大学院大学特別教授
東京大学名誉教授

第六回目は、からくさ不動産塾のアドバイザーでもある西村先生による特別講義「世界経済と日本~マクロ経済の視点から、2020 Covid-19危機~」を弊社会議室からオンラインで実施しました。米国の大統領・議会選挙の結果に至る背景や、それが世界や日本の経済に与える影響、そして日本経済の現状と金融政策の方向性についての解説がありました。画面に表示される塾生に直接質問をしながら講義は進み、日本経済のセンチメントは予想以上に回復しているものの経済成長の低下の方向性は変わらず、米国経済も基本構造はコロナ禍以前も以後もマクロ的には変わらないとの説明がありました。最後に、2020年代後半を占う上で製造業や対面サービスの重要性、自然災害が多い日本において地域アドバンテージはどこにあるか、塾生に考えて欲しいとのお話しがありました。

【塾生の声】

今回の講義はこれまでの不動産に密着した内容と違い、日銀元副総裁の西村先生を招いての世界金融、その中でも特に米国金融・政治から日本のビジネスを考えるという内容であった。さすがに世界の金融の第一線をけん引されてきた先生のお話ということで、レベルが高く完全に理解できたとは言えない部分が多いのは事実であるが、昨今「自分のビジネスでどうコロナ禍を乗り越えるか」「いつになったらコロナ禍が収まるか」など視点が近く狭くなっており、例えば米国大統領選挙などでもコロナの感染者数と同じ単なるニュースとしてしか見ていない自分を痛感した。やはりビジネスはそれ単独では成立せず、様々な事象の化学反応の中で起きていることを考えると、今日のように高い視点、深い思考を磨くことを日々より怠らないことが重要だと感じた。(40代・宿泊サービス事業)

今回の授業は「世界経済と日本」というタイトルで直近で行われた、アメリカ大統領選挙についてのお話を中心に今後の世界経済と、その中での日本の立ち位置等を考えていく授業でした。グローバル化が進んで久しいですが、今後この流れがさらに加速する中で状況をしっかりとみて、対応していくことが求められると思います。
現在のように先行きが不透明で、不確定要素が多いときこそ恐れずに変化するチャンスでもあると感じました。(30代・不動産金融)

  • 世界経済と日本~マクロ経済の視点から~
  • 世界経済と日本~マクロ経済の視点から~
西村 淸彦

東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程卒業、米国イェール大学Ph.D。東京大学経済学部助教授、同大学院経済学研究科教授、内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官(兼任)、日本銀行政策員会審議委員を経て、日本銀行副総裁(2008年3月~2013年3月)、内閣府統計委員会委員長(2014年2月~2019年10月)。2019年10月~総務省顧問に就任。
2015年秋紫綬褒章受章。

第五回10月28日

テーマ

都市計画と不動産

講師宇於﨑 勝也日本大学理工学部建築学科教授

第五回目は宇於﨑先生による「都市計画と不動産」。日本の都市計画に関わる基本的な法律、諸制度の変遷や海外の都市開発の研究などについて講義が行われました。また、最近の都市開発を巡る特区、都市内農地、空き家問題、民泊などの課題にも触れ、コロナ禍を通して、これからの都市と不動産のあり方にも見直しが求められるとの解説が行われました。質疑応答では、開発プロジェクトに携わっている人、認可を出す組織に所属する人もいて、様々な視点から活発な質疑応答が行われました。

【塾生の声】

今回は、都市計画について体系的に学びました。都市計画は、都市計画法のほか関係する法令・制度が多く、非常に奥が深いと感じました。講義の中で、ガルニエの工業都市やコルビジェの300万人のための現代都市など、その時代の都市課題や思想等を反映したあるべき都市像について説明があり、社会の変化が早く、様々な都市課題が顕在化しやすい都市部の地方自治体職員としては、そうしたものを行政として的確に提示する、又は、民間がそうした都市を実現しやすい環境を作るにはどうしたらよいかという問題意識を持ちました。(30代・地方公務)

都市計画について、日本・海外における過去から現代までの事例や法律・行政の諸制度などを幅広く学びました。不動産開発を行うにあたっては、必ず都市計画を意識して進めなければなりません。現在の開発では、事業者は行政から容積割増・税制優遇等を受け、地権者等に付与することで地権者の協力を得たり開発しています。このような開発では時間・コスト・労力が掛かることから、事業者は経済合理性の観点から目の前の開発を成就させることに注力し、開発完了後の意識されることはあまりありません。今後は人口減少・IT化の進展・コロナ禍等の様々な環境変化や再開発した街の再々開発等の課題、街づくり等を意識した開発検討を行うことが大事であると思いました。(30代・生命保険)

  • 都市計画と不動産
  • 都市計画と不動産
宇於﨑 勝也

日本大学大学院理工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。日本大学理工学部助手、専任講師、助教授、准教授を経て、現在、日本大学理工学部教授。平成6年5月から1年間「平成6年度日本大学長期海外派遣研究員」として英国及び欧州諸国に長期出張。現在、地方自治体の都市計画審議会委員、建築審査会委員などを務める。
<主な著書>
小嶋勝衛・横内憲久 監修「都市の計画と設計 第3版」(平成29年3月・共立出版)、一般社団法人 日本建築学会 編「景観計画の実践 事例から見た効果的な運用のポイント」(平成29年3月)」

第四回10月14日

テーマ

ストック型社会における建物を考える

講師吉田 淳ザイマックス不動産総合研究所 主幹研究員

第四回目の講義はザイマックス総研の吉田による「ストック型社会における建物を考える」。「建物とは何か?」から始まり、建築ストックの現状や保有・運用にかかわるリスク、建物寿命に関する考察、今後求められてくる建物について、塾生の意見や質問を交えながらオンライン講義が進みました。最後には「建物ストックを、様々な要因とどう折り合いをつけ、どう活用していくか」についてグループディスカッション(GD)が行われました。不動産に関するGDは今回が初めてでしたが、塾生達にとって身近な問題でもあり、活発な議論が行われていました。各チームがどのような議論を行ったかの発表が行われ、講師の講評に続き、中山塾頭からは「結論を出す事が重要なのではなく、未来志向で考えて皆で議論する事が大切。これからも続けていく」との話がありました。

【塾生の声】

講義では『良質なストック化社会に向けて』をグループワークで討議しました。実務で日々直面している課題でもあり、既存建物を『維持できない理由』に議論が白熱しました。災害の多い日本では建物ハードの耐震性に加え、配管や電気設備等の老朽化に伴い、維持管理の視点で経済合理性を優先し、建替判断を余儀なくされることが多いものです。逆を返せば、これから建てる建物は建物の価値が維持できる修繕計画が万全になされ、時代の変化に柔軟に対応できる可変性を持つこと。さらには街のレガシー資産として洗練されたデザインを保ち、関係者に愛され、意思を持って残し続ける建物であるべきだろうと実感しました。今後建設する建物は普遍的に維持され続けることが重要であるように思いました。(40代・不動産業)

開発のみならず不動産管理も担う当社にとって、大変興味深いテーマでした。導入で概念(そもそも建物とは?)を学び、最後は不動産ストックの現状と課題を掘り下げたところでGDへ移行といった講義の流れもテンポがよく、入り込みやすかったです。今回のテーマは過去の講義でも少子高齢化・東京一極集中と合わせて話題になっていたこともあり、GDは大いに盛り上がりました!ストックを阻害する要因の意見出しから、そもそもフロービジネス重視の何が悪いのか?といった意見も飛び交い、オンラインで無ければ間違いなく延長戦に突入していたことでしょう。今後も塾生の皆様と大いに議論できること、非常に楽しみです。(30代・不動産業)

  • ストック型社会における建物を考える
  • ストック型社会における建物を考える
吉田 淳

日本リクルートセンター(現・リクルートホールディングス)入社。ビル事業部西日本部長などを経て、リクルートビルマネジメント(現・ザイマックス)取締役、2001年ザイマックスビルディングサイエンス(現・ザイマックス不動産総合研究所)を設立し、建物管理、修繕、エネルギー・環境不動産分野の研究を主幹している。CASBEE-不動産評価検討小委員会委員、CASBEE-ウェルネスオフィス審査部会委員、国際エネルギー機関(IEA) EBC
Annex70 日本委員会委員などを務める。

第三回9月30日

テーマ

変革期の発想法とアナロジー思考

講師細谷 功ビジネスコンサルタント/著述家
(株)クニエ コンサルティング/フェロー

第三回目の講義は『地頭力を鍛える』などの著書で知られる細谷さんによる「変革期の発想法とアナロジー思考」。今、まさにコロナ禍において誰もが経験した事が無い事態が起きている中、課題や問題解決に必要なのは過去を参考に踏襲するのではなく、「一見、遠い世界での抽象化した共通点を見つけ、ひらめきや不連続な仮説を立てていく」というアナロジー思考を学びました。多くの事例紹介やグループディスカッションと発表も行いました。今期初めてのグループディスカッションでしたが、オンラインであっても皆が積極的に討議を行っていました。

【塾生の声】

VUCAの時代にコロナ禍が加わり、デジタル化の加速やリモートワークの普及等、不動産業界においては、かつてない大きな変化の波が押し寄せている中、遠くのものからヒントを得ていく「アナロジー思考」は、これからの不動産業を考えていく上で目から鱗の内容でした。講義での学びをもとに、日々目にする事象を、自分のビジネスに置き換えて考えていく習慣を身に着け、アフターコロナを切り拓いていくスキルを磨いてまいりたいと強く思いました。(30代・不動産業)

第3回のからくさ不動産塾は「変革期の発想とアナロジー思考」というテーマのもと、前例がない昨今の状況でどう思考し、対処していくかということについて、講義とグループセッションを通じて学びを深めることができました。コロナ前は出来なかったけれど、コロナ後の世界では出来るようになることにアンテナをはり、今後どのような需要が発現し、どう様々な業界に波及していくかという点に着目していきたいと思います。また、今回のZOOMのブレイクアウトルーム機能を使ったグループセッションは、ニューノーマルの学び方を体感することができ、「旧来のやり方を上回るメリットがある」良い一例だと思いました。(20代・不動産金融業)

  • 変革期の発想法とアナロジー思考
  • 変革期の発想法とアナロジー思考
細谷 功

株式会社東芝を経て、アーンスト&ヤング、キャップジェミニ等の米仏日系コンサルティング会社にて業務請負改革等のコンサルティングに従事。近年は問題解決や思考力に関する講演やセミナーを企業や各種団体、大学等に対して国内外で実施。主な著書に『地頭力を鍛える』『アナロジー思考』(東洋経済新報社)、『メタ思考トレーニング』(PHPビジネス新書)等がある。

第二回9月16日

テーマ

不動産市場の未来

講師清水 千弘日本大学スポーツ科学部、東京大学、MIT不動産研究センター

第二回目は、当塾のアドバイザーでもある清水先生による「不動産市場の未来 -AIは不動産市場をどのように変えるのか?-」と題した講義でした。ビッグデータから予見できる日本の未来。人口減少、高齢化、そしてそれに伴う土地価格の下落といった課題に対し、どのようにして立ち向かうのか。また、質問で出た海外でAiの導入が不動産業界で進んでいる点に関しては仕組みやデータの整備が進んでいるといった訳ではなく、それを活用していこうという人の気概の差である、といった不動産業界を牽引するリーダーを志す塾生に向けた未来を展望する内容でした。

【塾生の声】

本講義前までは、AIは、近い将来人間の仕事の殆どを奪っていくのではないかと思っていたが、本講義を通して、AIがまだ「予想」でのみ機能していることを知り、少しほっとした。その一方で、今後はAIが取って変わることが出来ない分野で「人間の強み」を伸ばしていかなければ、自分の市場価値を高めていくことが出来ないと再確認した。また、講義の中での「消費=幸福」と認識すれば今後のアフターコロナの世の中の動きを予想しやすいという話は、目から鱗であった。(30代・建築設計)

新型コロナウィルスにより、様々な社会的課題が浮き彫りになっていますが、いま正に変化に対するレジリエンスが問われていることを感じます。AIは時間軸のなかで私たちの生活に様々な影響を与えると思いますが、過去のデータを元にパターンを見つけ予想したり、自動化・効率化を図っていくことは今後あらゆる分野で急速に進んでいくものと思われます。不動産ポートフォリオを考える際も、足元のマーケットだけでなく、将来的な気候変動リスクや人口推移、需給予想など必ずしもマーケット全体が成長していかないなかでどのように物件を選定をし、投資機会をとらえていくかは益々重要になると思います。定型業務はAIを活用しつつ、どういうビジョンで未来を描いていくかといった創造的な部分により時間を割いて未来志向な世の中に変わっていくことが大切だと思います。(30代・投資顧問)

  • 不動産市場の未来
  • 不動産市場の未来
清水 千弘

日本大学スポーツ科学部教授。東京大学空間情報科学研究センター特任教授、麗澤大学都市不動産科学研究センター長。マサチューセッツ工科大学不動産研究センター研究員、東京都立大学金融工学研究センター研究員等を兼務する。東京大学博士(環境学)。麗澤大学経済学部教授、ブリティッシュコロンビア大学客員教授、シンガポール国立大学不動産研究センター教授等を経て現職。専門は、指数理論・ビッグデータ解析・不動産経済学。主な著者に、『不動産市場の計量経済分析』朝倉書店(唐渡広志との共著(2007))、『市場分析のための統計学入門』朝倉書店(2016)、『不動産テック』朝倉書店(編著(2020))、「Property Price Index」Springer(Erwin Diewert教授らと共著(2020))など多数。Fellow of RICS、Member of CRE。

第一回9月2日

テーマ

開講式・不動産を見る目、価値の考え方

講師中山 善夫ザイマックス不動産総合研究所 代表取締役社長

からくさ不動産塾第五期がスタートしました。当初は4月に開講する予定でしたが、コロナ禍の影響で9月2日に延期して、オンラインにて入塾式と第一回講義を行いました。今期も様々な業種から、21名の塾生が参加することになりました。まず講義に先立ち、中山塾頭、アドバイザーの清水先生より開講の挨拶があり、その後、塾生の自己紹介が行われました。事前に趣味などが書かれた冊子を配布していたことから、早速「皆で飲みたいですね」「ゴルフを行きましょう」といった和気あいあいのやり取りが始まっていました。
講義は中山塾頭による「不動産を見る目、価値の考え方」。プログラムの導入の基礎的知識として、不動産の基本的な概念や見方などの解説が行われました。

新型コロナの状況等を踏まえつつ、当面はオンラインにて講義を行っていく予定です。

【塾生の声】

まさに社内で不動産の価値議論を進めていく中で、不動産の多面性に直面していた。捉え方の類型化を提示していただき、スタートラインに立てた気がしました。今後、様々な専門的視点を元に捉え方をアップデートしていきたい。不動産は多面的であり、不動産の捉え方による価値のギャップ(別の見方や利用方法で捉えると、従来の捉え方よりも価値が高まる)を見つけ、それを発信したり実現したりすることに不動産業の醍醐味であると、改めて感じた。
初のオンライン開催の初回とのことだったが、テンポよく進行していただき、講義や自己紹介含め、講師や参加者の人となりが色濃く伝わってきた。不動産に関わる人の多様性、役割の多面性を感じられた会だった。(30代・不動産業)

待ちに待ったからくさ不動産塾は、ポストコロナにふさわしくウェブ会議を通じたオンラインセッションでした。オンラインではあったものの講師の方々や皆さんの本塾に対する熱い想いが感じ取れ、今後1年間様々なバックグランドを持つ仲間とどのような刺激を与えあえるのか非常に楽しみなキックオフであったと思います。
第1回目の講義は、不動産という歴史的に文明・国の発展とは切っても切れない資産を通じて、今後の社会の在り方を考えるという、本塾の目的・方向性について簡潔にかつ総括的に示していただきました。
そして、リアル資産としてそこにある不動産から、そのリアル資産をベースに提供されるサービス・オペレーションが不動産価値の源泉となるパラダイムシフトが急速に起こっているという点において、ぼんやりと気づいていながらも改めて言語化されることで、より差し迫った課題として認識できたことが大きな収穫でした。(30代・小売業)

  • 開講式・不動産を見る目、価値の考え方
  • 開講式・不動産を見る目、価値の考え方
中山 善夫

株式会社ザイマックス不動産総合研究所代表取締役社長。ニューヨーク大学大学院不動産修士課程修了。一般財団法人日本不動産研究所で数多くの不動産鑑定・コンサルティングに従事。その後、ドイツ証券にてドイツ銀行グループの日本における不動産審査の責任者を務める。2012年よりザイマックスグループの役員に就任、現在、ザイマックス不動産総合研究所にて不動産全般に係る調査研究を担当。不動産鑑定士、MAI、CCIM、Fellow of RICS、Member of CRE。ARESマスター「不動産投資分析」科目責任者、不動産証券化協会教育・資格制度委員会委員。